大野智は現代のチャップリンになれる!小池栄子も「天才」と絶賛する才能
【春ドラマを勝手に表彰! 主演男優賞編】

 2016 年春ドラマが幕を閉じた。月曜から日曜まで捨て日がなく、総じて「おもしろかった〜!」というのが印象だ。おなじみの医療、刑事モノのムダ量産がなかったぶん、弁護士をテーマにした2作が目立っていた。

 各々に異なる魅力で見ごたえがあったが、まずテレ朝『グッドパートナー〜無敵の弁護士〜』(平均視聴率10.7%)は扱う案件が庶民的で親近感あり。それに比べてTBS系『99.9-刑事専門弁護士-』(平均視聴率16.9%)の案件はストーリー性のある壮大なものだけど、それを包み込むような謎かけの演出と視聴者を笑わせる小ネタが見どころだった。

 と雑感を述べたところで、今回はライターという職業を超えてテレビウォッチャー化しているスナイパー小林が、名ドラマ戦線の中、各部門の受賞者を選出。まずは各主演賞からどうぞ(受賞者には特に何の賞品も用意されていません)。

◆大野智の名演技に見えた喜劇俳優の片りん

主演男優賞:大野智(日本テレビ『世界一難しい恋』)

 久しぶりにリアタイ(放送時間に番組を視聴すること。リアルタイム視聴の造語)をしたくなるドラマに心が揺さぶられた。恋愛に超不器用なホテルを経営する若社長・鮫島零治(大野智)が、社員の柴山美咲(波留)に恋をしてしまうというラブコメディ。

 ただ好きな人と話がしたいがために、ネタとして子犬を連れて彼女がいる付近をフラフラ徘徊。彼女とキスをするために自宅で入念な単独リハーサル。バレバレの偶然を装いながら彼女を待ち伏せ。そしてやっとの思いでたどり着く、つたないハグに可愛いファーストキス……。愛する人のために小学生並みのパフォーマンスで男性がぶつかっていく様子に見惚れた。

◆大野智は現代のチャップリンになれる

 このドラマは大野智の演技力が全てを牽引していた。共演の小池栄子が制作記者会見で彼を「天才だ」と絶賛していたのも納得で、ドラマ内でキレるところや、ふっと気の抜けた表情、シーンに合わせた声のトーンなど絶妙なのだ。

 どこか朴訥としていて、地味な印象の大野くん。でもスイッチが入ると途端にステージでは艶やかに踊り、伸び伸びとしたヴォーカルを聴かせ、ドラマでも影のある弁護士役から、歌のお兄さん、妖怪などクセのある役をサラリと演じる。溢れんばかりの才能を持ちながら、デビュー10周年で「嵐をやめようと思っていた」とポツリ。

 人は地位と才能が欲しくて右往左往する生き物なのに、彼は今の国民的スターの立ち位置が惜しくないんだと思うとそれもかっこいいな、と思ってしまう。こういうタイプが一番モテるけど落としにくいのよね……。

 そんな天性の魅力を持つ彼に、このドラマで喜劇俳優でもあった植木等の影が見えた。いやひょっとしたらチャップリンみたいになれるのではという妄想さえ働かせてしまう。

 医療、刑事モノが全盛のドラマ氾濫期に、ラブコメディ一本で楽しませてくれる俳優はなかなかいない。期待をこめて『世界一難しい恋』の続編として『世界一難しい結婚』を希望したい。

※次回は主演女優賞を発表。

<TEXT/スナイパー小林>
【スナイパー小林 プロフィール】
ドラマ解説、芸能、恋愛、カルチャー、美容・健康ネタ好きのライターであり、編集者であり。執筆や編集を手がけた媒体は100冊以上。約20年以上ドラマをこよなく愛し、ついには趣味が仕事になった幸せ者のアラフォー。Twitter:@hisano_k