液体窒素に漬けて、粉々になるものとならないものの違い

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あらゆるものは、液体窒素に長い時間浸しておけば粉々に割ることができる。錠、野球ボール、バラの花、ギター…。『WIRED』US版の記者がこれらのものを破壊するスローモーション映像と、冷却されたものが粉々になりやすい科学的な理由。

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ハンマーで、錠を粉々にするのを見たことがあるだろうか? 約76Lの液体窒素と『WIRED』US版記者の飽くなき好奇心のおかげで、そのシーンをスローモーションで見られるようになった。

動画を見ていただくとおわかりのように、冷却することで破壊しやすいものと破壊しにくいものがある。例えば、冷却された錠は粉々になるが、野球ボールは粉々にはならない。バラの花はあっというまにバラバラになるが、クジャクの尾羽は壊れない。これはどういうことだろうか?

「野球ボールは、発泡スチロール製のカップのようなものなのです」とスタンフォード大学の生物物理学者マイケル・フェイヤーは説明する。つまり、野球ボールは空気と乾燥材料をいっぱい含んでいて、十分に断熱されているというのだ。「内部が冷えるまでに時間がかかるので、表面だけが冷たい状態になるのです」

水分子をいっぱい含んだバラは、冷却して衝撃を与えればあっというまにバラバラになる(水は凍るときに小さな結晶を形成するので、構造が堅くなって壊れやすくなるのだ)。だが野球ボールを粉々にするには、(こうした構造的な理由から)液体窒素にかなりの長時間浸しておかなければならない。

といっても、野球ボールもクジャクの羽も、ほぼすべてのものは、液体窒素に十分長い時間浸してから衝撃を与えれば粉々に割れる。液体窒素に浸すのに要する時間は物質内で熱が伝わる速さによって異なり、科学者はこの速さを「熱伝導率」と呼んでいる。

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そもそもなぜ、冷却されたものはバラバラに破壊されるのだろうか? 分子は冷やされると、移動速度が遅くなって互いにくっつきやすくなる。その状態で強打されると、分子は移動できないので衝撃の圧力は拡散されにくい。その衝撃が物体の破裂を引き起こすことになる。

液体窒素に長い時間漬けると、熱伝導率に関係なく、どんな物体にも同じことが起きる。おそらく、この実験をするのにいちばんふさわしいのは、映画『ターミネーター』に登場するアンドロイド「T-1000」ではないだろうか(T-1000には、急速に冷却された直後に破壊されるとしばらく再生できないという弱点がある)。