超音波インプラントSonoCloudで血液脳関門の突破に成功、脳腫瘍の治療が進歩する可能性

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血液脳関門のバリアを突破し、脳内の腫瘍に薬剤を浸透させる臨床治験が成功したという論文が公表されました。頭蓋骨に埋め込む超音波インプラント『SonoCloud』により、これまで困難だった脳腫瘍の治療が飛躍的に進歩を遂げる可能性がありそうです。それ以外の身体の部位と違い、脳と血管との間には、血液の関所ともいえる『血液脳関門』があります。これは脳内にある血管の内側を覆う血管内皮細胞により構成され、特定の物質だけを透過させ、他の物質をブロックするもの。睡眠薬や向精神薬のように分子量が小さいものや、アルコールや麻薬など脂溶性(油に溶けやすい性質)の分子は関門を通過し、脳に作用するという仕組み。逆に言えば、この血液脳関門がブロックしてしまうため、脳腫瘍に浸透させたい薬剤が届かず、治療が妨げられていたわけです。

今回、臨床実験の成功を報告した論文は「Clinical trial of blood-brain barrier disruption by pulsed ultrasound (血液脳関門をパルス状超音波により突破する臨床治験)」というタイトルで、Science Translational Medicineの6月15日号に掲載されました。フランス人の医師チームが、15人の膠芽腫(最も悪性の脳腫瘍)患者に対して行い、実際に薬剤の浸透に成果があったという内容です。



まず直径1cmほどの超音波インプラント「SonoCloud」を手術で頭蓋内に埋め込み(超音波は頭蓋骨で減衰するため)。そして薬剤を投与すると同時に患者の血流に微小なバブルを送り込み、超音波を2分だけ照射して活性化させて脳関門のガードを緩め、バブルとともに薬剤を患部に届ける。一回の施術で6時間ほどの効果があり、通常の5倍から6倍の薬剤が患部に浸透したとのことです。

これまでも超音波により血液脳関門を緩める試みは動物実験で行われてきましたが、今回の報告はヒトの治療においても実用段階に入ったことを示すもの。ただし、研究チームは副作用がないか、細菌が侵入して命に関わる髄膜炎を起こす危険がないか、さらなる検証が必要であるとしています。

現在は2017年に欧米の200人を対象としたより大規模な臨床治験を行うため、計画を立てているとのこと。このまま順調に行けば、早ければ2020年には一般に利用ができるだろうと述べられています。