止まらぬ部数減に悲鳴を上げる新聞業界に「2020年問題」が迫っている。主要な読者層である団塊の世代が4年後、次々と70代に突入するのに伴い、購読をやめる世帯が続出すると見られているのだ。『文藝春秋』7月号の〈新聞社の大再編〉を予想した記事の執筆者で元全国紙記者の幸田泉氏が話す。
 
「現状でも、インターネットの普及により、新聞を定期購読しない『無読層』の増加と、読者層の高齢化というダブルパンチに見舞われ、新聞業界は空前の苦境に陥っています。新聞離れのスピードは減速の気配がなく、このままだと2020年の東京五輪を待たずに“淘汰”される新聞社が出てもおかしくない」

 そんな中、生き残りを賭けた各新聞社は「業界大再編」に向けた合従連衡の動きを見せ始めている。再編劇の引き金となるのは、読売新聞による時事通信の吸収合併だという。

 時事は17期連続で営業赤字を記録するなど本業の不振が続いている。現在は保有する広告代理店「電通」株の配当収入や、同株の切り売りで糊口を凌いでいる状態といわれ、以前から「他メディアとの合併」という噂が取り沙汰されていた。前出の幸田氏がいう。

「新聞の販売益と広告収入で稼ぐ新聞社と違い、通信社は契約している加盟新聞社や役所などにニュースを流し、配信料を受け取ることで収入を得ています。一方、かつて世界一の発行部数1000万部を誇った読売も、昨今は900万部ほどまで落ち込んでいる。

 もし読売が時事を傘下に収めれば、読売新聞に掲載している記事を時事のネットワークに乗せることで、配信記事としておカネを生む“商品”に変えることができる。通信社機能を取り込むことで、読売は新たな販路を獲得できるのです」

 通信社に払う配信料は加盟社の経営規模や新聞の発行部数などにより、年間数千万円から数億円までの幅がある。例えば、現在、2大通信社のもう一方である共同通信に1億円を払ってニュースの配信契約を結んでいる地方紙に対し、「うちは7000万円でいい」と“安売り攻勢”を仕掛けて、乗り換えさせる“共同潰し”が、「読売通信社」の狙いだとの指摘もある。

 さらに時事の持つ海外通信社との太いパイプを活かせば、欧米のメディアに自社の記事を配信する「海外展開」も可能となる。

 本誌の取材に対し、双方とも合併検討を否定したが、業界関係者の間で噂が消えないのには理由がある。読売関係者の話だ。

「通信社は紙面を持たない分、印刷の手間も省け、新聞よりも速報性で勝り、社説もないから政治やイデオロギーなど“色”も付かない。そのため放送局やインターネット事業者、政府機関や政党に至るまで、抵抗感なく配信サービスを受け入れてくれる。

 渡邉恒雄会長・主筆は、怪我をする2013年まで、時事の新年会に毎年出席していた。読売は時事との関係も良好。社内でも合併は上手くいくという意見は多い」

※週刊ポスト2016年7月8日号