犬の散歩で健康に(shutterstock.com)

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 日々の生活を豊かにし、喜びを与えてくれるペットたち――。

 特にイヌは、人間と一緒に暮らすようになったのは紀元前に遡るほど"古い付き合い"だ。家族であり仲間、安らぎを与えてくれる友人であり、良きパートナー......。人間と苦楽をともにしてきた。

 近年、ペットとの触れ合いが人の心を癒すだけでなく健康にも貢献してくれることが分かり、ペットセラピーを積極的に取り入れる医療機関や介護施設も増えている。

 老年学専門誌「The Gerontologist」(2016年3月21日・オンライン版)に掲載された、米マイアミ大学のアンジェラ・カール助教授らの研究によると、イヌを飼っている60歳以上の中高年は「BMI(肥満の指標)が低く、病院の受診率も少ない」ことが示唆された。

 これまでにも、毎日30分程度のイヌの散歩は飼い主の心臓病や脳梗塞の予防に役立つことが指摘されているが、今回の研究ではイヌを「運動のパートナー」としてだけでなく「メンタル的なパートナー」としても捉えている。

 研究チームは、2012年に実施された「健康と退職に関する調査(Health and Retirement Study:HRS)」から、一般的な50歳以上の男女771人のデータを分析(その中でイヌを飼育していたのは271人)。

 質問項目には、散歩の頻度や時間のほか、「愛犬をパートナーと考えているか」「愛犬のことを他の人に話すか」などイヌとの絆を調べる項目もあった。

 その結果、イヌをパートナーとして飼っている中高年は日常的な運動量が多く、日常生活の妨げになる身体的な不調や制限が少ないこと、そしてBMIや受診率にも好影響を与えていることがわかった。

 単に運動量の問題だけでなく、飼い主とイヌとの強い感情的な繋がりにも意味がある。なぜなら、散歩が日課となるには、愛犬に対する飼い主の愛情や繋がりが少なからず求められるからである。

 また、イヌを飼うと、ほかの飼い主や地域の人とコミュニケーションを図る機会が増えるため、社会との関わりを比較的得やすい。これは、退職後に特定のコミュニティに属さず、社会的な孤立を感じる生き方に比べると大きな恩恵だ。

 カール助教授も「イヌの散歩は、単なる運動にとどまらず、飼い主とイヌとの関係性が影響するという特徴がある。今回の研究では、イヌとの感情的な繋がりが、散歩をする上で重要な役割を果たしていることが示された」と話している。

 ただし本研究は、イヌの飼育と60歳以上の健康度の因果関係の示唆にとどまり、その証明にまでは至っていない。
病気や老化予防のスペシャリストが太鼓判

 2014年、米国疾病予防管理センターは、病気予防のためには1週間で最低150時間の運動を推奨すると発表。イヌの散歩を1日20〜30分すればクリアできる時間だ。しかもイヌの散歩は、歩行のスピードや距離、そして毎日の定期的な運動であることが評価されている。

 米国高齢化研究連合会の代表であり、米ワシントン大学の「ご長寿犬組合」の理事でもあるダニエル・プロミスロー氏は、次のように述べる。

 「イヌでもネコでも、一緒に暮らせば孤独感が薄れ、ストレスレベルやコレステロール、血圧が下がることは広く知られている。しかもイヌには、散歩というオプションがある。その恩恵として病気に罹りにくいだけでなく、病気の回復にも良い影響がある」

 「毎日の散歩は、精神的にもプラスに働き、心理テストの結果も比較的良い。ただし、他のペットではどうなのか、どんな人が対象かという研究はもっと必要だろう」

 また、米フロリダ州薬科大学の老年医学のアリス・ポミドア教授もこのように話す。

 「多くの高齢者にとって、ペットは"社会との接点"となる。家族や友人、そして最愛のパートナーが亡くなった後でも、大切な心の拠り所になる。そのため、ホスピスや長期入所施設などでは、皆さんに安心感や喜びを得てもらうため、あえてペットを飼うところもあるほど」

 こうしたイヌからの恩恵は、科学的な根拠はさておき、愛犬家ならうなずけることばかりだろう。

 中高年は「自分が先に死んだら......」と最期の看取りを気にしてイヌの飼育に消極的な傾向があるが、イヌと一緒だからこそ「長く健やかな人生を送る」ことが可能になるのではないだろうか。
(文=編集部)