いつもと顔つきが違う深山(松本潤)。穏やかな斑目所長(岸部一徳)も、「この裁判は絶対に勝たなければならないんだ」と熱くなった「99.9-刑事専門弁護士-」10話。父親のえん罪によって人生が一変した深山が、20年以上の時を経て大友検事正と対峙した。


犯行を認めてしまった


「あの、僕やってません」
都内で起きた女性連続殺人の疑いで逮捕された石川陽一(KAT-TUN・中丸雄一)。死体が見つかった伊井山公園と巨千大橋からは、なぜか石川の血痕と毛髪が検出された。無罪を主張するも丸川検事(青木崇高)の取り調べで相当な圧力をかけられ、錯乱状態で犯行を認めてしまった。

「先生、身に覚えのないことで人はこんなに簡単に逮捕されてしまうものなんでしょうか」石川の父、啓太(平泉成)に問われると、深山は何も答えなかった。後に「法廷でも何がおこるかわからない」と言っていたから、無責任なことは言わない深山なりの気遣いか。

いつもより慎重に見えたのは


検証が習慣づいたチームプレーで、防犯カメラからアリバイは証明できたものの物的証拠については翻すほどの証拠や証言がない。
「事実をねじまげられることは十分にありえます」
「大事なのは事実なんです。このままだとひっくり返されますよ。何度も繰り返されてきたんだ……」
深山の読み通り、大友検事正の昇進もかかった検察は、犯行時刻の訴因変更のカードを切った。汚い手を使う検察に斑目所長が乗り込んだ。

居酒屋いとこんちの壁に貼られた『もう一押しこそ慎重になれ』の言葉どおり、いつもより慎重に見えたのは父親の事件と同じ構図だからか。
「法廷でも何がおこるかわからない」という深山の心境は硬い表情とチームを抜けた単独行動にあらわれていた。
週刊誌で見た静岡の殺人事件にヒントを得た深山は、「僕といるとおもしろい記事が書けるよ」と記者を口説いた。スクープ続きの文春砲を意識したかのよう。

佐田と立花も、石川の接見に挑んだ。
「どんな細かいことでもいいです、何か思い出されることありませんかね?」
深山流を取り入れた佐田先生。
「あああああ…人間ドッグで胃潰瘍がみつかりました」
「この三人の女性との接点を聞いてるんですよ!人間ドックどうでもいいんだよ!」
「まじっすか」
でた、中丸雄一。他局の番組ではこのセリフがするっと出ないのに……。
これが事件を解くカギとなったが、佐田の聞く力が足りず、深山が再度石川の接見へ。二度手間になったけれど、佐田先生ナイスパス。
石川の採血を担当した看護士の特徴“つぶらな目”を二人して再現。松潤の大きな目が極細になり、中丸もドラマ『変身インタビュアーの憂鬱』の白川次郎を発動した。珍しい共演が見られてラッキーだった。

「この裁判は絶対に勝たなければならないんだ」


9話で聞けなかった、深山を採用した理由のもう半分。企業法務専門だった事務所に刑事事件ルームを設けたのは、亡き親友とその息子のためでもあった。
一話でスカウトしたときに、「断ります」と即答したのにはじまり、検証のために突飛な行動に出ても静観していたのは、深山を見守る覚悟だったのか。

対照的に検察の組織が政治的な圧力で構成されているのが窮屈に映った。9話で大友検事正の過去を知った丸川検事も、佐田の前では「厳選公平、不偏不党の旨で職務にあたっています」としつつも揺らいでいた。言いかけては止める癖がある丸川は、組織に染まらず信念を持ったいい人だった。

「真実ってのはさ、100人いたら100通りあるもんだんだよね。でも起こった事実はっていうのは一つだけ」
「やってみなきゃわかんないでしょ」
終始一貫していた深山のポリシー。相手が上司だろうが検察だろうが、証拠が挙がっても貫いた。印象に左右されたり多くの意見に流されたりしなかった。依頼人や被害者に対して気の利いた言葉をかけることはしなかったけれど、事実を追求することで救った。

無罪か極刑か…いざ法廷へ


絶対にミスが許されない中、事件と自分の過去を重ねたら逃げ出したくなるような法廷の場でも深山は動じなかった。大友検事正が傍聴席に入ってきたのを見て、終わりかけた弁論を続けた。父の死を乗り越えて弁護士の道を選んだ深山へのリスペクト。自らの力で倒せといわんばかりに、花道を用意した斑目所長。

「石川さんの無罪が確定しても生活が元通りになるわけではありません」
他人事ではない被害者の生の声を伝える。下を向く丸川とバツの悪そうな大友検事正。深山を見て佐田先生がほくそ笑む。

「我々はそこに隠されているかもしれない本当の事実を見逃してはならないのです。どうか皆さん目で見て耳で聞いて、考え、自分の答えを探してください。起こった事実はたった一つです。弁護人からは以上です」

法廷帰り、無罪を勝ち取った深山とえん罪を生み出した大友が対面した。
“関係者以外立ち入り禁止”の看板が見える。
「なぜ笑ってるんですか」
切り出したのは深山。
「いやぁ、キミが随分得意げな顔をしていたからね、つい」
真犯人が捕まらなければ石川が検察に殺されていたかもしれないと、法廷とは違って言葉を選ばずにぶつけた。判決を下すのは裁判官であり、殺すことになると言われるのは心外と反論する大友。

「正義とか真実とかっていう、100人いたら100通りの考えがあるようなもの、僕は信じないですよ。ある日突然僕はあなた達に、父を奪われた。その日を境に全てが一変した。あんたはその歪んだ正義とやらで何人の人生を狂わせるんだよ」
「あなたがあなたの正義というものを貫くのであれば、僕は事実だけを信じて、あなたの前に立ち続けますよ」。
目を大きく開いた後に、遮断するように目を閉じて立ち去った。

法務省人事を掲載した新聞記事に、大友の文字はなかった。御剣怜侍、狩魔冥の人事異動(『逆転裁判』シリーズ)が発表され、ついでに「タコスク」(片桐仁の粘土作品)をみつけた。

当て書きをしたという深山の役柄は、料理好きで、「丁寧にやることは大事だねぇ」のセリフにみる完璧主義(嵐のメンバーが歌にしたほど)、オヤジギャグ対決で見せた負けず嫌いなところは松潤と重なっていたと思う。

当初、斑目所長から3千万の契約金でスカウトされたのに「いつまで続くかわからないし」と断った深山。はじめから素直に判を押しても良かったかも。
(柚月裕実)