オリンピック最終予選(OQT)から、まだ2週間も経たないうちに、ワールドリーグ2016が6月17日から19日にかけて大阪中央体育館で始まった。この大会は、参加36カ国を3つのグループに分けて転戦し、グループ内の国々と試合をして順位を決める。賞金大会なので本気で優勝を狙っていくチームもあれば、若手の育成にあてるチームもある。五輪出場権を逃した全日本男子にとっては、もちろん若手の育成が目的となる大会だ。2020年東京オリンピックに向けて、リオ五輪出場チームに先駆けて一足早くスタートを切ったと言える。

 ただ、メンバーはOQTに出場した選手とあまり変わらなかった。南部正司監督によると、FIVB(国際バレーボール連盟)の規定で、直近の大会から10名を残すことが決まっているという。OQTは14名で戦ったので、4名しか変更ができないことになる。南部監督は、ベテランの富松崇彰、酒井大祐、福澤達哉をはずし、星野秀知(25)、高橋健太郎(21)、小野寺太志(20)、渡辺俊介(28)を入れた。

 試合はフィンランドにストレート勝ち、キューバにフルセット負け、韓国にストレート勝ちの2勝1敗に終わった。最初の2試合は高橋をスタートで攻撃専門のオポジットとして使ったが、いずれも相手にリードを許す展開となり、清水邦広を投入して挽回せざるを得なかった。3試合目、高橋の出場はワンポイントブロックのみ。肩の調子が悪く、打数を増やせないということで清水がフルで出場した。

 次世代オポジットとして期待されている高橋のスパイクは、それほど悪くはなかったが、やや球威に欠けて軽かった。また、20点以降の勝負どころで立て続けにシャットアウトを食らったりもした。まだまだ、多くの経験を積む必要があると感じた。

「ただ、自分の力不足です。もっと練習します」(高橋)

 一方、清水は今大会について、以下のように話した。

「今は東京は考えていない。他のメンバーはともかく、今の自分は東京ではなく、今年度の全日本男子(の活動)がまだあるので、期待をしてくださった方々に少しでも恩返しできるように、何かを得られるような試合をしたい。その後のことは終わった後に考えます」
 
 オポジットは国内Vリーグで、清水に代わる選手はいない。不調に陥った清水を下げられなかったことはOQTの敗因のひとつでもある。それだけに南部監督が身長2mで、体格もよく、動ける高橋に期待するのもわかるが、少しケガが多すぎるのが気になる。

 セッターはOQTと変わらず、深津英臣(26)と関田誠大(22)。2人ともOQTとは違って余裕を持ったトス回しをしていた。ただし、深津180cmと関田177cmを併用するのは疑問が残る。海外チームの中では平均身長の低い韓国チームでも、関田の上からどんどんスパイクを打ち込んできた。しかも、2人とも同じパナソニックに所属し、リーグでも2人同時にメインになることはあり得ない。どちらかひとりは東京五輪まで残すとしても、もうひとりは身長の高いセッターを入れるべきだろう。

 南部監督も自分の今後に関わるために(※)、慎重な言い回しだったが、「セッターに関しては、この2人だけを軸にするというわけではなく、他にも優秀な選手を呼んで試していきたい」とのこと。今回は4人以下の制限の枠内でOQTと入れ替えるのは、他のポジションを優先したということだろう。
※次期監督は、続投も含めて11月をめどに検討委員会で決められる予定

 ミドルブロッカーは最も若返りを図ったポジションと言えるかもしれない。出耒田敬(24・199cm)、山内晶大(22・204cm)、傳田亮太(24・191cm)、小野寺太志(20・202cm)と長身選手もできるだけ揃え、経験を積ませている。このポジションは海外では2m超えが当たり前なので、日本もできるだけそのクラスの選手を育成したい。

 レフトとリベロは米山裕太(31)と永野健(30)を固定して使っていた。南部監督は「いっせいに若手に切り替えるという方法もありますが、それで勝てない試合を延々と経験させても意味がない。ベテランも使って勝ちを取りながら若手の育成をしようと思います」という意図だったようだ。

 東京五輪での主軸となることが期待される石川祐希(20)は、チームに帯同はしていたものの練習も完全に別メニューで、ベンチ入りもせず、関係者席で見学していた。足のコンディションがよくなく、今後のアウェー戦には帯同せずに国内でトレーニングメニューをこなす。噂されている海外チームへの移籍については「まだ分かりません」とだけ短く答えた。

 柳田将洋(23)はフィンランド戦でサーブを3セットで22本打って3得点と、サーブという持ち前の武器を遺憾なく発揮した。柳田のサーブでブレイクし、試合をリードして勝ち切れたといえる。

「OQTで敗退したことは、もちろん大きなダメージはありました。だけど、少しおいてこの大会がすぐに始まるので、忘れるくらいのイメージで。実際はもちろん忘れることなんてできないんですけど、頭から消すつもりで臨みます。僕が代表に残り続けるために、ワールドリーグは東京へのアピールの場のスタートです。

 この3日間、僕自身は個人的にチームの中で成長しようと心がけていました。なので、意識的に周りに声かけをしたり、アドバイスをしたりということをしていました。(高橋)健太郎とかも入っていましたし、上の人にも、自分がよりよい攻撃をするためにどうしてほしいかを今までよりしっかり伝えるようにしました。今までも若手という意識はなかったのですが、チームに自分より年下の選手が増えたので、そういう役割も果たしていくべきだと思って実行しています。

 今はまだ東京五輪を具体的に視野に入れているわけではないですが、そう遠くないうちに照準になってくると思うので、安易な生活はしないように、充実させていきたいと思います」

 ワールドリーグはこのあとエジプト、中国で戦い、上位3チームに残ればファイナル4に勝ち進める。南部監督はまずこのファイナル4進出に狙いを定めている。ワールドリーグ大阪大会では、若手に負け癖をつけないという意味の他に、3階席まで満杯になったファンのためにも「勝つこと」が必要だった。結果は2勝1敗だったが、キューバ戦も本来なら3−1で勝てる試合展開だった。先に20点台に乗せても最後の2点を取りきれないところが、今の全日本男子のもろさを表しているかもしれない。

 リオへの道が閉ざされた今、言い換えるなら、どこよりも早く東京へのスタートを切ることができる。今度こそ、就任が遅れて施策が後手後手に回った前任のゲーリー・サトウ監督の轍を踏まないようにしてもらいたい。深津が言った「リオ五輪に出場できなかったという悔しさを財産にして、東京のために前を向いていきたい」という決意を無駄にしないために。

中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari