学生の窓口編集部

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大学生のみなさんは、好きな青年漫画作品はありますか? 少年漫画とは一味ちがった魅力がある青年漫画の世界。今回は大人社会の「あるある」や、反対に大人が読むと懐かしい気持ちになれる「あるある」が詰まった10作品をご紹介します!青年漫画によくある過激な描写があまりないものを選んでいますので、過激な漫画が苦手な方には特におすすめです。

■第10位 喰う寝るふたり住むふたり

交際10年、同棲8年目、周囲からの「なんで結婚しないの?」という質問にも、「何となく……」としか答えられないアラサー・カップル・りっちゃんとのんちゃんの日常を描いた漫画。二人は、些細なすれ違いと仲直りを繰り返し、今日も仲良く暮らしています。

長年連れ添い、お互いのことは知り尽くしているつもりでも起きてしまう「すれ違い」。そのすれ違いを男女両方の視点から描く、2話で1セットという独特のスタイルで物語を収録。同性の視点から描かれた話を読めば「あるある」と共感できることはもちろん、異性側の視点からの話を読むと、「なるほど、そういうつもりだったのか!」と思わず膝を打ってしまうこともしばしば。「もう女として見てもらえないのかも……」なんていうちょっと重ための不安も、どろどろさせることなく描いているところも好印象!

全5巻完結済みの漫画ですので、気軽に読めちゃうのもうれしいですね。なんでも知っていると思っていても、やっぱり喧嘩や仲直りのたびにお互いの性格や立場に発見があるもの。そうした発見に目をとめて、たまには新鮮な気持ちを取り戻すのが長続きの秘訣なのか……と勉強にもなる作品です。

作者: 日暮キノコ
出版社:徳間書店
掲載誌:月刊コミックゼノン
連載開始:2012年4月
巻数:全5巻

■第9位 デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション

主人公の小山門出(こやまかどで)は、メガネにショートカットの平凡な女の子。親友の"おんちゃん"(中川 凰蘭(なかがわ おうらん))は夜な夜なFPSを共にプレイする戦友でもあります。ちょっと変わったお母さんと物静かなお父さんと、平凡な毎日を過ごしていました。夏休みの最後の日、まだまだ宿題の終わらない門出。その日、東京都上空に突如巨大な空飛ぶ円盤が現れます。「戦争が始まるかもしれない……」という言葉を残して行方不明になったお父さん。円盤から次々と現れる襲撃者によって多くの死者が出ましたが、アメリカ軍の攻撃によってあっけなく戦闘は終了。3年たった今も、“母艦"と呼ばれるようになった円盤は渋谷上空で静止していました。なにかとんでもないことが起こると思ったあの日から、ごくごく普通の毎日が続いていますが、それは見せかけの平穏だとは誰も思っていませんでした。

浅野いにおと言えばサブカルチャーのアイコン作家であり、少年の残酷で暗い内面をえぐり出す描写に苦手意識のある人も多いかもしれませんが、この作品はそういう描写が控えめで読みやすいものとなっています。特に、先生に片想いをしている門出と、先生の対応がリアルで、なんとも言えない甘酸っぱさを味わえます。サブカル臭のするほのぼの日常×非日常がたまらない作品です。

作者:浅野いにお
出版社:小学館
掲載誌:ビッグコミックスピリッツ
連載開始:2014年22・23合併号 - 連載中
巻数:既刊3巻

■第8位 監獄学園(プリズンスクール)

元女子校・私立八光学園共学化の1年目に入学したキヨシ、ガクト、シンゴ、ジョー、アンドレの5人は、学校でたった5人の男子生徒。周りにたくさん女子がいるのに仲良くなれない童貞たちは、入学早々女子風呂を覗き、学校の風紀を守る“裏生徒会"に捕まってしまいます。5人はこの学校独自の施設である「監獄(プリズン)」に収容されます。脱獄のための駆け引き、友情、恋、お色気、ギャグ……なんでもアリ!男たちの熱く、バカバカしい友情が描かれた青春ギャグ漫画です。

「あるあ……ねーよ!!」と言いたくなる回数のほうが多いかもしれません。しかし、学生の頃に執念とも言えるような奇妙な「エロ」に対する熱情を抱き、それを理解してくれる数少ない人を友だちと呼んだことがあるなら、思わず「あるある…」とつぶやいてしまうのでは? ぎりぎりエロ漫画ではないラインを守り(最近少しラインを突破しがちかも……)ながら、キャラのたった男女がそれぞれの思惑のために暴走します。男子たちの「くだらないことに全力、そしてそこから生まれる謎の連帯感」を描いた、『行け!稲中卓球部』『男子高校生の日常』などの潮流を汲む漫画だと言えると思いますが、その中でもずば抜けて女の子がかわいいところが革新的ですね。

作者:平本アキラ
出版社:講談社
掲載誌:週刊ヤングマガジン
連載開始:2011年10号
巻数:既刊19巻(2015年12月現在)

■第7位 行け! 稲中卓球部

稲豊市立稲豊中学校、部員6人の卓球部。実力はあるのですが、部長・副部長以外のメンバーは強烈な個性の持ち主で、いつも事件を巻き起こしています。まともに卓球を練習することはほとんど無く、いつも下品な行為で女子から嫌われている主人公・前野。前野と同じくカップルを嫌い、『死ね死ね団』を結成する前野の親友・井沢ひろみ。無口な坊主頭のチビで、チーム一下劣な田中。アメリカ人とのハーフで、常識を備えている心優しい田辺も、歩く生物兵器の「ワキガ王子」で… …。

古谷実といえば、最も有名なのが映画化もされた『ヒミズ』ではないかと思います。主人公の置かれた過酷な境遇、閉塞感、バイオレンスな描写、思春期の少年少女の心理を鮮やかに描き出す、といった特徴が挙げられる作品です。しかし『ヒミズ』は古谷実の作品の中でもかなり特異な位置づけの作品。基本的には、思春期の少年少女の心理描写、偶像劇であり、そこにギャグを絡めていくというスタイル。数ある作品の中でも、純粋なギャグ漫画はこの『行け!稲中卓球部』のみ。彼の原点とも言える作品です。

デビュー作である本作も、前半は「モテない男子たちの閉塞感とそれに対する抵抗」と「ギャグ」が二本の柱となっていますが、後半は思春期特有の恋愛にまつわる心理描写が光ります。相当おバカなギャグ漫画でありながら、学生時代を懐かしめる名作です。

作者:古谷実
出版社:講談社
掲載誌:週刊ヤングマガジン
連載開始:1993年14号
巻数:全13巻

■第6位  働かないふたり

対人関係が苦手で、おっとりした「働かない」妹、春子。頭も良くて、友達もいるエリートニート・なぜか「働かない」兄、守。二人のゆるーい毎日。ニートだからこそできる「毎日スウェット」「ゲーム合宿」「夜食にオムライス」「映画合宿」などなど…大きな声では言えないけれど、ちょっとうらやましいエピソードが盛りだくさんです。

大人気のweb漫画。後に単行本としても出版されました。兄弟姉妹がいる人は思わず「あったあった」と昔を懐かしむことができる漫画です。長い時間を一緒に過ごすからこそ、本当にくだらないことで笑えたり、友情にも似た助け合いの心があったり…という、仲の良い兄妹の「あるある」が描かれています。遠慮のない、本当に仲の良い兄妹がリアルに描かれています。

2015年の12月に第100回が掲載されましたが、昔を振り返ると少しずつ春子が成長している様子が描かれているので、強いて主人公を決めるなら彼女なのかも。ズボラで不器用、対人恐怖症だけど思いやりのある妹、頭が良くて優しいお兄ちゃん。新しい「理想の兄妹像」が描かれています。過去の連載作品の一部が「くらげバンチ(http://www.kurage-bunch.com/)」で読めます。

作者:吉田覚
出版社:新潮社
掲載誌:くらげバンチ(元ブログ掲載作品)
巻数:現在単行本は6巻

■第5位 ボーイズ・オン・ザ・ラン

うだつのあがらない青年田西敏之は、零細玩具メーカーの平社員。27歳の現在に至るまで女性と交際したことはない素人童貞。先輩から引き継いだ仕事も満足にこなせない、なにかに打ち込んだこともない彼でしたが、あこがれの後輩・植田ちはるには淡い恋心を寄せていた。ある日、会社の飲み会でちはるとの距離を縮めた田西。かねてより交流のあった業界最大手のエリート営業マン・青山との協力もあって交際の一歩手前までこぎつけるものの、あることがきっかけでちはるは田西のもとを去ってしまいます。しばらくして再開したちはるは、なんとあの青山と交際していました。青山にもてあそばれ、ぼろぼろになってしまったちはる。田西は一念発起し、ちはるも望まない「決闘」を青山に申し込みます。

2010年には銀杏BOYZ峯田和伸主演で映画化され、2012年には関ジャニ∞丸山隆平主演でテレビドラマ化された人気作品。ダメダメで平凡な主人公が一念発起する……というパターンは、最近の漫画にもよくありますが、この作品非常にシビア。うだつのあがらない平凡なサラリーマンがちょっと努力をつんだだけでエリートに敵うはずもなく、見ていて苦しいほど鮮やかな敗北を喫します。それでも走り出した田西は止まりません。それはきっと田西がまだ少年の心を失わずにいるからなのでしょう。田西はどこへ走って行くのか、そして走りきることができるのか。非常にヘビーな描写も多いですが、読後の爽快感は保証します!

作者:花沢健吾
出版社:新潮社
掲載誌:ビッグコミックスピリッツ(小学館)
連載開始:2005年
巻数:全10巻

■第4位 めぞん一刻

オンボロアパートの「一刻館」に住む五代裕作は浪人生。酒乱の主婦・一の瀬さん、妖怪じみたスケベなサラリーマン、四谷さん、ランジェリー姿で建物をうろつく朱美さんに邪魔され、受験勉強に身が入りません。ついに荷物をまとめて出て行く決心をするのだが、その日、管理人としてやってきた未亡人・音無響子に一目惚れをしてしまい……。

ラブコメの金字塔とも言える作品。この作品を連載していた当時高橋留美子はまだ20代。うる星やつらと共に、彼女の20代の代表作となっています。五代から響子さんへのプロポーズのシーンはあまりにも有名。響子さんのヤキモチとそれを理解できない五代くん。恋愛の「あるある」が詰まった作品です。キャラのたった登場人物を巧みに動かし、毎回笑えるコメディ劇を描いていることはもちろん、各キャラクターの“その後"のまとめ方も完璧で、一つの作品として非常に完成度の高いものとなっています。

数々のエピソードの中でも特に秀逸なのが三鷹コーチと響子の関係をどう終結させるのかというところ。はじめから響子さんと五代がくっつくことはわかっているのですが、それでもハラハラさせてくるライバル・三鷹コーチ。彼がいかにして振られ、そして響子さんをあきらめるのかというところがもっとも鮮やかに描かれています。考え方によっては彼が一番不幸なのですが、エピローグで幸せな家庭を築いている様子が描かれているのも、さすが高橋留美子だなと思います。

作者:高橋留美子
出版社:小学館
掲載誌:ビッグコミックスピリッツ
連載開始:1980年11月号
巻数:15冊(単行本・新装版)

■第3位 クレヨンしんちゃん

ちょっとおませな幼稚園児「しんちゃん」が巻き起こすドタバタを描いたホーム・コメディ。テレビアニメも10年以上続いており、年に1度は新作アニメ映画が放映される人気作品です。

いまでこそしんちゃんのちょっとお下品なギャグや、泣ける家族愛などにスポットが当たっていますが、連載当初は大人の建前からうまれる矛盾点を、無邪気なしんちゃんがズバリとつくスタイルの漫画でした。ブラックユーモアや社会風刺、性に関する描写などもあり、一度漫画を読むとこれまでのイメージが変わるかも。また、パロディや内輪ネタなども多く盛り込まれているので、好きな人にはたまらないのでは。

長い間一緒に過ごしてくるからこそ、いろいろな欠点も目についてしまう「家族」。そうした欠点を笑いに変え、欠点もまるごとひっくるめて毎日を一緒に過ごしていく姿がほほえましい作品です。また、しんちゃんのするどい一言に自分の身を顧みることもしばしば。ひょうひょうとした、おませなキャラクターとして描かれているしんちゃんですが、友達とのやりとりや、妹ができたことで生まれる嫉妬など、「あるある」ネタもちらほら。子育て世代にも一度読んでほしい作品です。

作者:臼井儀人
出版社:双葉社
掲載誌:漫画アクション→まんがタウン
連載開始: 1990年8月
巻数:全50巻

■第2位 よつばと!

翻訳家の「とーちゃん」にひろわれて、遠い南の島からやってきた5歳の女の子「よつば」。何にでも興味をもち、誰とでも友達になれる、自由なよつばの毎日を描いたハートフル・コメディです。お隣の綾瀬家には、あさぎ、風香、恵那の三姉妹。とーちゃんの親友、花屋の「ジャンボ」、後輩の「やんだ」など、個性豊かなメンバーの日常が描かれています。

きわめて自由でちょっとへんてこなよつばが巻き起こすドタバタは、そうそうあることではないかもしれませんが、彼女のしぐさや台詞、着眼点や行動のひとつひとつがほほえましい作品です。幼い子どものかわいらしいところ、「どうしてそうなった」という摩訶不思議な着眼点を見事に抽出しています。また、シンプルで明確なとーちゃんの子育てに対する姿勢にあこがれを持つ人も多いのでは? 自身の成長過程によって、投影するキャラが変わるため、味わい方もまた変わる奥行きある作品だとも言えそうです。

作者は『あずまんが大王』で知られる、日常系コメディの走りとも言えるあずまきよひこ。人気作家の森見登美彦や、『こち亀』の作者漫・秋本治など、有名人の間でもファンが多い作品。国内では1300万部を売り上げています。また、現在13カ国語に翻訳されており、海外でも絶大な人気を集めています。

作者:あずまきよひこ
出版社:日本の旗 メディアワークス(現・アスキー・メディアワークス)
掲載誌:月刊コミック電撃大王
連載開始: 2003年3月
巻数:既刊13巻(2015年11月現在)

■第1位 リアル

車イスバスケットボールを題材にした漫画。野宮・戸川・高橋という、全くタイプの異なった3人の青年が、もがきながら自らの進むべき道を模索する「リアル」を描いた物語です。野宮はバスケしかできない落ちこぼれ。ある日ナンパした女の子を乗せたバイクで事故を起こし、相手に下半身不随の障害を負わせてしまいます。高橋は野宮と同じバスケ部の部長で、なんでもそつなくこなす自称“Aランク"。周囲の人間を見下していた彼ですが、交通事故を起こし脊椎を損傷してしまいます。戸川は元天才スプリンターで、骨肉腫により足を失ってから、紆余曲折を経て車イスバスケに転向しました。高いポテンシャルを秘めてはいるものの、そのストイックな性格からチームメイトと衝突ばかりしています。

作者は伝説のバスケットボール漫画『スラムダンク』で知られる井上雄彦。何よりも着目して欲しいのは、最小限の台詞で物語を進めているところ。この「最小限の描写で最大の効果を得る」というのは、日本文化の最も尊ぶべき伝統だと思います。無駄なものを省いたその構成の中だからこそ、登場人物の台詞や感情がストレートに伝わってきます。また、テンポの良さや画力の高さ、台詞の言い回しの巧みさも素晴らしく、これほどのクオリティの作品は他になかなかないと思います。

3人の主人公がいるこの作品ですが、おそらく読者が最も自己投影してしまうのが、自意識が強く、自身の背負った障害に絶望してしまう高橋久信。彼のリアルな葛藤に、読む人は心をゆさぶられずにはいられないはずです。

作者:井上雄彦
出版社:集英社
掲載誌:週刊ヤングジャンプ
連載開始:1999年48号
巻数:既刊14巻(2014年12月時点)

いかがでしたか? 青年漫画ならではのギャグが楽しめるもの、ゆるい雰囲気のもの、重ためのテーマを扱ったものなど、バラエティ豊かにランキング形式にしてみました。「大人買い」できちゃう巻数のものも多いので、週末や夏の長期休みを使って読破してみてはいかがでしょうか?