「いいね!」が脳を刺激し快感を与え続ける nevodka/Shutterstock.com

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 米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)アーマンソン・ラブレイス脳マッピングセンターのLauren Sherman氏は、SNSの「いいね!(like)」が中高生の脳に大きな影響を及ぼしているという研究成果をオンライン版『Psychological Science』に発表した。

 発表によると、13〜18歳の被験者32人に各40枚の写真を投稿させ、その写真をクリックした「いいね!」の数を確認している脳の状態を、機能的MRI(fMRI)によって撮像した。実際は研究者が「いいね!」の数を操作していたが、被験者には知らせていない。

 その結果、被験者が多数の「いいね!」 を見ている時、思春期に敏感に作動する脳の報酬系回路の領域をはじめ、「社会脳」と呼ばれる領域、視覚的注意に関連する領域が活発に活動する事実が確かめられた。

 脳の報酬系回路は、欲求が満たされた時や満たされることを知った時に快感を感じさせる。つまり、自分や仲間の写真が多数の「いいね!」 をもらえばもらうほど、チョコレートを頬張った時や金銭やプレゼントをもらう時と同じように、脳の報酬系回路が刺激され「欲しい」「嬉しい」「楽しい」「幸せ」「頑張ろう」と欲求がますますエスカレートする。

 欲求には、食欲、性欲、睡眠欲、喉の渇き、体温調整欲求などの生理的・短期的な欠乏欲求から、認められたい、誉められたい、愛されたい、愛したい、自分を高めたいなどの社会的・長期的な存在欲求までレンジは広い。

多数の「いいね!」が脳の報酬系回路を刺激し快感を与え続ける

 「いいね!」 を多くもらうと、このような脳の報酬系回路が活発に働くのはなぜか?

 報酬系回路は、ドーパミン神経系(A10神経系)とも呼ばれる。快感物質のドーパミンは、欠乏欲求や存在欲求の報酬が満たされる時に、中脳の腹側被蓋野から大脳皮質に大量に放射されるため、強い快感を感じる。覚醒剤やコカインなどの依存性が強い薬剤は、このドーパミン賦活作用を利用したものだ。

 サルの報酬系回路を調べた動物実験では、サルの中脳に電極を挿入し、ボタンを押すと電流が流れる装置を作ると、サルはとめどなく押し続けた。報酬系回路の刺激の強さが推測できるだろう。

 また、うつ病にかかると、ドーパミンをはじめ思考や意欲に深く関わるセロトニンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質の分泌量が激減することから、報酬系回路が遮断され、興味や喜びを著しく喪失する。さらに、言語、運動、精神活動を司る前頭葉の血流や代謝が低下することにつながるので、完治が難しくなる。

 このように、報酬系回路の働きは、人間の学習行動や環境適応をコントロールする重要なホメオスタシス(生体恒常性)のメカニズムだ。
「いいね!」が多くなればなるほど「いいね!」をクリックし続ける同調心理

 今回の研究では、全く同じ写真で「いいね!」の数が多い写真と少ない写真をそれぞれ半数ずつの被験者に見せたところ、被験者は「いいね!」の数が多い写真を見た時に、「いいね!」を押す確率が高くなった。

 つまり、 「いいね!」 をもらえばもらうほど「誉められている」「人気を集めている」「評価されている」という優越感を呼び覚まされることから、仲間のサポートが多ければ多いほど「いいね!」をクリックしやすくなったのだ。

 本サイトの「なぜ日本人は行列が大好きなのか? セロトニンによって促される群集心理のミステリー」でも紹介したが、このような中高生の心理を制御しているのがバンドワゴン効果だ。人気のあるブランドやサービスの口コミや噂が多ければ多いほど安心感や信頼感が強まるため、安易に付和雷同する同調効果のことをさす。人気店や行列店にやすやすと並ぶ、パレードの最後尾につ付いて行く、あの行動習性と同じだ。安心感への強い依存意識、それがバンドワゴン効果の特徴だ。

 バンドワゴン効果を生んでいるのは、脳で安心感を司りつつ、心のバランスを整えている幸せホルモンのセロトニンやオキシトシンに他ならない。

 研究者の1人であるMirella Dapretto氏は「中高生は、SNSなら見ず知らずの人にも仲間意識を持ちやすく、同調しようとする傾向が強い。中高生が『いいね!』から受ける影響は絶大だ。自分にとって重要な人が何かを支持するだけで、その影響力は一気に拡散する。ネット上で見知らぬ人と親しくなったり、危険な人に接触するリスクもある」とSNSの現状に懸念を強めている。

 多数の「いいね!」が脳の報酬系回路を刺激する。ドーパミンが快感を煽る。脳は幸せホルモンに酔い痴れる。中高生の若者たちは、同調快感(シンククロニシティ・コンフォート)を求めて、ひたすら「いいね!」クリックし続けるほかないのか!?
(文=編集部)