今やビジネスの主軸となっているメールのやりとり。働く堅実女子のみなさんも、電話での応対よりもメールを打っている時間のほうが長い、という人が多いのではないでしょうか。

メールは手紙と同じ扱い。送るときには最敬語を使い、くれぐれも失礼のないように注意を払うべきというビジネスマナーは廃れ、今はいかに効率よく、時間と手間をかけないで送るかということが求められています。

金融関連会社に勤める田辺恵子さん(仮名 34 歳)から、こんな質問が届きました。「ひとつの案件について、メールで質問や確認などを何度もやりとりをすることがあります。相手の肩書きや名前を打つのも、文頭にお世話になっております、○○です、と打つのも毎回となるとけっこうな手間。これって省いたら失礼なんでしょうか」。鈴木真理子先生にビジネスマナーの視点から正解を教えていただきます。

相手の社名や肩書きは初回から書かなくてもOK

質問者の田辺さんは、ひとつの案件について、つまり同じ件名の中でのやりとりについて、本文の宛名に相手の社名や肩書きを毎回打たなければいけないのか、とのことですが、実は、一本目のメールから書かなくてもいいんですよ。

相手の社名や肩書きを間違えないようにと過去のメールを掘って検索するのはけっこうな手間ですし、時間をかけて探したところで、数か月以上前の情報の場合、部署や役職が変わっている場合も大いにあります。

余計なことに時間をかける必要はありません。社名や肩書きが書いてないからといって、受け取った人は失礼だなんて思わないから大丈夫。実際のところ、各社から私へ届くメールも「鈴木様」だけのことが多いですよ。ミスを防ぐうえでも「○○様」だけだとメリットがあると思います。

ちなみにある企業では、最初のうちだけ、署名欄に以下のような追記がありました。

情報漏洩の防止のため貴社名の記載等を省略しております。
失礼とは存じますが、なにとぞご容赦くださいませ。

つまりメールを誤送信したとき、相手の会社名とフルネームが書かれていなければ個人を特定できない、情報漏えいしないということです。毎回書かなくても自動的に挿入される署名欄に同様の記載をしておけば、マナー知らずと思われる心配もありませんね。

複数回のやりとりメールに「お疲れ様です」は不要

そして、冒頭のあいさつ文について。何度もやりとりが続くメールには不要です。打ち込むほうも時間をとられますが、受け取るほうも、目を通す時間を取られているのです。同じ件名でやりとりされる複数回のメールの中では「お疲れ様です。○○(自分の名前)です」にはもはや何の意味もありません。ただ打つ、ただ目を通す、だけの時間は、ビジネスにとってもっとも無駄な時間です。省略してしまいましょう。

長引くメールのやり取りをエレガントに終えるコツ

また、複数回メールのやりとりが続く場合、どう締めていいのかわからなくなってしまうことがあります。
たとえば、打ち合わせ日を決めるメールの場合。「承りました」と返したら「よろしくお願いいたします。当日会えるのを楽しみにしています」と返事が来て、こちらも「こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。梅雨のさなかですが、ご自愛くださいませ」と書く雰囲気になっていて、それを送るとまた相手から……というエンドレス状態に陥ってしまうような。こういう、無駄時間を省くのにとっておきの言葉があります。それが、「返信のお気遣いなさいませんよう」という一文。つまりは、「返事はいらない」ということですが、これを文末に添えれば、エレガントにメールのやりとりを終えることができますよ。

仕事の効率化に目を向けると、ビジネスマナーの正解が見えてくる、かモ〜。



■賢人のまとめ
メールの送り主の社名、肩書きは書かなくてもマナー違反にはなりません。むしろ、打ち間違えや、過去の肩書きを書いてしまったほうが失礼。「社名や肩書きを書かないスタイル」を浸透させてしまえば、ひと手間削減。仕事の効率もあがります。

■プロフィール

女子マナーの賢人 鈴木真理子

三井海上(現・三井住友海上)退職後、“伝える”“話す”“書く”能力を磨き、ビジネスコミュニケーションのインストラクターとして独立。セミナー、企業研修などで3万人以上に指導を行う。著書は『ズルいほど幸せな女になる40のワザ』(宝島社)のほか、近著『もう必要以上に仕事しない!時短シンプル仕事術』(明日香出版社)、『絶対にミスをしない人の仕事のワザ』は7万部に迫るヒットとなる。 

(株)ヴィタミンMサイトhttp://www.vitaminm.jp/