クルマというのは、屋根を切り飛ばしてオープンカーとするだけで、少なく見積もっても2倍(?)は気持ちよくなる乗り物である。オープンカー経験がなくても、街中で見かけて純粋に「気持ちよさそうだな」と思う人は多いだろう。実際に乗ってみると、たぶん、その想像の3倍(!?)は気持ちいい。

 ただ、クルマは安くない買い物だ。実際に買うとなると、実用性だの家族の意見だの、あるいは世間体......と気をつかうポイントはテンコ盛り。「気持ちいいから」という理由だけでクルマ選びができる人は、ごくひと握り。というわけで、オープンカーは大量に売れるものではなく、巨大な自動車メーカーがモトを取れる商品にするのは非常にむずかしい。

 それでも、世の中の景気がよかったりすると、思い出したように、オープンカーがポンと出てくることはある。また、2000年代初頭に電動格納ハードトップが大流行したときには、手頃なコンパクトオープンが国内外で何種類か選べたりもした。

 そう考えると、現在のオープンカー業界は冬の時代といっていい。日本車のフルオープンカーは「実用性なんてどうでもいい!」と最初から割り切るしかない2人乗りスポーツカーのみで、「オープンカーといっても、家族で使えないと......」という人が買えるシロモノではない。ならばと輸入車を含めてみても、ギリギリ手頃な300万円台で入手できるフルオープンカーは、以前紹介したVWザ・ビートル・カブリオレ(第54回参照)と、今回のミニ・コンバーチブルの2台だけである。

 ミニ(やザ・ビートル)のオープンモデルのツボは、布製のソフトトップで、しかもフル電動であるところだ。耐候性や防犯面から電動格納ハードトップを好ましく思う人も多いかもしれないが、オープンカーというのは「しょせん遊びグルマ」というおおらかなオーラも大きな魅力。その意味では、オープンカーの王道は、やはりソフトトップである。また、総じてフロントウィンドウが小さくて開放感が高いのもソフトトップのツボだ。

 それにしても、先日フルチェンジしたばかりのミニ・コンバーチブルは本当によくできている。そのトップは本当にガッチリしたつくりで、走行中のロードノイズはそりゃあ普通のハッチバックよりは大きめだが、そこいらの安物小型車よりははるかに静かである。

 トップの開閉はスイッチを押す以外の操作はまったく不要。しかも開閉時間が短く(ミニの場合は片道で約20秒)、走行中(ミニは30km/L以下)も開閉操可能であることこそ、じつは電動ソフトトップ最大のツボ。

 これは経験してみると痛感するのだが、ごく低速でも走りながら開閉できるだけで、信号待ちなどで「ちょっとだけ開けて走りたい」と思い立ったら、即座に開ける気分になれる。同様に閉める作業も気軽なので、なおさらオープンで走ることをためらわなくなる。電動格納ハードトップに今のところ走行中の開閉が可能なものはなく、長い目で見ると、電動ソフトトップがオープン累積時間でもっとも長くなる=それだけオープンカーを楽しめる。

 さらにミニ・コンバーチブルのソフトトップは普通の"全開"と"全閉"以外に、大面積サンルーフのように天井部分だけを開けられる機能もつく。最新のよくできたオープンカーは、全開でも全閉でも快適な"1台で2度オイシイ"クルマだが、ミニの場合はさらに3度オイシイというわけだ。

 ミニ・コンバーチブルはオープンなのに4人乗りでもある。4人乗りのオープンはミニだけではないが、ボディサイズの大小、価格の高低を問わず、もっとも"使える"後席をもつオープンカーはミニと断言してさしつかえない。ミニはトップを閉めた状態でも、身長178cmのワタシが後席に普通に座れる。......ということは、ミニ・コンバーチブルはこれで4度オイシイということになる。

 さらにさらに、ミニ・コンバーチブルは走りもステキ。ミニは"ゴーカートフィール"と自称するほど、カキカキ曲がるキャラクターを意図的に売りとする、ただ、疲れているときなどは、そのカキカキ曲がりが少しばかり鬱陶しく感じる場面もなくはない。

 その点、オープン化でボディ剛性がほどよくユルくなったコンバーチブルの走りは、どんな場面でも、カキカキ感としっとり感のあんばいが、じつに絶妙。いつどこで走っても、ほどよく大人っぽく落ち着いている。

 これで、ミニ・コンバーチブルは、1台で5度オイシイという計算になる(笑)。いや、細かい回数はどうでもいい。とにかく、こんなに全身がツボだらけのクルマはめずらしい。

佐野弘宗●取材・文 text by Sano Hiromune