4月初め、中国の北朝鮮レストランから脱出し韓国入りした従業員13人。総選挙直前の集団亡命公表など政治的な思惑があるとの疑念が消えず、韓国メディアで論争が巻き起こっている。写真は中国の北朝鮮レストラン。

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2016年6月25日、中国の北朝鮮レストランから脱出し韓国に亡命した従業員13人をめぐり、韓国メディアで論争が起きている。あまりにも手際の良い亡命劇に加え、公表は韓国入りの翌日で、しかも4月13日の総選挙の5日前。政治的な思惑が隠されていたとの疑念がつきまとうためだ。

聯合ニュースによると、韓国政府は21日、13人を外部から隔離された国家情報院の北朝鮮離脱住民保護センターに引き続き滞在させ、統一部傘下の北朝鮮離脱住民定着支援事務所(ハナ院)に送らない決定をした。一般的な脱北者は保護センターに70日間滞在後、ハナ院で12週間の定着支援教育を受けるのが通例で、極めて異例の措置という。

これに先立ち、韓国の弁護士グループは北朝鮮の家族が「韓国に拉致された」と主張していることを受けて、裁判所に「人身保護救済審査」を請求。13人が自らの意思で韓国に来たのかどうかを確認するよう求めた。

「真相究明」の論陣を張ったのは、左派系のハンギョレ新聞。「韓国政府が自ら招いた集団脱北疑惑」との社説で、「政府は真相把握に必要な情報は全く公開しないまま『自発的な脱北』という話だけを繰り返している」と非難した。

その上で、「このような形では北側だけでなく韓国国民や国際社会にも理解してもらうことはできない。時間がたつほど政府が従業員らを相手に無理に口裏合わせを試みているという疑いがさらに強まるだろう」と指摘。「国家情報院が対北朝鮮の情報力や独占的な権限を使って国内政治に介入する例はこれまで飽きるほど繰り返された。今回の事件に関連してもそう考える人は少なくない」などとして、弁護士グループが求める法廷証言を支持した。

これに対し、保守系の朝鮮日報は「北の人権問題に沈黙し脱北者にむち打つ韓国の『民主派』弁護士」との社説を掲載。「元従業員が法廷で『自分の意思で韓国にやって来た』と証言した事実が伝えられた場合、北朝鮮に残る家族らは反逆者と見なされてしまう」「うそを言って北朝鮮の家族を守るか、あるいは真実を言って家族を窮地に追い込むか、どちらかを選択させるのは単に人権に反するという次元を超え、文字通り残忍な仕打ちと言わざるを得ない」などと反論した。

やはり保守系の中央日報は社説で「総選挙直前に当局が非公開慣例を破って急いで入国事実を公開したのは、総選挙に影響を及ぼすという意図がある誤った行為だ」としながらも、「脱北者保護は当事者の人権と国家安保を考慮するべき」などと論じた。

13人のうち、女性12人の生活ぶりについて、朝鮮日報は「『美人過ぎる』脱北レストラン従業員ら、目立たないように保護」と報道。政府筋の話として「韓国のニュースやテレビドラマを視聴し、ファミリーレストラン、遊園地などに何度も行って、韓国社会の一員になるための訓練を受けている」「12人は全員が美人で、同時に外出すればすぐ目につくことから、3、4人ずつのグループに分かれて行動している」などと伝えている。(編集/日向)