ベッキー、乙武洋匡、ファンキー加藤、6代目三遊亭圓楽と、最近、芸能人の不倫報道が相次いでいますね。

以前にもまして、不倫に対する風当たりがキツくなったように思える昨今。

一方で数年前には、既婚男性と性交渉を行った銀座のクラブのママが男性の妻から訴えられた裁判で、裁判官が“枕営業として性交渉を反復継続しても、夫婦間の婚姻共同生活の平和を害するものではない”といった趣旨の判断を下し、慰謝料が認められなかった判決が話題になりました。

以来、「水商売で本気じゃないなら不倫してもセーフなの?」といったコメントも、インターネット上やテレビ番組などでチラホラ見かけるように。

実際のところはどうなのか……、アディーレ法律事務所・パートナー弁護士の篠田恵里香さんにお話を伺いました。

■法律上“不倫”とされるのは、離婚原因とされている“不貞行為”

世の中には、配偶者がキャバクラやホストクラブに行くこと自体を“裏切り”と感じる夫婦もいれば、「キャバクラはOKでも同僚と2人でのランチは嫌」というケースや、逆に「肉体関係があっても遊びであればOK」など、男女問わず不倫の定義は人それぞれ。

では、法律上はどうなっているのでしょうか?

「法律上“不倫”と扱われるのは、法律上の離婚原因とされている“不貞行為”を指すのが一般的です。

“不貞行為”とは、裁判所の考え方に従えば、“配偶者以外の異性と肉体関係を持つこと”とされています。したがって、“2人でデートに出かけた”、“キスをした”という程度では、法律上の“不倫”には当たらないとされるわけです」

では、どこまで証拠があれば“不貞行為”が認定されるのでしょうか?

「性交渉を行っている動画や写真、“昨日の××よかったね”などと性交渉を直接認定できるメールのやりとりなどがあれば、証拠としてはかなり強いと言えます。また、異性の家やホテルなどに一緒に泊まったことを示す写真や領収書、カードの明細なども、ある程度“不貞行為”を推認させる証拠と言えるでしょう」

一方、「愛している」というメールのやり取りや、仲睦まじそうに一緒に歩いている写真などだけでは、証拠としては弱いそう。

「ただ、ひとつひとつでは弱い証拠でも多数積み重なることにより、“さすがに肉体関係があったはずだ”と裁判所に認めてもらえれば、“不貞行為があった”と判断されます」

ということなので、どんな証拠でも、コツコツ集めたほうがいいかもしれませんね。

“不貞行為”が認定されれば、基本的には“夫婦の円満な共同生活を侵害するもの”として不法行為(民法709条)となり、“不貞行為”を行った2人には、慰謝料の支払い義務が発生することに。

となると、どう考えても肉体関係のある枕営業は十分“不貞行為”に思えますが、なぜ許されたのでしょうか?

■銀座のクラブのママが不貞行為とされなかった理由

有名な“枕営業判決”は、東京地裁の平成24年4月14日の判決です。これは厳密には、“枕営業は不貞行為に当たらない”としたものではなく、“不貞行為があったとしてもこれが枕営業である以上、不法行為に当たらない。したがって慰謝料の支払い義務もない”と判断したものだそう。

「裁判官がそう判断したのは、“枕営業として性交渉を反復継続しても、売春婦と同様に顧客の性欲処理に商売として応じたにすぎず、夫婦間の婚姻共同生活の平和を害するものではない”という理由から。

要は、枕営業で妻が不快感や精神的苦痛を受けたとしても、夫婦関係を破たんさせるような行為とは言えない=不法行為とまでは言えない、というわけです。納得する方は少ないように思われますが……」

なるほど。奥さんはもちろん、売春婦呼ばわりされた銀座のママにとっても屈辱的な判決のように思えますね。

■“水商売であれば全て不倫OK”ではない

しかし、不倫相手の立場だと、この判決は「私は水商売の仕事でお付き合いしていただけで恋愛感情は無い」と言い切ってしまえば逃げ切れそうな都合の良さを感じますが、そういうわけではないのでしょうか?

「この判決は、“水商売であれば全て不倫OK”としたわけではなく、“その不貞行為が枕営業であれば不法行為に当たらない”としたわけです。例えば、“夜のお仕事の女性が恋愛感情を持って、妻のいる男性と不倫関係に陥った場合まで許される”と判断したわけではありません」

確かに、水商売をしている女性側がいくら「恋愛感情はない、仕事だ」と主張しても、メールなどで恋愛感情を匂わせる証拠が出てしまえば通用しなさそうですね。

■高等裁判所の審理を経れば判断が覆った可能性も

この判決については、同様の事例判決がなかったため、世間的には大きな話題を呼びました。

「しかしながら、この判決はあくまで第1審の地裁判決であることを忘れてはいけません」と篠田先生。

要は、一裁判官の判断にすぎず、これが先例となる訳ではないということです。この事件が仮に控訴され、高等裁判所の審理を経れば判断が覆る可能性も少なくなかったというのが、篠田先生の見解です。

「なぜなら、過去の最高裁判例によれば、“既婚者と肉体関係を持った第三者は、既婚者であることを知っていたか又は知りえたような場合には、本人が誘惑したか、お互いの愛情によってそうなったかどうかに関わらず、相手の妻(又は夫)の権利を侵害しているため違法であり、苦痛を慰謝すべき義務がある”と示しているからです。

当然、この最高裁判例は先例としての意味を持ちます。そして、その後も、“不貞行為により、夫婦関係が破たんされなかったとしてもそれは慰謝料を減額する事情に過ぎず、慰謝料自体は認める”という運用がなされてきました」

つまり、妻側が判決を不服として上訴していれば、慰謝料が発生した可能性も高いということですね。

■弁護士の間でも“驚愕した判決”、同様の判決が出る可能性は低い

この判決については、弁護士の間でも“驚愕した判決”、“疑問を抱かざるを得ない”といった声が多く聞かれるそうです。もし今後同様の裁判が起きても、同じような判決が下される可能性は低そうですね。

「裁判官も人である以上、“枕営業”に対する理解にも違いがあると思います。ですが、少なくとも、訴訟を提起するまでに傷ついていた奥さんの気持ちを考えれば、慰謝料を認定してほしかった事案だと思われます」

慰謝料をもらいたいほど奥さんを傷つけたのは、クラブのママだけではありません。“共犯”とも言える旦那様にも、これからは奥さんの気持ちを考えて行動してほしいと願うばかりですね。篠田先生、ありがとうございました!

“枕営業判決”だとしても、不倫相手は売春婦呼ばわりされ、夫は裁判でさらし者にされ、当然妻は傷ついて……と、三者三様に精神的苦痛は大きそう。

芸能界に限らず、やはり不倫には大きなリスクが伴うと考えた方が良さそうですね。