ヒトラーが現代にタイムスリップ!?超問題作のヒトラー役俳優を直撃!
 ベストセラー小説を映画化し、本国ドイツをはじめ、世界で快進撃を続けるコメディ『帰ってきたヒトラー』が、日本でも上映開始。あのアドルフ・ヒトラーが現代にタイムスリップし、物まね芸人と勘違いされて、あれよあれよという間に人気者になってしまう奇想天外は物語なんです!

⇒【YouTube】『帰ってきたヒトラー』予告編(ロングバージョン) http://youtu.be/aNe7vqy7dng

 映画版ではヒトラーが街中に飛び出して突撃インタビューをし、ドイツの人々の素の反応も収めています。ヒトラーを演じたオリヴァー・マスッチさんを直撃しました。

◆70年の間にヒトラーが長身に!?

――ドイツでこうした作品が作られたことにビックリしました。マスッチさんはもともとヒトラーを演じていたわけではなく、見た目や体格も違いますが(ヒトラーは170センチちょっとで、マスッチさんは190センチ)、不思議とヒトラーに見えてきます。

マスッチ:体格も顔も全然似てないですからね。背が高すぎるという人もいましたが、70年の間に成長したんですと答えていました(笑)。ヒトラーというと、演説をしてプロパガンダをするイメージです。しかし私はそういうヒトラーではなく、すごくソフトで父親のように国民を包む、困った人の言うことを聞いてあげるヒトラーを意識しました。でも語っている内容は、当時ヒトラーが言っていたことと同じなんです。それなのにみんなが話を聞き、うまく機能してしまうことに正直、驚きました。

⇒【写真】はコチラ http://joshi-spa.jp/?attachment_id=540313

◆ヒトラーだけでなく、選んだ国民もモンスター

――街でのインタビューで右寄りの人々が多かったことも衝撃でした。ヒトラーには自然に心の奥底を話してしまうのでしょうか。

マスッチ:ドイツの知識層は、戦後何年も経って、右寄りな発言をする人はドイツにはいないと言ってるんです。でも実際に私たちがああした調査をしたら、いるわけですよ。私たちはカメラを持っているし、なかなか右寄りの発言を聞き出すのは難しいだろうと思っていたのに、驚きましたね。心の中では外国人を敵視したり、外国人が増えることに不安を覚えている人がいるわけです。これはドイツだけでなく、世界中に見られる傾向ですよね。アメリカのトランプとか、ヨーロッパでも右寄りのプロパガンダで先導するような政治家が出ています。

 ただ重要なのは、当時、ヒトラーを選んだのは国民だということ。当時のドイツは第一次大戦で敗戦して、戦時賠償などで国が疲弊してコンプレックスを持っていた。そうした背景のもとでヒトラーを選んでしまった。モンスターはヒトラーもですが、選んだ国民もそうなのです。

――本作はフィクション部分と、街頭インタビューなどのドキュメンタリー部分が混在しています。アドリブの部分でも常にヒトラーである必要があったわけですから、かなり大変だったのでは?

マスッチ:もちろんとても時間をかけて準備しました。最初のうちは問答集みたいなものを作っていて、いくつかパターンを考えていましたしね。原作小説の中に出てくるヒトラーの言葉も頭に叩き込みました。撮影に入る前には、こんなこともやりました。私は自分をヒトラーと思いこんでいて、制服を着てベルリン中を歩き回っている精神病患者という設定。そこにふたりのカウンセラーが来て、2時間半ずつ、合計5時間のカウンセリングを受けたんです。その間、私はずっとヒトラーを演じ続けたわけです。

◆民主主義がいかに脆いものか知った

――実際の撮影での何かエピソードはありますか?

マスッチ:街頭に出てドキュメンタリーを撮影し始めた最初のほうで、高級リゾート地といえる島の大きなレストランで撮影をしました。最初ということもあって、監督がすごく意気込んでいたんですけど、私は自然にやらないとできないと相談しました。それで、こうしたんです。ヒトラーは椅子に座って魚料理を注文して食べる。クルーは後ろに控えているだけ。私は全然パフォーマンスをせずに、座って食べているだけ。でも、人が集まってくるんですよ。やはりヒトラー像には人を惹きつける強い力があると思いました。

――この作品を通じて、感じたことは?

マスッチ:第二次世界大戦では、6000万人ほどの人が亡くなっています。民主主義は犠牲の上で成り立ってきた。簡単に手に入れたものではないのだということを、日本もドイツも世界も忘れてはいけません。私も戦後の生まれですから、生まれたときから民主主義が当たり前だと思ってきました。でもこの映画をやってみて、それがいかに脆いものかを知り、だから守らなくちゃいけないのだと思いを新たにしました。

<TEXT&PHOTO/望月ふみ>
『帰ってきたヒトラー』は全国順次公開中
配給:ギャガ
(C) 2015 MYTHOS FILMPRODUKTION GMBH & CO. KG CONSTANTIN FILM PRODUKTION GMBH
『帰ってきたヒトラー』オフィシャルサイトhttp://gaga.ne.jp/hitlerisback/