マクドナルドの「復活」は本物か

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日本マクドナルドホールディングス(HD)が、長らく続いた低迷から抜け出そうとしているというデータが出てきた。

2014年7月の鶏肉偽装問題発覚で着いたケチがなかなか払しょくできずに来たが、売り上げが回復を見せ、2016年12月期は3年ぶりの経常黒字を見込んでいるのだ。果たして、このまま復活の波に乗れるのだろうか。

売上高の「対前年比」、数字的には20%増も

マクドナルドのつまずきの始まりは2014年7月、期限切れの中国産鶏肉を有力商品「チキンマックナゲット」に使用した問題が発覚したことだった。この月の既存店売上高は前年同月比17.4%減と激減した。会社の対応が後手後手に回ったことで消費者の信頼を失墜したことは、イメージが大きな要素を占める外食・ファストフード業界としては致命的だった。

同年12月まで売り上げは二桁減が続いた。それでも徐々に収束に向かうと思われたところに追い打ちをかけたのが2015年の年明けに発生した異物混入問題だった。この時も会社の対応はもたつき、最重要顧客であるファミリー層から完全にそっぽを向かれ、2015年1月の既存店売上高は、一連の問題発生後、最悪の38.6%減に達した。

その後、売り上げ急減から1年が過ぎ、前年比の「発射台」が下がったこともあって、2015年8月には2014年1月以来、1年7カ月ぶりに前年比プラス(2.8%)に浮上した。9〜11月は0.3〜2.5%の小幅マイナスと踏みとどまり、12月には8.0%増を記録。2016年1月からは二桁のプラスを続け、5月は21.3%増と大きく伸ばしている。

決算を見ると、2014年12月期、2015年12月期はいずれも経常赤字だったが、2016年12月期は3年ぶりの経常黒字を見込むところまできている。数字的には「復活」といえるだろう。

いつ「萎縮状態」から脱するか

もちろん、マクドナルドも何もしないで回復したわけではない。なんといっても大きかったのは新メニューの投入だろう。16年4月に投入した、主力の「ビッグマック」より一回り大きい「グランドビッグマック」が人気を集め、前倒しで販売を終了。4月下旬に発売した肉の量が多い「クラブハウスバーガー」、5月発売のハワイ名物を模した「ロコモコバーガー」も好調。客数は5月まで5カ月連続で増え、5月は前年同月比7.0%増。客単価も5月まで6カ月連続で増え、5月は13.3%増だった。

このほか、訪日外国人を意識した無料の公衆無線LAN「WiFi(ワイファイ)」のサービスを、7月末までに半数の店舗で導入する。

ただ、売上高が鶏肉期限切れ問題以前にまで戻っているわけではく、「取り戻せた客はまだ半分程度」(アナリスト)との声もある。「グランドビッグマック」の成功も、「本部の腰が引けていて、準備数が少なく、早々に販売を終了させざるを得なかったため、現場の店からは不満が出た」(全国紙経済部デスク)という段階だ。「大成功」の機会を逸したとしたら、なお萎縮状態から脱していないのもしれない。

成長軌道に再点火するには、消費者の関心を集めるメニューを打ち続けることが不可欠だが、失敗を恐れるばかりでは、ヒット作は望めない。サラ・カサノバ社長以下の経営陣の次の一手に関心が集まる。