台湾の蔡英文政権発足から20日で1カ月。独立志向の民進党に政権交代したことで中国との関係に注目が集まっているが、まずは「安全運転」に努めているようだ。写真は6月11日の野球開幕式に出席する蔡英文総統。台湾総統府公式サイトより。

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2016年6月18日、台湾で蔡英文(ツァイ・インウェン)氏が総統に就任してから20日で1カ月。国民党から独立志向の民進党に政権交代したことで中国との関係に注目が集まっている。蔡氏は中国側が求める「92年合意」の受け入れを明言しない一方で、無用の摩擦は避ける姿勢を堅持。まずは「安全運転」を心掛けているようだ。

「92年合意」は、中国と台湾の交流窓口機関が1992年に香港で合意した交流の原則とされる。中国は大陸と台湾がともに「一つの中国」に属することを台湾が認めたと主張。国民党の馬英九・前政権は「合意」はあるが、「一つの中国」の意味はそれぞれ解釈する内容として、双方の認識にはずれがある。馬政権は台中交流の基礎と位置付けて交流を深めてきたが、民進党は合意そのものを認めていない。

蔡氏は5月20日の就任演説で中国に対話の継続を呼び掛けたものの、「92年に台中が会談した歴史的事実を尊重する」と述べるにとどめ、中国側が主張する「92年合意」「一つの中国」には言及しなかった。「92年合意」を認めない姿勢を改めて示した形だ。

これに対し、中国政府で台湾問題を担当する国務院台湾事務弁公室の馬暁光(マー・シアオグアン)報道官は就任式の翌日、見解を発表。蔡政権が「92年合意」を明確に受け入れない限り、台湾側の行政院大陸委員会との対話・連絡メカニズムを中断すると表明した。

中国外交部の中国外交部の華春瑩(ホア・チュンイン)報道官も「『一つの中国』の原則は国際社会に普遍的に認められている」と強調。その上で、「台湾でどのような変化が発生したとしても、中国政府は『一つの中国』を堅持し、『台湾独立』『二つの中国』『一中一台』に反対する立場は変わらない」と繰り返した。

さらに、中国共産党機関誌「人民日報」は、独立阻止を狙って対台湾武力行使に法的根拠を与えた2005年の「反国家分裂法」に言及。「依然として台湾独立を防ぐ強力な法律上の武器だ」と指摘し、「独立勢力が情勢を見誤り、一線を越えれば哀れな結末が待っている」と警告した。

その後も蔡氏は民進党が綱領に掲げる「台湾独立」を封印するのはもちろん、中国側を刺激しかねない発言は慎重に回避している。しかし、英BBCによると、1989年の天安門事件から27周年を迎えた6月4日には、個人のフェイスブック上で事件に対する見解を語った。

この中で、蔡氏は「台湾総統として、私は対岸(中国)の政治制度にあれこれ言うつもりはないが、心から対岸と台湾民主化の経験を分かち合いたいと思っている」「いつの日か民主と人権について、両岸の認識が一致することを期待したい」などとつづった。蔡氏の笑顔の陰には、相手の弱点に大胆に切り込むしたたかな面も隠れている。(編集/日向)