先代モデルとなったポルシェ・ケイマンS、無事にドライバーズシートの権利を獲得し、いよいよ試乗です。

カエルに例えられる顔つきや滑らかな曲線のボディラインなど、車体を構成するすべての要素に只ならぬ雰囲気が感じられ、思わずニヤニヤ。

納車手続きの予行演習っぽく、必要書類を記入し、キーを受領。「911」のボディを象ったキーもお洒落で所有欲をくすぐります。

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低めの着座位置や素早く6速MTを操るために底上げされたセンターコンソールなど、ギュッとタイトなコックピットに収まると、自然と身が引き締まります。

ソワソワとした高揚感を抑えるために、目をつぶり、大きく息を吸い、静かに吐き出す。レザーが醸す香りや外の喧騒を感じさせない静謐など、カチリ…カチリ…と徐々に自分と「ケイマン」がシンクロしていく感覚が心地よいです。

キーを挿してひねると、座席直後に搭載された3.4L水平対向6気筒自然吸気エンジン(325ps/370Nm)が、猛々しいサウンドを耳に、エンジンのピストン運動が刻む振動をシート越しに身体へ届けてきます。

ボディが強固な上にシートが肉厚なため不快感はなく、ドライバーはエンジンの確かな存在感を堪能できます。底知れない実力を漂わせるエンジンと自らの手中にあると感じる一体感に、ワタクシは勝利を確信しました。

しかし、誤算が。クラッチペダルが重すぎるほど重いのです。「フンッ!!」と気合いを込めるほど押し返そうとする力が強く、信号が多い都内では10分足らずで足はプルプル。

「せっかくのポルシェだからMT!」と意気込んでいたのですが、余計な手間を掛けずに完璧かつスピーディに変速をこなしてくれる7速PDKにしておけば……。

さらにいいますと、街中での乗り心地は決して穏やかではありません。

タイヤ(ピレリ P ZERO)が、フロントは235/35ZR20、リヤは265/35ZR20と横幅が広くそして薄い上に、車高が低いため、タイヤが接地する路面の凹凸がもたらすショックを和らげる余裕が少なく、路面の粗さで乗り心地は大きく左右されます。

しかし、ポルシェのスゴイ所は、そういった外乱を受けた際にボディとステアリングがビクともしないことです。

街中でも高速道路でも、強めのショックを後々まで残さない。たとえ路面が酷くてもステアリングは1mmの動きさえ見逃さずにたちまちクルマの向きを変えるため、第一声に「しっかりしている」という感想を挙げたくなるのも頷けます。

搭載する水平対向6気筒自然吸気エンジンは、アクセルを緩やかに踏み込めば、それに呼応するようにモリモリとパワーとサウンドは高まり、1370kgの車体を突き抜けるように加速させていきます。

370Nmの最大トルクは4500〜5800rpmと高めの回転域で発生させますが、かといって低回転域で加速が弱い心配は無用。

新型「ケイマン」の2.0L水平対向4気筒ターボは380Nmを1950〜4500rpmで、2.5L水平対向4気筒ターボの「ケイマンS」は420Nmを1900〜4500rpmで発揮させると聞くと、その走りへの期待は高まるばかりです。

ただし、あと一歩踏み込んで欲しいのが安全装備です。

自動ブレーキはなく、後ろ側方の死角に入り込んだクルマの存在を警告する機能もありません。この点については競合モデルに劣っていると言わざるを得ません。

それに真っ赤なインテリアはフロントウィンドウへの反射が強く、トンネルの出口などの明暗が切り替わる場面では危ないなとも感じました。

多少の欠点はあるものの、それらを上回る美点には抗えないです。

街中では人目を引くデザインとブランドが、一歩離れた郊外では人目に触れない代わりに爽快な走りがオーナーを満たしてくれるのですから。

今回試乗した「ケイマンS」の自動車税は5万8000円と決して安くなく、その他の維持費は想像もつきません。

でも、どうせ払うなら気持良く払えるクルマが欲しくなりませんか? それはスポーツカーでも、ミニバンでも、軽自動車でも変わらないはず。そして「ケイマン」は間違いなくその1台であると断言できます。

(今 総一郎)

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【ゆとり世代のチョイ乗り報告】最後の6気筒!?「ポルシェ・ケイマンS」を試す(前篇)
http://clicccar.com/2016/06/19/379143

【ゆとり世代のチョイ乗り報告】最後の6気筒!?「ポルシェ・ケイマンS」を試す(後篇)(http://clicccar.com/2016/06/21/379712/)