中国とフィリピンが領有権を争う南シナ海の「スカボロー礁」。中国による要塞化を警戒する米国は軍事的な圧力を強めてけん制。中国が本格的な埋め立てに着手すれば、衝突の危険性も高まっている。資料写真。

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2016年6月24日、中国とフィリピンが領有権を争っている南シナ海の「スカボロー礁(中国名・黄岩島)」が注目を集めている。米国は実効支配する中国による要塞化を警戒し、空母2隻をフィリピン近海に同時展開するなどして、けん制。中国が本格的な埋め立てに着手すれば、軍事衝突の危険性もはらんでいる。

スカボロー礁は、比北部ルソン島西方約200キロに位置する三角形の環礁。比が主張する排他的経済水域(EEZ)内にある。海底の山が水面に露出した部分で、周囲約55キロ、礁湖の面積は130 平方キロ。最高点は標高約3メートルで、礁湖には南東部に外海とつながる長さ約400メートの水路があり、小・中型の船が礁湖で漁業活動をしたり、風を避けたりすることができる。

中国側の主張によると、スカボロー礁の科学的測量調査活動は1977年に始まり、78年、85年と続き、90年3月31日には大地測量標識を設置した。標識の写真は2013年5月に公開され、標識の存在によって中国の継続的な行政管轄という歴史の記録が完全なものになったとしている。

スカボロー礁をめぐっては、97年から99年にかけて付近で、中国の漁船と比海軍の艦船が対峙(たいじ)・衝突する事件が多発。99年11月には比海軍の軍艦がパトロール中に座礁した機会を利用して実効支配を試みたが、中国側の要求で撤去したこともあった。2012年4月にはサンゴなどを密漁していた中国漁船を拿捕(だほ)しようとした比監視船とこれを妨害する中国の監視船が1カ月以上もにらみあう事件が起きた。

この頃から中国が支配下に置くようになり、13年になると、比側から「少なくとも3隻の大型船舶がスカボロー礁に相次ぎ訪問しているほか、大量の中国漁船がセメント、鉄筋、石などの建材を運び込んでいるとのことが衛星写真で明らかになった」「中国が約30個のコンクリートブロックを設置している」などの発言が相次いだ。比政府は13年1月、南シナ海の領有権をついて、国際常設仲介裁判所(オランダ・ハーグ)に提訴している。

香港メディアなどは今年4月、中国軍に近い筋の話として「スカボロー礁の埋め立て工事が年内にも始まり、滑走路の建設が計画されている」と報道。同時期にカーター米国防長官は「非常に深刻に受け止めている。(埋め立てと軍事拠点化は)軍事衝突を引き起こし得る」と指摘し、米メディアも「ルソン島中部のクラーク基地に一時配備中の米空軍の対地攻撃機A10などが周辺で哨戒活動を行った」と伝えた。

さらに、日本メディアによると、米海軍は空母「ジョン・C・ステニス」と「ロナルド・レーガン」の2隻が比近海に同時展開し、イージス艦、潜水艦などで構成される両空母の機動部隊が18日から海洋監視や航空戦、長距離攻撃などの訓練を繰り広げたことを明らかにした。この地域での2空母艦隊の同時展開は14年以来。一連の米軍の行動は、スカボロー礁を含む南シナ海での中国側の動きを察知。圧力をかけたとみられる。(編集/日向)