「子どもは天からの授かりもの」というけれど、「最初は娘がほしい」「次は息子がほしいな」なんていう“高望み”をしたくなるのが親心。「アダムとイブのもつれる遺伝子」第6回では、男女の産み分け事情から、児童虐待などの社会問題にも遺伝子が関わっているかもしれない……という衝撃の事実まで、生命情報学がご専門の国際医療福祉大学助教、筒井久美子(つつい・くみこ)先生に伺います。

大きく違う日本とアメリカの「産み分け」事情

「娘or息子がほしい……」。揺れる親心を象徴するかのように、「産み分け」で検索すると、ネット上には「本当なの?」と疑いたくなるような眉唾モノの方法から、産婦人科医が提唱している“科学的な”方法までゴロゴロ転がっています。

なかでも、日本国内でよく知られている産み分け法は、大きく分けると2つ。一番知られているのが、「女の子が生まれるX精子は酸性に強くアルカリ性に弱い」「男の子が生まれるY精子は酸性に弱くアルカリ性に強い」という性質を利用して、膣内のpH(ペーハー)をコントロールする方法。

2つ目は、X精子の寿命が3、4日、Y精子の寿命が1日程度なので、息子がほしい場合は排卵日に、娘がほしい場合には排卵日から少しずらして受精するようにセックスをするタイミング法です。

一方、世界に目を向けるとちょっとばかり事情が変わってきます。

アメリカ・カリフォルニア州では、人口の男女比率を1:1にするためにフローサイトメトリー(遠心分離)という、より科学的な方法を採っています。精子をX精子とY精子に分類することで、男女の産み分けを実現しているんです。ただし、「第一子は自然出産であること」「第一子に障がいがないこと」などの条件をクリアした母親のみ利用できるとのこと。

子どもの性別は妊娠中の母親を見ればわかる

おばあちゃん世代が「うちのヨメは男の子を産みそうな顔してる」などと言ったりするのを聞いたことはありませんか? 実はこれ、迷信ではなくて立派に科学的根拠がある話。

これには、本連載ではすっかりおなじみのテストステロン(男性ホルモン)とエストロゲン(女性ホルモン)が関連しています。男の子を身ごもると胎児にテストステロンをとられるので、お肌がツヤツヤになったり顔つきも優しくなったりするんですね。

逆に、女の子を身ごもるとエストロゲンをとられるので、毛が増えたり肌荒れしたりと「男らしく」なってしまうんです。私には娘がいるのですが、実際、妊娠中はおなかに毛が生えてましたね(笑)

妻の妊娠中に不倫する夫が多いワケ

「男の子を妊娠すると女らしくなり、女の子を妊娠すると男らしくなる」ことを考えると、“イクメン議員”のように、妻の妊娠中に不倫する夫が少なくないという事実もある程度は説明できるんです。

「“相性のいい男”はTシャツの匂いでわかる」で話した通り、遺伝子的に相性のいい異性を選ぶのは女性だけに与えられた特権。とはいえ、免疫や遺伝子の強さうんぬんを差し引いた「オンナとしての魅力」を感じ取ることは男にもできるんです(感度はだいぶ落ちますが)。なので、男女どちらを身ごもるかによって母親のホルモンバランスが変わるので、夫からすれば「なんか、前と違う」とメスとしての魅力に違和感を覚えてしまうのかもしれません。特に女の子を妊娠して妻がどことなく男性化すると、あまり魅力を感じなくなる可能性はありますね。

染色体は自分の生まれを知っている

「生まれてくる子どもの性別を産み分ける」という話をもう少し掘り下げていくと、ゲノム・インプリンティング(遺伝的刷り込み)という面白い話が出てきます。遺伝子には「父親由来の遺伝子」と「母親由来の遺伝子」があり、染色体自身は、どちらの親から来たものか把握しているというのです。

そして、どちらか一方から受け継いだ遺伝子がなければ、きちんと働かない機能が存在します。胎盤は哺乳類に特有のものですが、たとえば、父由来のある遺伝子を備えていないとうまく形成されないことが研究で明らかにされているのです。

児童虐待も遺伝子のしわざ!?

また、児童虐待・ネグレクトがニュースとして取り上げられるたびに「加害者の母親がろくでもないからだ」「動物ですら身命を賭して子を守ったりするのに、人間の母親がなんてザマだ」と母親を人格攻撃する風潮があります。どこまでいっても母親の「性格の問題」と決めつけられてしまうわけですね。

しかし、実は女性が「わが子を愛せるかどうか」も胎盤と同じく父親由来の遺伝子で決まっていることが最近判明しました。つまり、父親由来のある遺伝子に欠損があると、その娘が子どもを産んだ時に保育行動を拒絶してしまうんです。動物園のパンダなど、ヒト以外の哺乳類でもわが子の世話をしなかったり、虐待したりするという話はニュースになりますが、もしかしたら、この遺伝子が関係しているのかもしれません。

(小泉ちはる)