オーケン大好きな荒木飛呂彦先生


ジョジョ第四部の中ボス、レッド・ホット・チリ・ペッパー(以下レッチリ)の本体である音石明がようやく顔出し。見た目や長髪のヘアスタイル、目の周りのメークまで完全に一致してる90年代のオーケンこと大槻ケンヂ氏がモデルじゃないの? それは「疑惑」ではなくたぶん「真実」だ。


まず原作者の荒木飛呂彦先生とオーケンは『ジャンプノベルvol4』(1993年4月1日号)で対談している。『新興宗教オモイデ教』など小説家でもあるオーケン(以下、敬称略)は「物語」を作る辛さやオカルトの魅力、自分の創作したキャラと“対談”(本人だと思い込んでる人)した小説家・H井K正さんの底知れなさに盛り上がったり。中でもUFOオタク・オーケンの熱いパッションが、あるキャラに影響したかも…といろいろ含蓄の深いトークである。
この出会いをきっかけに荒木先生がオーケンファンになったかといえば、おそらく因果関係が逆だ。対談の前後、原作の端々でオーケン=筋肉少女帯がネタがちらほらあり、かなり筋金入りのファンだったことが伺えるからだ。
山岸由佳子に襲われたときの康一くんの部屋にも「KING SHOW」のポスターが貼ってある。KING SHOWとはオーケンのバンド・筋肉少女帯のオフィシャルな略称だ。そして崖から落ちた由佳子の命を救ったボヨヨン岬は、どう考えてもオーケンの『ボヨヨンロック』からだろう。
つまり「対談したことで思いついたキャラ」ではなく「対談したから、オーケン本人の許可を得た」ということ……? 過去を再現できるムーディ・ブルースのスタンドが欲しい!

第12話は、こんなお話


ジョセフ・ジョースターの命を狙うレッド・ホット・チリ・ペッパーを倒すべく、仗助たちは港に集まっていた。バッテリーのついた何かでジョセフの船へと乗り込むであろうと考えた承太郎は、仗助と康一を港に残し、何かが飛び立ったら本体を探して撃退するよう命じる。ジョセフに対する複雑な気持ちを抱く仗助の前に、勝利を確信したレッド・ホット・チリ・ペッパーの本体が姿を現す!

ギタリストの指をへし折る鬼主人公


承太郎とスタープラチナの主役コンビ、久しぶりに能力を発揮。ただしジョセフの乗るトラフィック号が来てることを、はるか陸地から確認する「すごい視力」に限って。
第四部での承太郎は、まさに理想の先輩だ。対アンジェロ戦では驚くことしかせず、仗助に化けたサーフィスにはペンで殺されかけ、脅迫しに来たレッチリには電話を壊され……と控えめで、主役の見せ場は奪わない。
その代わり、本体である承太郎の判断力がスゴい。ジョセフは船で来る→レッチリが動けるのは電気が通っている場所だけ→何かを「飛ばす」しかない→バッテリーが付いてモーターボートより速いもの→町の模型屋からラジコンを盗んでくる→何かが飛んだら港で本体を探せ→自分と億泰は船に、仗助と康一くんは港に→全て読みきられたレッチリ本体が登場。

ただし超高速で動けるレッチリに、スピードで対抗できるのはスタープラチナだけ……と結果から逆に考えると、港には承太郎が残っておけば良かったのでは? いや、分かっていたが「仗助に自分の父親を助けさせてやりたいから」との思いやりとすれば……深読みするとキリがないので、考えるのをやめた。
お久しぶりといえばジョセフ・ジョースター。「ワシの杖はどこか知らんかね?」という目の前に杖があったのは、第二部の主人公として衝撃だった。義手がキリキリときしむ音が第三部から10数年の歳月を織り込んでいて音響のいい仕事だけど、よけい老化が心配になるじゃないですか。
レッチリの本体・音石明が、声だけの出演から実に7話ぶりに登場。エディ・ヴァン・ヘイレンを尊敬し、本人もウルトラ・スーパー・ギタリストを目指しているとあり、アニメでどこまで音響にこだわるか、放送前から注目だった。
うん、本人だ。ギターの演奏は音楽アニメ?というぐらい本格派、ギターで「イエェェェェス」と弾くくだりは擬音の書き文字で再現している。「テメェーオフクロモコロシテヤルゥー」ってどんな演奏なんだ…という長年の疑問への答えは「声優が本当にそうしゃべる」。さらに「ライトハンド奏法」というテロップも拾われていて、唯一の残念は「万雷の拍手をおくれ世の中のボケども」の台詞がカットされたぐらい。

ちなみに、音石を演じる森久保祥太郎さんは歌手活動もやっておられて、ギターも弾けるし作詞作曲も手がけている。つまり音石明“ほぼ”本人! それも(ゲームの『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』以来)キャスティングされた理由の一つじゃないかと憶測されたほど。
そんな音石明のキャラを踏まえていると、演奏にとって命の「小指一本」で仗助の腕を吹っ飛ばすと宣言した重みや、その小指をへし折った仗助の容赦なさにも震え上がるというもの。ギタリストの指を折る鬼主人公!
バトルの第一ラウンドは、クレイジーダイヤモンドごと動かして方向を変える超スピードのレッチリに対して、「アスファルトをコールタールに戻し、油膜がふくらんだ瞬間にブチのめす」仗助の作戦勝ち。この「すごい速さで本体を移動させる」って第三部のDIOもやっていたことで(ポルナレフの「あ……ありのまま 今 起こった事を話すぜ」)荒木先生、このトリック好きですよね。

億泰なりの成長


仗助VS音石明の第二ラウンドは、港を太陽に照らす凄まじい電気エネルギーの集中によって開幕。杜王町の電気インフラを丸ごと力に変えるレッチリの本気であり、『新世紀エヴァンゲリオン』的にいうと「ひとりヤシマ作戦」である。
スタープラチナのガードを跳ね上げたこともあるクレイジーダイヤモンドに対して、パワーで競り勝つレッチリの底力。そんな力押しの攻撃よりも、「今使った電気料金は全額 てめーん家のメーターにつけといてやるよ」という“口撃”の方が心にぐさりとダメージ。原作では100万円ぐらいと言ってたな……。
ふっ飛ばされたクレイジーダイヤモンドを追打ちすると、破壊されたタイヤが「直され」てレッチリを閉じ込める。こんな薄っぺらいゴムごとき……とぶち破ったら、パンパンだった空気圧の勢いで海中にブワシァァァン! あわれレッチリは拡散して、本体の音石も立ったまま死亡。今回の康一くん、塩水ってのは思いっきり電気を流すんだ……という解説役と「エコーズの50mの射程で承太郎と通信」しかしてない!
ここで「主人公、勝利」で終わらないのが第四部のいいところ。音石はやっぱり生きていて、泳いでトラフィック号に侵入してジョセフ殺害を図る。SPW財団の船員に変装した音石の顔は、まだ承太郎達にバレてない。
レッチリが現れ、二人いる船員のどっちを殴るかの決断をせまられた億泰は、一発で音石を殴り倒す。なんで分かったんだ?
「二人ともぶん殴るつもりだったんだよ」
前回の敗北で頭の悪さを自覚して、最も近道を選び取った(間違いなら仗助が治せばいい)。これもまた人間的な成長だ! 兄・形兆の敵を弟に討たせてあげた荒木先生の優しさも胸にしみる。
戦いでは全く見せ場はないが、ジョセフもいい味を出している。億泰を「おそ松くん」と言い間違えたり(ここは原作通り、アレとは無関係)レッド・ホット・チリ・ペッパーをポッポ・ポッポ・ハト・ポッポと言ってみたり、耳が遠くなったふりしてワザとやってないか?
そんな笑いどころもありつつ、杖が折れた父・ジョセフの「杖」になる息子・仗助。空気を読む康一くんもいい、杖を直せばいいのにと空気読まない億泰も美味しい!きれいに終わったと油断させた後、バスタブに不気味に残る手だけの死体。ああ、第四部の本番はここからだ……。

さらに、前々から予告されていたBlu-ray&DVD全巻購入特典・完全新作OVA「岸辺露伴は動かない」のエピソードは「富豪村」に決定ィィー! スピンオフながらジョジョらしい駆け引きもありスタンドの活用もあり、妥当なチョイスじゃないでしょうか。
(多根清史)