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今回のテーマは「ランサムウェア」である。

お題のリストにはこれより先に「オープンソース」というのがあったのだが、Wikipediaの解説ページをみただけで嘔吐したので、ソースの代わりに担当のドタマをオープンしてから次のお題に行くことにした。

ランサムウェア、IT特集の第4回に続き、またしても「ウェア系」だ。もう「ウェエエーア!」と雄叫びを上げながら、気の合う仲間の幻覚とキャンピングカーで海にでも行きたい気持ちでいっぱいだ。しかし、こいつが前に触れた「マルウェア」の仲間だとしたら、再びマヌルネコ神の話をするビッグチャンスの到来である。

だが前回、ついに「全く関係ない話は半分までにしろ」という通達がきた。そうは言うが、ランサムウェアとマヌルネコだったら、ランサムウェアの方が絶対に私の人生には関係ない。だから、要請を完全に無視して以下延々とマヌルおキャット様の話をしても良いのだが、そういった私の抵抗(聖戦)に対して、担当は「普通に関係ない文章を削る」というジェノサイド(虐殺)をしてくるので、今回そういうことをされると本稿3行ぐらいになってしまう。

○ランサムウェアに対抗するための「自信」

それに、マルウェアだって悪い言葉じゃないと前のコラムの時にわかった。何せ訳すと「悪意のあるソフトウェア」だ、相当カッコいい。ランサムウェアがそいつの仲間だと言うなら、「漆黒の闇より現れし災厄ソフトウェア」くらいの意味はあるだろう。

実際、ランサムウェアとはマルウェアの一種であり、「ランサム」とは「身代金」という意味である。「漆黒の闇より現れし災厄」どころの話ではない。そんなフワッとしたものではなく、もっと直接的に凶悪であった。

そして文字通り、ランサムウェアは感染者に身代金を要求する。この場合人質になるのは、パソコンのデータなどである。つまり、ランサムウェアは感染者のデータを暗号化して使用できなくし、「暗号化を解いてほしければ金を出せ」と言ってくるわけだ。本当に悪意しかなくて面白い。マルウェアを作る者の目的は様々で、最近は金儲け目当ての物が多いようだが、ランサムウェアには金以外目的がない。「金目当ての悪意」、最高である。

ネット上にはそういった「金目当ての悪意」が多数存在し、だから今日も「件名:2000万円当選」みたいなスパムメールがどこからともなく届いたりする。私からすると二兆円以外ははした金なので見向きもしないのだが、実際にランサムウェアでデータを人質に取られてしまったら、やはり金を払ってしまうような気がする。

もし完成間近かつ締め切り間際の原稿データを人質に取られたら、私だけでなく多くの作家が身代金を払ってしまうのではないかと思う。逆に、締め切りは目前だが全く手を付けていないデータを人質にされたら、「ランサムウェアにやられた」という大義名分の元、休載するだろう。

中には、「自分のパソコンにはゴミしか入ってないので、人質に取られて困るようなデータはない」という方もいるかもしれないが、ランサムウェアの手口はそれだけではない。ロックスクリーンと呼ばれる、文字通り画面をロックして、金を払うまでパソコンを使えなくしてしまうものもあるのだ。

「自分のパソコンにはクソしか入ってないし、ロックされたらそのままデカすぎる文鎮にでもする」という方もいるかもしれないが(逆にそういう方は何故パソコンを買ったのだろう)、このランサムウェアの巧みなところは、画面のロックやデータの暗号化に加えて、「貴様のPCに児童ポルノや動物性愛画像のデータを発見したので罰金を払え」という、警察を偽った警告文を出してくるものまであるのだ。これは巧みである。

おそらくネットをやる95%ぐらいの人が何らかのエロ、もしくはアンダーグラウンド的な物をネットで見たことがあると思う。残りの5%は、キャベツ畑から生まれたこのコラムの読者だ。

よって、そういうことを言われると、ほぼ確実に何かしら心当たりがあるものだ。児童ポルノを所持した覚えはなくても、「このまえオバサンが体操服を着ているポルノを見たが、あれが本当は小学生だったとか…?」と勘ぐって、冷静さを失い入金してしまったりするのだ。

児童ポルノは犯罪であるから、それで捕まりでもすれば法的にも社会的にも死は免れないが、たとえ法に触れていなくても、やはり人間は性的なことで脅されると弱いのである。

この悪意に対し我々がどう対抗していったらよいかと言うと、まず感染しないようにウィルス対策ソフトをきちんと入れること。そして、児童ポルノはもちろんだが、違法そうなものにはアクセスしないようにすることだろう。

さらに言えば、エロやアングラも一切見なければ脅されてもビクともしないと思うが、ネットにつながっているパソコンを持ちながらエロを見ず、仕事のみに使うというのは、歯ブラシで歯を磨かず、ずっと風呂のタイルの黒ずみをこすっているに等しい。使い方として間違っているとは言えないが、正規の使い方ではない。

だったらもう「ネットでエロを見ている自分」に自信を持つしかない。脅されたからといってビビった挙げ句即入金してしまうのは、自分が悪いことをしているという意識があるからに他ならない。自信さえあれば、「確かに自分は先日、熟女二人が半裸で泥レスをしている動画を小1時間ほど見たが、あれが法に触れているとは考えにくい。つまり、これはランサムウェアというやつでは?」と、冷静な判断ができるはずだ。

<作者プロフィール>
カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年〜)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より2016年7月16日に発売予定。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2016年6月28日(火)掲載予定です。

(カレー沢薫)