連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第12週「常子、花山伊左次と出会う」第71話 6月24日(金)放送より。 
脚本:西田征史 演出:岡田健


冒頭の音楽、ゴジラかと思ったら、違った。
太平洋戦争がはじまった。

そして昭和17年、春。
甲東出版の雑誌も「戦意高揚の退屈な読み物ばかり」(by五反田〈及川光博〉)になり、紙質も粗悪に。
それでも仕事がないだけましの状態で、戦意高揚どころか意気消沈。
どこも厳しく、青柳で働く屈強な男たちも辞めてしまって、かつてあんなに活気に満ちていた深川が閑散となってしまった。
用件を言いなと言われながら、前置きが長い清(大野拓朗)。それだけ言い出しにくい衝撃の事実。
2ヶ月後、深川の木材商は個人営業禁止になるという。
個人じゃなきゃいいのか? とすかさず隈井(片岡鶴太郎)が聞く。
陸軍の下請けになるなら存続できるかもしれないと聞いた滝子は、続けることを選ぶ。
200年の伝統を閉ざすことはとても苦しい・・・たとえ、国の傘下に入るとしても。
ところが、結局、店は続けられないらしく・・・。
ずーっと下町の老舗の誇りをもって、粋に生きてきた滝子だったのに、老いて、病んで、誇りである店すら下請けに成り下がるなんて、人生ってままならない。

いくら物語の登場人物とはいえ、がんばってきたひとの晩年をこんなふうに描くなんて、作家は酷だ。
君子(木村多江)が思い出の神社で祈っていると、やって来た滝子は「祈るのがもったいないよ」と言う。
君子が子供の頃、大凶を引いた時も「おまえに何がおきようがわたしが守ってあげるから」と言った回想シーンを経て、滝子は決して神に依存せず、運命にも負けず、自分の力で生きる人なのだなと思った。大地真央のあふれるエネルギーが、滝子を惨めな老女にさせない。脚本を凌駕する俳優の強さは、運命を乗り越える人間の強さだ。
美子(杉咲花)がお祭りに行くため滝子の浴衣を縫っている。はたしてみんなでお祭りにいけるのか。
(木俣冬)