『ゆとりですがなにか』『世界一難しい恋』は春ドラマの2強。脚本がスゴかった!
【春ドラマを勝手に表彰!ドラマストーリー賞編】

 2016年春ドラマはものすごくカラフルだった。あくまでも個人的意見だけど、ドラマはたいがいが「あー、この人が出てきたってことは……まあこうなるよね」と出演者のフォーメーションで展開が分かってしまう。

「仕事でドラマの見過ぎでは」と言われればそれまでだが、やっぱり変化球が欲しくなる。それが今クールのドラマにははっきり見えていて、気持ちよく色鮮やかだった。そんなストーリーが面白かったと素直に感じる2作品を、芸能ライターでドラマファン歴20年のスナイパー小林がご紹介。賞は差し上げますが賞状、賞品はございません。

◆社会問題をまるっとゆるっと濃縮

ドラマストーリー賞:日本テレビ『ゆとりですがなにか』(主演:岡田将生)

 よく聞くキーワードながら、これまで物語として描かれてこなかった“ゆとり世代”を宮藤官九郎が映像化。笑いだけではなく、ブラック企業や土下座を強要する“ゆとりモンスター”など、社会問題もストーリーにはあった。何かと規制の多い時代に、脚本にしていいものか? どうなのか? というギリギリのラインに食い込むのはさすがだ。

 サラリーマンの坂間正和(岡田将生)、小学校教師で童貞の山路一豊(松坂桃李)、そして妻子持ちで風俗業、浪人生、植木屋とコロコロ正体が変わる道上まりぶ(柳楽優弥)。これら主演の3人に加え、坂間の彼女兼ヒロイン役に、テレビドラマで見かけるのは珍しい安藤サクラが出演。キャリアウーマンが抱える彼氏への本音を吐露する姿は可愛かったな……。

 こうやって中身を並べると、ずいぶんこってりとした印象だ。でも実際はこのバラバラすぎるテーマと個性的すぎる役たちがすんなりと1時間に収まっている消化吸収に長けたストーリー展開。日曜22時半のまったりとした時間を楽しませてくれたことに感謝して、賞を進呈。

◆ラブコメの楽しさに改めて開眼

ドラマストーリー賞:(日本テレビ『世界一難しい恋』主演:大野智)

 全国にホテルを経営する敏腕社長・鮫島零治(大野智)は恋愛ほぼ初心者の34歳。彼が恋した相手はちょっと頑固なタイプの柴山美咲(波留)。彼女を射止めるために仕事そっちのけで奔走して、見事に交際がスタートすると今度はどうやって手を出そうと苦悩する零治……。

 そんな中で、「いさなみすやお」「いさなみしほ」と恋するふたりにしか分からない別称で呼び合うシーンが印象に残る。まるでおとぎ話の世界観に引き込まれたようなうっとりする演出だった。最終回では同棲まで無事にこぎ着ける。愛する彼女にはまったく頭が上がらない社長のキュートさを映してドラマは終わった。

 主演男優賞、助演女優賞、そしてこのストーリー賞に選出でお気づきかと思うが、今クールでは『世界一難しい恋』がぶっちぎりにおもしろかった。ドラマ解説をさせてもらうフラットな(お恥ずかしながら)プロの目で見ても、アイドルとは思えない秀逸な演技力にまずは感心。そして女子の心をグイグイくすぐる主役の純度の高さに胸キュン。

 今回オリジナル脚本を書いた金子茂樹は、『プロポーズ大作戦』(フジテレビ系)で山P演じる岩瀬健が幼なじみに告白できないジレンマを描いていたことが印象的だった。素直になれない男の代弁者なのかも。

 毎回キモになる部分を翌週まで視聴者を引っ張ることなく、一話ごとにきっちり完結させるストーリー展開も飽きることがなかった。最終回放送終了後にはロスが続出しているというのもうなずける。

 ドラマを見終えた後、誰かにLINEしたくなる。電話したくなる。そして恋がしたくなる微笑ましき作品に、改めて拍手を!

<TEXT/スナイパー小林>
【スナイパー小林 プロフィール】
ドラマ解説、芸能、恋愛、カルチャー、美容・健康ネタ好きのライターであり、編集者であり。執筆や編集を手がけた媒体は100冊以上。約20年以上ドラマをこよなく愛し、ついには趣味が仕事になった幸せ者のアラフォー。Twitter:@hisano_k