インターナショナルドリームカップ2016初戦のスターティングメンバー。日本はハンガリーに4-1で勝利。幸先のいいスタートを切った。写真:安藤隆人

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「今回選ばれたFWの中で僕が一番下だと思っています。だからこそ、結果を残したかった」
 
 インターナショナルドリームカップの初戦のハンガリー戦。久しぶりの代表招集ながら、スタメン出場を果たしたFW棚橋尭士(横浜FMユース)は、気合いがみなぎっていた。
 
 とにかくゴールに飢えていた。というより、試合に飢えていた。プレミアリーグEASTに参戦する横浜FMユースでは、試合はおろかベンチ入りすら果たせていないからだ。
 
「悔しい気持ちはありますが、こういう時こそ自分がやるべきことを考えました。僕はボールを収めるのが得意じゃない。ゴール前でも自分が持ち込む力が足りなかった。だからこそ、マリノスでレギュラーを張る選手たちと試合をする時に、そこを意識して取り組んだ」
 
 他のライバルたちが1年生ながら所属チームで出番を掴み、久保建英や中村敬斗がゴールを奪うなど活躍を見せるなか、悔しさを覚えながらも、地道に自己研鑽に努めた。その結果、棚橋が奮起している様子は、U-16日本代表の森山佳郎監督の耳にも届いた。
 
「2月の合宿で呼んだ時はそこまで良くなかった。しばらく呼んでなかったけど、『最近良くなっている』という話を聞いた」と、今回のインターナショナルドリームカップに招集を決めた。
 
 ハンガリー戦で中村敬斗(三菱養和SCユース)と2トップを組んだ棚橋は、積極果敢な縦への仕掛けとプレスでチームを牽引した。2分にチームのファーストシュートを中村が放つと、棚橋の闘争本能にさらに火がつく。
 
 12分、中村が左サイドからドリブルでカットインを仕掛けると、「中に仕掛けて来ると思ったので、近寄らずDFが食いついてできたスペースを狙おうと思った」とプルアウェイの動きでスペースに潜り込み、そこへ中村からパスが届いた。
 
「相手の足が長いので、遠ざけるためにトラップを大きくして、GKとの間合いを作ってから、逆を狙った」と語ったように、あわてて飛び込んで来た相手DFをずらして、GKの位置を捉えると、空いていたニアサイド目掛けて、正確なシュートを蹴り込んだ。
このゴールを皮切りに、日本は19分に中村が追加点を突き刺し、23分には鮮やかな崩しからMF上月壮一郎(京都U-18)がヘッドで決めて、前半だけで3ゴールを奪い、優位に立った。
 
 
 後半もゴールへの意欲を示し続けた棚橋は、後半アディショナルタイム3分に、MF成瀬竣平(名古屋U18)のシュートがポストに当たったこぼれ球を押し込んで、ダメ押しの4点目。4-1の初戦快勝に大きく貢献した。
 
「物足りないです。もっと獲りたかったし、獲らないといけなかった」
 
 この試合、棚橋はフル出場し、計8本のシュートを放った。2点を獲ったが、6本のシュートを外している。その中には決めなければいけない決定機もあった。だからこそ、彼の中に安堵の気持ちはない。
 
 チャンスはそう回ってこない。それが分かっているからこそ、彼はどこまでも貪欲に、死にもの狂いでこの大会に臨んでいる。
 
「逞しくなった。ずっと入っている奴に挑戦状じゃないけど、良い形で良い刺激を与えてくれたと思う」(森山監督)
 
 中村、久保、宮代大聖というタレントが揃い、U-16日本代表において『最激戦区』となっているFW。不遇の時を過ごしながら、牙を研ぎ続けた棚橋が『下克上』を果たすべく、まずは初戦で存在感を発揮した。

取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)