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先週はJR東日本で国鉄色485系ラストラン、東武鉄道で台鉄自強号デザインの特急「りょうもう」が運行開始、西武鉄道・東京メトロ・東急電鉄・横浜高速鉄道を直通する座席指定制直通列車などのニュースが話題となった。国鉄色485系に続き、湘南モノレール500形、阪急電鉄3100系、札幌市交通局7000形など、旧型車両の引退の話題も目立つ。これらの話題は本紙各記事に詳報がある。

一方、新聞報道を追っていくと、ローカル線存続問題で福島県内の只見線不通区間に動きがあった。いままでバス転換を推していたJR東日本が上下分離による鉄道復旧を提案するなど、大きな転換点を迎えたようだ。また、島根県と広島県を結ぶ三江線は、バス路線に転換した場合の運行費用が明らかになった。

只見線は福島県の会津若松駅と新潟県の小出駅を結ぶ135.2kmの路線だ。会津若松駅で磐越西線、小出駅で上越線に接続する。このうち、会津川口〜只見間27.6kmが2011年7月30日から不通となったままだ。「平成23年7月新潟・福島豪雨」によって、鉄橋が流出するなど被災した。原因のひとつはダムからの大量放水だ。ひどい話だけど、放水しなければダムは決壊し、もっと大きな被害になったかもしれない。

当初、JR東日本が見積もった路線復旧費用は約85億円。しかし、東日本大震災の復旧工事や五輪関連の建設需要の高まりによって資財や人件費が高騰し、復旧に関する総費用は増えているとの見方もある。この区間の年間運賃収入は約500万円で、営業経費は約2億8,000万円。復旧しても、毎年2億7,500万円の赤字だ。バスに転換した場合の赤字額は約5,300万円で済む。そのため、JR東日本は鉄道復旧ではなく、バスに転換したい考えだ。

只見線沿線自治体と福島県は、JR東日本に対して復旧と存続を求めている。JR東日本は民間企業であり、東証一部上場企業だ。復旧しても赤字になる路線(事業)に多額の費用を出しにくい。沿線自治体の負担にしては重い。国の支援を求めたいところだ。ただし、現行法では、企業全体として黒字のJR東日本に対して国は援助できない。これは東日本大震災において、三陸鉄道の路線とJR東日本の路線の運命の分かれ道でもあった。

約5年にわたる協議の中では、沿線自治体が復旧後の赤字を負担するという案もあった。しかし、肝心の復旧費用についてはめどが立っていない。一方、JR東日本は運行費用が少ないバス転換案を示唆していた。バス転換は鉄道復旧を望む自治体としては不本意な提案であり、これ以上の進展はなかった。

地元紙、福島民報の報道によると、6月18日に開催された「第3回只見線復興推進会議検討会」において、JR東日本はこれまでのバス転換だけではなく、鉄道復旧案を示したという。その内容は「上下分離方式」だ。会津川口〜只見間の線路施設と土地を沿線自治体に無償で譲渡し、JR東日本は列車の運行のみを実施する。この区間の赤字の大部分は線路設備の管理費と除雪費だったから、それを自治体に負担してほしいという意味だ。

上下分離しても、列車運行だけを担うJR東日本が黒字になるわけではない。運行経費分の赤字、約7,000万円を負担し続けなくてはいけない。これはバス転換した場合の赤字額より1,700万円ほど増える。それでも、総額で約2億8,000万円の赤字を、鉄道のまま約7,000万円に圧縮できたなら良し、という考えかもしれない、肝心の復旧費用についても、JR東日本、福島県、沿線7市町村と分担したい考えだ。

この上下分離案は妙案だ。地元自治体が「線路施設会社」を設立すれば赤字は必至。しかし、黒字のJR東日本の管理下から外れるため、国の支援を受けやすくなる。問題は、国の支援が満額ではないことだ。自治体負担分だけでも大きな支出である。自治体がそれを了承できるか。これが鉄道復旧の判断の分かれ目になる。

今回の第3回只見線復興推進会議検討会では、沿線自治体側がJR東日本からバトン(提案)を渡された形になった。今後は復旧費用や上下分離化した場合の負担割合を検討し、約1カ月後の次回検討会までにまとめるとのこと。JR東日本の提案を受け入れたら、鉄道の復旧へ向けて前進。費用負担のめどが立たなければ「バス転換やむなし」となるかもしれない。いずれにしても決着の時は近づいたようだ。

三江線は島根県の江津駅と広島県の三次駅を結ぶ108.1kmの路線だ。山陽と山陰を結ぶ陰陽連絡線として1926(大正15)年に着工した。しかし戦争などでたびたび工事が中断され、戦後の工事再開も優先順位が低く、建設が長引く間に自動車が普及したため、利用者は低迷した。約50年の後、1975(昭和50)年に全通しても、陰陽連絡の使命は果たせなかった。現在は落石が頻発するとして、原動機付き自転車並みの速度しか出せない区間も多い。

三江線はJR西日本の中で最も利用客が少ない路線で、それまでも利用推進運動やグループ客への運賃補助などが実施されていた。三江線の2013年度・2014年度の収支は、平均収入額約2,000万円、平均支出額約9億円とのこと。JR西日本は沿線自治体に対し、「2016年9月に国へ廃止届を提出、2017年9月廃止」の意向を伝えている。しかし沿線自治体からは鉄道存続の要望が強い。

JR西日本からの具体的な廃止届のスケジュール提案を受けて、島根・広島両県と沿線6市町、JR西日本による「三江線に関する検討会議」は、JR西日本の運行維持で沿線自治体が経費負担する案、上下分離案、第3セクター案、バス転換案などを検討している。鉄道存続案の場合、年間運行費用は約8億5,000万円の地元負担となる。また、第3セクター案の場合、車両基地の整備や車両購入費の初期費用として約30〜40億円かかる。

6月18日に開催された「三江線改良利用促進期成同盟会」の会議では、初めてバス転換の場合の運行費用試算結果が報告された。バスの年間運行費用は最大で1億9,000万円、初期費用のバス購入費、バス停留所整備などの費用は約8億2,000万円だ。どちらも鉄道存続よりずっと少ない。

この見積もりは鉄道時と同程度の運行頻度を想定しており、便利にするためにバスの運行頻度を1.6倍にすると、年間運行費用は最大約3億1,000万円、初期費用は約9億3,000万円という。それでも鉄道存続よりは安上がりだ。人口の少ない沿線市町村にとって、鉄道とバスの費用の差は大きい。前述のように、JR西日本が設定した廃止届提出予定が9月ならば、こちらもタイムリミットが迫っている。

(杉山淳一)