なるほど!論戦ポイント/「税収増21兆円」の中身/“果実”どころかマイナス

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 安倍晋三首相は選挙戦の中で、税収の増加をアベノミクスの「果実」として自慢しますが、皮をむいてみると「実」は出てきません。21日に開かれた党首討論会(日本記者クラブ主催)では、日本共産党の志位和夫委員長が、現在の税収との比較で首相が持ち出す2012年度は、リーマン・ショック(08年)と東日本大震災(11年)の二重の打撃を受けて税収が減った時期だと指摘。「巨大な外的要因をまったく考慮せず、数字だけを比較するやり方がフェアな政策論争といえるでしょうか」と迫りました。

 首相は「確かにリーマン・ショック、東日本大震災がありました」と認めざるをえませんでした。それでもなお、「私たちが増やした21兆円。これはリーマン・ショック以前よりも増えている」と言い張ったのです。

 しかし、リーマン・ショック前の07年と比べて税収が増えたといっても、増えたのは消費税増税分です。

 首相が「21兆円」を算出するにあたって用いた数字は、国・地方の当初予算段階での税収見込み額です。地方の税収には、計画外の超過課税など通常の見込み額に表れない数字も加えています。

 この算出方法に基づくと、確かに16年度の税収は12年度と比べて21兆円増えています。しかしそのうち9兆円は消費税の増収として国民から吸い上げたものです。07年度と比べると、税収は全体で4兆円しか増えていない上、消費税の増収9兆円を差し引けば5兆円ものマイナスです。つまり、消費税増税分を除けば「リーマン以前よりも増えた」どころか、大幅に減ったままなのです。(グラフ)

 (1)景気の「谷底」との比較(2)消費税増税分の加算―という二重の水増しを取り除くと「果実」は消えてなくなってしまうというのが真相です。

 「すべて自分たちがやった(経済)政策の果実としていうのは、あまりにもおとなげない」

 日本記者クラブでの討論会で、記者からの指摘に、首相はいら立ちを隠せず、大仰な手振りで必死に応戦。しかし、水増し数字を繰り返し誇ってみせただけで、「リーマン・ショック前より増えたのは消費税増税分」という事実に何ら反論できませんでした。破綻した「税収果実」論に今後もなお固執するなら、無分別の極みというものです。

 (杉本恒如)