米海軍主催の環太平洋合同軍事演習「リムパック」に参加するため浙江省の軍港を出航した中国海軍艦隊が米グアム島付近の西太平洋海域で米海軍艦隊と合流、ハワイの真珠湾へ向かった。その間、米中艦隊は海上補給、海賊対策などの共同訓練を行なう。写真は中国海軍。

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2016年6月20日、米海軍主催の環太平洋合同軍事演習「リムパック2016」に参加するため浙江省舟山の軍港を出航した中国海軍艦隊5隻が米グアム島付近の西太平洋海域で米海軍艦隊と合流、ハワイの真珠湾へ向かった。その間、米中艦隊は隊形変化、通信、海上補給、緊急措置、主砲対海射撃、海賊対策、潜水艦支援などの共同訓練を行なう。

その後中国海軍艦隊はハワイにとどまり、6月30日から8月4日にかけてハワイ沖とカリフォルニア州周辺で実施されるリムパック2016に参加する。この合同演習には日本、中国、韓国、オーストラリア、カナダなど、主催する米国を含め計27カ国が参加する。中国は前回(2014年)に続く2回目の参加。今回初参加はドイツ、イタリア、ブラジル、デンマークの4カ国。艦船45隻、潜水艦5隻、航空機200機余りが投入され、動員数は2万5000人に上る見通しだ。中国はミサイル駆逐艦や護衛艦などの艦船5隻とヘリコプターなどを派遣する。

米中両国は南シナ海問題などで対立しているが、軍事・政治交流を推進している。米国はハワイ沖やカリフォルニア州南部で6月下旬に開催される海軍主催の環太平洋合同演習「リムパック」に中国人民解放軍を招待、中国人民解放軍の艦艇が出発した。

中国は南シナ海の岩礁を埋め立て軍事施設を設置、周辺国や米国などからの抗議にもかかわらず中国は南シナ海の島々が中国領であると主張、これらの活動を停止していない。米国は世界の成長センター、アジアを重視するリバランス政策を展開。米国はイージス駆逐艦を南シナ海に派遣、「航行の自由」作戦を展開したが、米国は尖閣諸島の帰属と同様、領土紛争には介入せず、国連海洋法条約上の航行の自由原則を確認しているにすぎない。

こうした中、毎年開催される米中戦略・経済対話が6月上旬にケリー国務長官、ルー財務長官ら米国の閣僚や政府・産業人が多くの閣僚や北京で開催された。今年の戦略対話では、昨年合意した温室ガス削減問題、米中投資協定、人民元の国際化など多くの分野のフォローのほか、民間部門による技術協力推進で一致。中国の鉄鋼の過剰生産や人民元制度、南シナ海の軍事拠点化問題なども議題となった。

米国との間には、日本にはこのような定期的な戦略的大規模対話はない。オバマ大統領と習近平主席の会談は年に数回、長時間開催されており、米中は互いの立場を暗黙裡に理解し合う「阿吽(あ・うん)」の関係にあるとの見方も多い。

米国にとって最大の課題は巨額の米政府債務と経常赤字の縮減であり、破綻を避けるためには、軍事費の削減と、世界最大の中国消費市場の取り込みが不可欠。中国は米国の最大の輸出相手国である。これに加えて、中国は米国債を1兆3200億ドル(約160兆円)も保有、外貨準備も3兆8000億ドル(約460兆円)と世界最大である。一方、中国も経済発展の途上にあり、大掛かりな軍事紛争になれば発展が阻害されるので、米国と本気でコトを構える気はない。

安全保障面ではリムパックのほか、米軍と人民解放軍の協力関係にあり、昨秋も上海近海で米中合同軍事演習が実施された。陸軍同士も非常時支援訓練などで米中が協力、空軍同士の交流もスタートしている。

南シナ海などで米中の緊張が高まっているからこそ、衝突を防ぐための危機管理体制づくりを急がなければならない、というのが両国の共通認識。米中両軍はすでに、ビデオ会議もできるホットラインで結ばれてはいるが、万が一の緊急事態になったとき、ホットラインで協議できるように、普段から良好な人間関係を築いておく必要があるという。

米中は厳しい対立があっても衝突せず、対話で解決する「共存」方針のもと、互いに利益を追求する世界を志向している。国内向けには対立姿勢を見せつつ、経済相互発展と武力不使用を改めて確認し合っているのが実情だ。(八牧浩行)