タックスヘイブン対策税制など国際税務を専門とする中谷栄一郎弁護士が、タックスヘイブン活用の実態について会見。「租税回避」と疑われるのが、稼ぐ場所と登記本社が異なるアマゾン、アップル、スターバックスなど多国籍企業であると強調した。

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2016年6月14日、タックスヘイブン(租税回避地)対策税制など国際税務を専門とする中谷栄一郎弁護士が、タックスヘイブン活用の実態について日本記者クラブで会見した。タックスヘイブンは、コスト減や節税を目的とした「適法」と、脱税や資金洗浄「違法」に分かれる、と指摘。その中間のグレーゾーンで、「租税回避」と疑われるのが、稼ぐ場所と登記本社が異なるアマゾン、アップル、スターバックスなど多国籍企業であると強調した。

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タックスヘイブンとは、金融・サービス業などの所得に対し、無税または低税率しか課していない国や地域のこと。タックスヘイブンで現地法人の設立・運営・管理をしていたパナマの法律事務所から漏えいした「パナマ文書」問題が世界を震撼させた。

中谷弁護士によると、タックスヘイブンで一応「正常」と考えられるのが、(1)日本の海運会社などが現地に子会社をつくり、パナマ船籍、リベリア船籍などの「便宜置籍船」、(2)証券化SPC(特別目的会社)、(3)シンガポールなど地の利のいい場所に設立する地域統括会社―など。いずれも雇用規制や課税が緩い地域で、コスト減や節税を目的としている。

「租税回避」と疑われるのが、稼ぐ場所と登記本社が異なり、租税回避と疑われる企業。アマゾン、アップル、スターバックスなど多国籍企業に多く、巨額の税金の大半を免れている。

明確に「違法」なのが脱税やマネーロンダリング(資金洗浄)の目的で活用されるタックスヘイブン。秘密が守られるとの理由で使われる。麻薬や犯罪組織にも悪用される。

タックスヘイブンが使われる理由としては、「税金が安い」「規制が緩い」「秘密が守られる」の3点。脱税か節税かはすれすれの判断となるという。

パナマ文書に日本、米国の企業や個人が少ないことについて、パナマ文書が漏えいしたパナマ法律事務所モサック・フォンセカは香港、中国、英国、スイスなどが顧客の大半であり、日米関係企業・個人の母数(顧客)が少ないためとの指摘がある。この点について中谷弁護士は「日米を主な営業対象としているのはケイマン諸島のタックスヘイブン会社が多い」と言明。同諸島の実態が解明されれば日米の企業が多く出てくるとの見方を示唆した。

タックスヘイブンに対しては、多国籍企業や富裕層の自国での課税逃れや、麻薬組織のマネーロンダリング(資金洗浄)に悪用されているとの批判があり、経済協力開発機構(OECD)は税率や法制度の透明性を基準にタックスヘイブンのブラックリストを策定し、是正を促している。

経済協力開発帰国(OECD)租税委員会議長を務める浅川雅嗣財務官によると、国際的な課税逃れ対策を強化するため、6月30日、7月1日の両日、京都で同委員会拡大会合が開かれ、各国の対策実施状況などを相互確認する。

同財務官はOECD租税委員会議長として「パナマ文書」で注目されるタックスヘイブン(租税回避地)問題について、多国籍企業による課税逃れや過度の節税を防ぐための新たな国際共通課税ルールを昨年10月にまとめた。同拡大会合参加国は現在、日米中韓など44カ国(G20 とOECD加盟国)だが、100カ国程度に拡大する見込みという。

浅川財務官は「来年にもブラックリストを作る」と表明、税逃れの国際ルールに非協力的な国・地域をリストアップする考えを示した。G20は非協力的な国・地域に制裁を検討することで合意しており、OECDでブラックリストの策定を急ぐ。

また日本について財務官は「税の不公平感を助長するようなことは放置できない。日本は着々と毎年税制改正をしてきたが、来年もかなり改正がある」と言明、日本としても、年末の2017年度税制改正で議論し、必要な税制改正を行う方針を明らかにした。(八牧浩行)