水球日本代表・保田賢也「水球をメジャースポーツへ」――リオ五輪を目前に控えた今、思うこと。
ギリシャ神話に出てくる海の神・ポセイドンのように、水中で力強く躍動してほしい――そんな願いを込めて“ポセイドンジャパン”と名付けられた水球日本代表が、32年ぶりとなるオリンピック出場を決めた。代表メンバーのひとり、保田賢也選手は2014年、フジテレビ系の人気番組『テラスハウス』に出演していたことでも注目を集めた。鍛え上げられた肉体美と甘いルックスでタレントとしても活躍中だが、「すべての活動は水球のため」だという。水球をメジャースポーツへ。まっすぐな思いを語ってくれた。
撮影/アライテツヤ 取材・文/野口理香子
――昨年12月、水球男子日本代表の32年ぶりとなるオリンピック出場が決定しました。あれから半年が経ち、リオ五輪(2016年8月5日開幕)を約2ヶ月後に控えた今、どういったお気持ちですか?(※取材を行ったのは5月末)
初めてのオリンピックなので、ワクワクしてます。
――ワクワクしてるって言えるのがスゴいですね。もっと緊張している感じかと…。
緊張することは大事なんですけど、それだけで終わっても…。もちろん、「わーい楽しみだー!」って浮かれているわけじゃないですよ(笑)。オリンピックという場所がどんなところなのか、この目でしっかり確かめたいなと思っています。
――オリンピックって何回も出られるものじゃないですもんね。
そうですね。この1回限り、という気持ちで臨むつもりです。結果を出さなきゃいけない、という使命感は日に日に強くなっています。自分たちの課題はだいたいわかっているので、今はそこをしっかり見つめなおしているところですね。
――代表チームの雰囲気はいかがですか?
みんな…どうですかね?(笑)僕らは捨てるものがないので、当たって砕けろみたいな感じ。怖がっている選手はいないと思います。むしろ、やってやるぞ!一泡吹かせるぞ!って思ってるんじゃないかなと。
――代表チームの中で、保田さんはどういうポジションですか? 周りを盛り上げるムードメーカー的存在?
そうですね、「一本!一本!」「行くぞー!」って、いちばん声を出しているかもしれません。僕はディフェンスなので、いちばん下のラインにいて、全体を見渡すことができるポジションだから。シュート決めて流れを変えるという意味でのムードメーカーじゃないですけど、声を出してチームの士気をあげていければと思います。
――大本洋嗣監督は「8強以上が目標」とお話されていますが、保田さん個人としての目標はありますか?
僕は、初戦に全力をかけたいなと思ってます。どの試合よりも初戦が大事。
――その理由は?
予選リーグを突破するためには2勝が必要です。最初の対戦相手であるギリシャは、2015年世界選手権3位の強豪チームなんですが、日本はギリシャと対戦したことが一度もないんですよ。僕ら、初めてのチームには強いっていうのがあるので、勝ちたいなと。
――やはり、“超攻撃型ディフェンス”の導入によって…
そうですね、日本みたいな新しいディフェンスシステムはどこの国も導入してないので、ギリシャもビックリすると思うし、ビックリして怯んでいるうちにやっつけたいなと思います。そこでうまくいけば、次のブラジル戦も絶対に勝てる。
――5月のワールドリーグ予選では、ブラジルに1点差で負けてしまいました。
前回は負けましたけど、ギリシャに勝った勢いでいけば、日本は本当に強いチームになると思うから…勝ちたいです。ブラジルに勝てばリーグ突破。これが最高のパターンですね。チームの目標である「ベスト8入り」を達成するためには、初戦がカギを握っていると思います。
――リオ五輪をキッカケに水球を観る人も増えると思いますが、試合を観るときに「ここに注目したら面白いよ!」っていうポイントを教えてください。
ルールがわかりづらいですよね…(笑)。水球って「ファウルスポーツ」って言われていて、よく笛がピッて鳴るんですよ。もちろんファウルをとられないように気を付けてるけど、そのぶん水中での攻防は激しくて、 相手を掴む、蹴る、なんかは日常茶飯事。
――しかも相手が外国人選手ともなると…
2メートル100キロの相手を止めないといけない。普通のファウルじゃ止められないから、どうしても激しい攻防になってしまうんですよね。僕のポジションはいちばん殴られるし、いちばん蹴られるし、いちばん海パンを引っ張られる。
――わー…そうなんですね…。
ファウルを犯すと、ファウルをされた側のチームにフリースローが与えられます。このフリースローにつながる反則には、軽いのと重いのと2種類ありまして。ボールも持っていない相手を沈めたり、相手を動けなくしたりするような行為。こういう重いファウルを犯した場合、「退水」になります。退水を命じられると一定の時間、試合から除外されてしまう。
――サッカーでいうレッドカードみたいなものですかね?
そうそう、それが頻繁に起こるんです。だから「あれ?なんでひとりいなくなったんだ?」ってとまどうかもしれないんですけど、退水によって相手チームの人数を減らし、やっと攻めることができる。つまり数的有利を作って攻めるのが基本なんだ、ということがわかっていたら面白いと思います。
――保田さんはディフェンスの要…ってことはつまり、相手の選手の動きを封じるために体を張らないといけないという…?
はい。だから僕はよくその退水を命じられるんです。3回退水すると「永久退水」となり、もうその試合には出られなくなります。僕が試合の最後までプールの中にいることはほとんどないですね(笑)。
――そのポジションは昔からですか?
そうです、「フローターバック」って言うんですけど。フローターっていうのは相手チームのシュートをキメる人のこと。サッカーでいう、DFのセンターバックと同じですね。なので、ゴール前のフローターとフローターバックは、より有利な位置取り、より有利な体勢を確保するため、掴みあったり、引っ張りあったりするわけです。
――ふむふむ…。
僕らフローターバックは、相手フローターを抑えるのが一番の仕事で、シュートを打たれるくらいなら退水してでも止めるのがセオリー。僕がサボるとシュートをバシバシ決められてしまいます。
――あぁ…。でも怖がってられないわけですね…。
怖がった瞬間にやられますからね。
――五輪までほとんど合宿ですよね。
ですね。オフがあるかどうかなーくらい。
――合宿でのトレーニング内容というのは?
もうずっとフィジカルトレーニングですよ。1日のスケジュールでいうと…あ、ヤバいヤツ言いましょうか?“魔のグアム合宿”というのがありまして。
――魔の……!?!?
朝6時に起きて、ごはんを食べて、7時に入水。じゃあ1万メートル泳ごうか、と。それもただ泳ぐだけじゃなく、100メートルダッシュ×10本とか、いろいろメニューがあって。そのあと、1時間半ウエイトトレーニングやって、昼飯を食べて寝て、午後は3時からプールに入ってボールの練習。それが終わったらまた1時間半ウエイトトレーニングやって、就寝。この生活を10日間ほど…。
――おお……
だからもう、グアムには絶対旅行では行かないです。そういう辛い合宿を思い出すので(苦笑)。
――それだけハードなトレーニングのあとの食事って、どういうメニューなんですか? いや、でもごはんを食べる元気も出なそうな…。
そうですね…グアム合宿では4キロ落ちました。僕らの運動量=食事量っていうのは絶対摂れないんですよね。そのために、プロテインとかいろんなサプリメントを摂っているわけです。
――保田さんの勝負メシってなんですか?
勝負メシ……ないっす。食にこだわりがないんで、なんでも食べます。
――白米と肉をガッツリ食らう、っていうイメージがありました(笑)。
白飯は大好きですけど、肉は…脂身はあんまり好きじゃないですね。好きな食べもの…なんだろう? しいて言えば、ラーメンかな?
――ラーメン屋に行ったら、一杯じゃ足りないのでは…?
いや、一杯で足ります(笑)。合宿中はしっかり食べますけど、普段はそこまで食べないんですよね。食べろって言われたら食べますけどね、カレーだったら2キロとか。
――1日オフがあったとしたら、どうやって過ごしますか?
とりあえず寝ますね。アラームかけずに寝て。起きて。何しようかな〜。友だちと会う約束をしてなかったら銭湯に行くかな。銭湯にいって汗流して、あースッキリしたなーって。また水かよっていうね(笑)。
――(笑)。買い物とかは?
買い物、好きです。洋服が好きなので。でも今は新潟に住んでいるので、たまに仕事で東京に出てきたときにぷらっと立ち寄るくらいかな。
――では、多忙な保田さんを癒やしてくれるものはなんですか?
なんだろう……。次の日の朝、練習がないって考えて寝るときですかね(笑)。いつも逆算しちゃうんですよ、寝るときに。朝何時にプールに入るってわかってるから、そこから逆算して、あと8時間しかない…って考えると、眠れなくなっちゃう。
――えーっ…
寝るのが怖い時期とかありましたもん。グアム合宿のときとかそうでしたね。朝起きたら1万メートル泳がなくちゃいけないと思うと、怖くて寝れなくて。だからそういうのを考えずに寝たいですね…(笑)。とにかくゆっくりしたいです、川とか行って。
――やっぱり水からは離れられないんですね(笑)。
アハハハ。川辺でバーキューしたいんですよね。「スイカ、冷やしたよー♪」みたいな。スイカあんまり食べないですけど。ただ、川は好きだけど、海は好きじゃないんですよね。
――そうなんですか、意外です。
人が多くて、ゆっくりできるって感じじゃないから…。あ、でも彼女がいて、「海に行きたいな〜」って言われたら断らないですよ、一緒に行きますよ。行くけど、ボクは浜辺でビール飲んでるだけで、海には入りません(笑)。
撮影/アライテツヤ 取材・文/野口理香子
リオ五輪ベスト8入りのカギは「初戦」
――昨年12月、水球男子日本代表の32年ぶりとなるオリンピック出場が決定しました。あれから半年が経ち、リオ五輪(2016年8月5日開幕)を約2ヶ月後に控えた今、どういったお気持ちですか?(※取材を行ったのは5月末)
初めてのオリンピックなので、ワクワクしてます。
――ワクワクしてるって言えるのがスゴいですね。もっと緊張している感じかと…。
緊張することは大事なんですけど、それだけで終わっても…。もちろん、「わーい楽しみだー!」って浮かれているわけじゃないですよ(笑)。オリンピックという場所がどんなところなのか、この目でしっかり確かめたいなと思っています。
――オリンピックって何回も出られるものじゃないですもんね。
そうですね。この1回限り、という気持ちで臨むつもりです。結果を出さなきゃいけない、という使命感は日に日に強くなっています。自分たちの課題はだいたいわかっているので、今はそこをしっかり見つめなおしているところですね。
――代表チームの雰囲気はいかがですか?
みんな…どうですかね?(笑)僕らは捨てるものがないので、当たって砕けろみたいな感じ。怖がっている選手はいないと思います。むしろ、やってやるぞ!一泡吹かせるぞ!って思ってるんじゃないかなと。
――代表チームの中で、保田さんはどういうポジションですか? 周りを盛り上げるムードメーカー的存在?
そうですね、「一本!一本!」「行くぞー!」って、いちばん声を出しているかもしれません。僕はディフェンスなので、いちばん下のラインにいて、全体を見渡すことができるポジションだから。シュート決めて流れを変えるという意味でのムードメーカーじゃないですけど、声を出してチームの士気をあげていければと思います。
――大本洋嗣監督は「8強以上が目標」とお話されていますが、保田さん個人としての目標はありますか?
僕は、初戦に全力をかけたいなと思ってます。どの試合よりも初戦が大事。
――その理由は?
予選リーグを突破するためには2勝が必要です。最初の対戦相手であるギリシャは、2015年世界選手権3位の強豪チームなんですが、日本はギリシャと対戦したことが一度もないんですよ。僕ら、初めてのチームには強いっていうのがあるので、勝ちたいなと。
――やはり、“超攻撃型ディフェンス”の導入によって…
そうですね、日本みたいな新しいディフェンスシステムはどこの国も導入してないので、ギリシャもビックリすると思うし、ビックリして怯んでいるうちにやっつけたいなと思います。そこでうまくいけば、次のブラジル戦も絶対に勝てる。
――5月のワールドリーグ予選では、ブラジルに1点差で負けてしまいました。
前回は負けましたけど、ギリシャに勝った勢いでいけば、日本は本当に強いチームになると思うから…勝ちたいです。ブラジルに勝てばリーグ突破。これが最高のパターンですね。チームの目標である「ベスト8入り」を達成するためには、初戦がカギを握っていると思います。
“水中の格闘技”…激しすぎる攻防戦
――リオ五輪をキッカケに水球を観る人も増えると思いますが、試合を観るときに「ここに注目したら面白いよ!」っていうポイントを教えてください。
ルールがわかりづらいですよね…(笑)。水球って「ファウルスポーツ」って言われていて、よく笛がピッて鳴るんですよ。もちろんファウルをとられないように気を付けてるけど、そのぶん水中での攻防は激しくて、 相手を掴む、蹴る、なんかは日常茶飯事。
――しかも相手が外国人選手ともなると…
2メートル100キロの相手を止めないといけない。普通のファウルじゃ止められないから、どうしても激しい攻防になってしまうんですよね。僕のポジションはいちばん殴られるし、いちばん蹴られるし、いちばん海パンを引っ張られる。
――わー…そうなんですね…。
ファウルを犯すと、ファウルをされた側のチームにフリースローが与えられます。このフリースローにつながる反則には、軽いのと重いのと2種類ありまして。ボールも持っていない相手を沈めたり、相手を動けなくしたりするような行為。こういう重いファウルを犯した場合、「退水」になります。退水を命じられると一定の時間、試合から除外されてしまう。
――サッカーでいうレッドカードみたいなものですかね?
そうそう、それが頻繁に起こるんです。だから「あれ?なんでひとりいなくなったんだ?」ってとまどうかもしれないんですけど、退水によって相手チームの人数を減らし、やっと攻めることができる。つまり数的有利を作って攻めるのが基本なんだ、ということがわかっていたら面白いと思います。
――保田さんはディフェンスの要…ってことはつまり、相手の選手の動きを封じるために体を張らないといけないという…?
はい。だから僕はよくその退水を命じられるんです。3回退水すると「永久退水」となり、もうその試合には出られなくなります。僕が試合の最後までプールの中にいることはほとんどないですね(笑)。
――そのポジションは昔からですか?
そうです、「フローターバック」って言うんですけど。フローターっていうのは相手チームのシュートをキメる人のこと。サッカーでいう、DFのセンターバックと同じですね。なので、ゴール前のフローターとフローターバックは、より有利な位置取り、より有利な体勢を確保するため、掴みあったり、引っ張りあったりするわけです。
――ふむふむ…。
僕らフローターバックは、相手フローターを抑えるのが一番の仕事で、シュートを打たれるくらいなら退水してでも止めるのがセオリー。僕がサボるとシュートをバシバシ決められてしまいます。
――あぁ…。でも怖がってられないわけですね…。
怖がった瞬間にやられますからね。
過酷なトレーニングの実態とは?
――五輪までほとんど合宿ですよね。
ですね。オフがあるかどうかなーくらい。
――合宿でのトレーニング内容というのは?
もうずっとフィジカルトレーニングですよ。1日のスケジュールでいうと…あ、ヤバいヤツ言いましょうか?“魔のグアム合宿”というのがありまして。
――魔の……!?!?
朝6時に起きて、ごはんを食べて、7時に入水。じゃあ1万メートル泳ごうか、と。それもただ泳ぐだけじゃなく、100メートルダッシュ×10本とか、いろいろメニューがあって。そのあと、1時間半ウエイトトレーニングやって、昼飯を食べて寝て、午後は3時からプールに入ってボールの練習。それが終わったらまた1時間半ウエイトトレーニングやって、就寝。この生活を10日間ほど…。
――おお……
だからもう、グアムには絶対旅行では行かないです。そういう辛い合宿を思い出すので(苦笑)。
――それだけハードなトレーニングのあとの食事って、どういうメニューなんですか? いや、でもごはんを食べる元気も出なそうな…。
そうですね…グアム合宿では4キロ落ちました。僕らの運動量=食事量っていうのは絶対摂れないんですよね。そのために、プロテインとかいろんなサプリメントを摂っているわけです。
――保田さんの勝負メシってなんですか?
勝負メシ……ないっす。食にこだわりがないんで、なんでも食べます。
――白米と肉をガッツリ食らう、っていうイメージがありました(笑)。
白飯は大好きですけど、肉は…脂身はあんまり好きじゃないですね。好きな食べもの…なんだろう? しいて言えば、ラーメンかな?
――ラーメン屋に行ったら、一杯じゃ足りないのでは…?
いや、一杯で足ります(笑)。合宿中はしっかり食べますけど、普段はそこまで食べないんですよね。食べろって言われたら食べますけどね、カレーだったら2キロとか。
――1日オフがあったとしたら、どうやって過ごしますか?
とりあえず寝ますね。アラームかけずに寝て。起きて。何しようかな〜。友だちと会う約束をしてなかったら銭湯に行くかな。銭湯にいって汗流して、あースッキリしたなーって。また水かよっていうね(笑)。
――(笑)。買い物とかは?
買い物、好きです。洋服が好きなので。でも今は新潟に住んでいるので、たまに仕事で東京に出てきたときにぷらっと立ち寄るくらいかな。
――では、多忙な保田さんを癒やしてくれるものはなんですか?
なんだろう……。次の日の朝、練習がないって考えて寝るときですかね(笑)。いつも逆算しちゃうんですよ、寝るときに。朝何時にプールに入るってわかってるから、そこから逆算して、あと8時間しかない…って考えると、眠れなくなっちゃう。
――えーっ…
寝るのが怖い時期とかありましたもん。グアム合宿のときとかそうでしたね。朝起きたら1万メートル泳がなくちゃいけないと思うと、怖くて寝れなくて。だからそういうのを考えずに寝たいですね…(笑)。とにかくゆっくりしたいです、川とか行って。
――やっぱり水からは離れられないんですね(笑)。
アハハハ。川辺でバーキューしたいんですよね。「スイカ、冷やしたよー♪」みたいな。スイカあんまり食べないですけど。ただ、川は好きだけど、海は好きじゃないんですよね。
――そうなんですか、意外です。
人が多くて、ゆっくりできるって感じじゃないから…。あ、でも彼女がいて、「海に行きたいな〜」って言われたら断らないですよ、一緒に行きますよ。行くけど、ボクは浜辺でビール飲んでるだけで、海には入りません(笑)。