就労状況にある女性の57%が非正規雇用という現代。非正規雇用のなかで多くの割合を占める派遣社員という働き方。自ら望んで正社員ではなく、非正規雇用を選んでいる場合もありますが、だいたいは正社員の職に就けなかったため仕方なくというケース。しかし、派遣社員のままずるずると30代、40代を迎えている女性も少なくありません。

出られるようで、出られない派遣スパイラル。派遣から正社員へとステップアップできずに、ずるずると職場を渡り歩いている「Tightrope walking(綱渡り)」ならぬ「Tightrope working」と言える派遣女子たち。「どうして正社員になれないのか」「派遣社員を選んでいるのか」を、彼女たちの証言から検証していこうと思います。

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今回は、都内で派遣社員をしている宮澤絵里さん(仮名・25歳)にお話を伺いました。濃い目のメイクに、少し前のギャルのような派手目なファッションの絵里さん。露出度の高い服装のため、男性にモテそうな印象を受けました。

絵里さんは、六大学に名を連ねる某大学を卒業後、有名IT企業へ就職します。

「新卒採用で入社するのが一番良い条件のところへ行けると思って、就活は頑張りました。大学時代はファストフードのバイトを長く続けていたので、そこでの経験もアピールしましたね」

同期入社した新卒の中でも、進んで朝掃除を行ない、新しい企画を提案するなど一目置かれる存在だったと言います。

「入社してすぐに自社カードの販促のノルマがあったのですが、大学時代の友人や、バイト先の仲間などに声をかけて、50枚近く加入させました。達成感がありましたね。」

順調に思えた絵里さんだったが、人生を左右する出来事が起きてしまいます。

「法務部にいた男性との間に子供ができちゃって。数か月は周りに隠していたのですが、結局、デキ婚しました」

新卒社員が、入社1年で妊娠するとは前代未聞。もちろん、育児休暇を取得し復職するつもりだったが、周りからの圧力に負けてしまい絵里さんは寿退社を選びました。

「最初に、社内の人事部に休暇の相談に行ったんですよ。そうしたら、暗に退職を勧められて……。確かに、妊娠中のつわりがひどくて有給を使ったり、遅刻したりもしましたが、それまでの業績を何も認めてもらえないのがひどいと思い、退社しました」

退職後は育児に専念し、専業主婦となった絵里さん。

「夫は10歳年上で、社内で見た時は、会話の中に“コンプライアンス”とか“コミット”とか出てきて、なんかかっこよく見えちゃったんですよね。実際、妊娠してからの同居で挙式も挙げられず、産後、働かない私を“クズ”“育児は仕事じゃない”と毎日、罵られました」

絵里さんは、覚悟を決めて1歳の子供を連れて家を出ました。

「とりあえず、最初の1週間は友人の家に居候させて貰ったのですが、赤ちゃんの泣き声がうるさいと近所から通告があり、出なければならず。実家は山形で親には頼れないので、役所に泣きついたのですが、夫と住んでいた家に住民票があり生活保護の申請もできなくて。とりあえず貯金を崩してアパートに引っ越しました」

絵里さんは協議離婚の末、親権を獲得しました。しかし、相手方に浮気や暴力と言うような有責行為が認められず、慰謝料なしでの離婚となったのです。

「ひどいですよね。長年法務にいたし、誰かが入り知恵したんだと思います。養育費も、離婚を急いでしまったために、きちんと取り決めをしないで離婚してしまって支払われていないんですよ」

まさに、崖っぷちともいえる絵里さん。しかし、本人はいたって前向き。

「あんなモラハラと一緒にいるよりは、1人の方が楽ですし。すぐにSNSの交際ステータスも“独身”に変えました」

そんな絵里さんが即座に飛びついたのは、「派遣」という働き方でした。

「とりあえず、派遣に登録に行き事情を話しました。コーディネーターの方が親身になって探してくれて、大手の事務に派遣が決まりました。派遣でも保険にも加入できるし、出会いもあるし、まあいいかって」

予想外の妊娠。新婚生活は短く、苦痛だったと言う絵里さん。再婚相手が見つかるといいなと思いながら、派遣を続けていると言います。

シンママとして再スタートをした絵里さんが起こしたトラブルとは? 〜その2〜に続く。