見た目の変化と健康は深い関わりがありそう

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2016年6月12日、「日本抗加齢医学会総会」で、アンチエイジング医師団の塩谷信幸医師と山田秀和医師が座長を務めるシンポジウム「見た目とその対策」が開かれた。人間の外見、いわゆる「見た目」にエビデンス(科学的な証拠、研究結果)を与え、疾患や老化、加齢による変化を読み解こうとする、興味深い研究結果が多数紹介されている。

見た目が疾患に影響を与えることも

最初に、座長も務める山田秀和医師が登壇し、医療における「見た目」という切り口とは、どのような考え方かを解説した。見た目にさまざまなエビデンスが用意されることで、単なる外見にとどまらず、運動や食事、脳や睡眠といった、健康に重要な要素を包括的に捉えることができるキーワードにもなると言及。見た目という概念の可能性を感じさせる発表となった。

同時に、懸念点として挙げたのが、見た目と健康至上主義が結びついてしまい、「見た目がよくないのだから健康ではない」といった、健康の押し付けや容姿の差別が起きる可能性だ。「幸福であれば長寿になるなら、長寿のために幸福なふりをしなければいけないのか、といった考え方もできる。健康とは何か、冷静に考え直すことも必要だろう」と、過度な健康主義に注意を促した。

続いて、三重大学の山中恵一医師は、皮膚科の立場から、見た目にも大きな影響を与えるメジャーな皮膚疾患、「乾癬」と「アトピー性皮膚炎」を取り上げ、皮膚の炎症が心血管疾患のリスクを高める、という最新の疫学調査を紹介。

重症化した皮膚炎は全身の炎症になり、内臓や血管にも影響を与え、動脈硬化を引き起こし、心筋梗塞にもつながることがある、という発表には山田医師も「皮膚は内臓の鏡と言われるが、皮膚が内臓にも影響する、という事実は興味深い」と関心を示した。

山中医師は、適切な治療を受けていれば皮膚炎は悪化しないが、放置して痒みから皮膚を掻くと、壊れた皮膚からさらに炎症が悪化する物質が放出される、という悪循環に陥ると指摘。感染やアトピーなど病態は違っても、皮膚炎は早期に治療するよう呼びかけた。

見た目の変化はなぜ起きるのか

疾患ではなく、加齢による見た目の変化という視点から、国際医療福祉大学三田病院の奥田逸子医師は容貌の変化を、秋田大学の宮腰尚久医師は体形の変化を取り上げた。奥田医師は、立体的に人体の内部構造を撮影できる「3D-CTスキャン」を用いた、容貌変化の客観的診断を紹介した。

画像の分析から判明した、目の周りに存在する筋肉「眼輪筋」が、解剖学的な知見よりも広く大きいといった事実や、表情筋は骨に密着しているのではなく、わずかに離れている、といったさまざまな事実を踏まえ、顔のたるみの発生メカニズムを解説。

重力の影響を受けにくい、しっかりした土台を持つ、つまり筋肉の構造を保つことが、容貌の若さを保つポイントになると指摘した。

宮腰医師は、整形外科の立場から、加齢によって背中や腰が曲がり、体形が大きく変化してしまう現象を、脊柱(背骨)のゆがみから解説した。

脊柱がゆがむ主な原因として「骨粗しょう症による椎体骨折」「椎間板の狭小化」「背筋力の低下」を挙げ、矯正手術や筋力トレーニングによる解消法も紹介。ゆがみは単に見た目が変わるだけではなく、姿勢が不安定化し転倒リスクが高まる、内臓が圧迫され内臓障害リスクが高まるなどの問題点があると指摘し、治療による解消が不可欠だと訴えた。

反応を解析して見た目を数値化

最後に登壇した夏目綜合研究所の菊池光一氏は、見た目を数値化するというユニークな研究内容を発表した。

見た目の数値化といっても、適当に採点するというわけではなく、脳波や瞳孔、表情反応といった人間のさまざまな反応を機器で測定し、何かを視認したときの人の無意識の関心度合いや感情度合いを数値化して比較するというもの。

例として出された年齢推定実験では、化粧をしていない30代の女性の画像を、20〜40代の女性被験者に見せると、相手の目の周りなどごく狭い部分にのみ関心を持ち、推定年齢は30代とされたが、化粧をした場合の画像は、関心を持つ観察範囲が顔全体に広がり、推定年齢も20代とされた。

日本抗加齢医学会
シンポジウム24 2016年6月12日(日)
座長:
塩谷信幸(NPO法人 アンチエイジングネットワーク、アンチエイジング医師団代表)
山田秀和(近畿大学医学部奈良病院皮膚科/近畿大学アンチエイジングセンター)
演者:
山田秀和(近畿大学医学部奈良病院皮膚科/近畿大学アンチエイジングセンター)
山中恵一(三重大学大学院医学系研究科皮膚科学)
奥田逸子(国際医療福祉大学三田病院放射線診断センター/東京医科歯科大学臨床解剖学分野)
宮腰尚久(秋田大学大学院整形外科学講座)
菊池光一(株式会社夏目綜合研究所)

(Aging Style)