黄海の韓国と北朝鮮の境界線の海で、ワタリガニを狙って中国漁船が大挙して韓国側の水域に侵入。これを取り締まる韓国海洋警察などとの攻防戦が続いている。写真はカンジャンケジャン。

写真拡大

2016年6月17日、韓国と北朝鮮の境界線の海で「ワタリガニ戦争」が繰り広げられている。今が旬のワタリガニを狙って中国漁船が大挙して韓国側の水域に侵入。韓国政府は中国側に取り締まりの強化を求めているが、違法操業は続く。韓国海洋警察などが出動すると、中国漁船は北側の水域に逃げ込むなど、攻防戦が続いている。

中国漁船が目立つのは、黄海の韓国・延坪島(ヨンピョンド)周辺。水産資源が豊富な海域だが、黄海上の南北軍事境界線にあたる北方限界線(NLL)に近く、韓国漁船は通行と操業が禁じられている。延坪島は北朝鮮の甕津(オンジン)半島の南約12キロに位置し、10年11月には北朝鮮の砲撃で兵士2人が死亡。民家などにも大きな被害が出た。

ワタリガニは韓国で人気がある食材で、生のままタレに漬け込んだ「ケジャン」が知られる。しょうゆダレの「カンジャン(しょうゆ)ケジャン」と唐辛子ベースのタレを使った「ヤンニョムケジャン」が代表的な料理だ。

韓国・聯合ニュースが報じた海洋水産部の統計によると、今年4月のワタリガニの漁獲量は575トンで前年同月に比べ69%急減した。1〜4月の累計も664トンで、前年同期(2107トン)の3分の1にも満たないという。

ワタリガニ激減について、韓国の漁業関係者は「漁期に繰り返される中国漁船の違法操業の影響が深刻だ」と主張する。韓国での漁は65ミリ以上の網目の網を利用するよう制限されているが、中国漁船には規制がなく、小さいカニまで底引き網で根こそぎ持っていってしまい、資源の枯渇につながっている。聯合ニュースは「中国漁船がこれみよがしに陣取っているのを見ると、悔しさを抑えきれない」と怒りをあらわにする延坪島関係者の声を伝えている。

ハンギョレ新聞によると、中国漁船はNLLと延坪島の間の海で数日間、違法操業を繰り広げ、韓国海洋警察や海軍が拿捕(だほ)作戦を実施する兆候があると、北朝鮮の水域に逃走する。4月から6月までNLL近くの海上で海軍レーダーに捕えられた中国漁船の数は、13年に1日平均172隻だったが、14年には212隻、15年には329隻と毎年増え続けている。

業を煮やした韓国漁民は今月5日、船員が寝ていた中国漁船に乗り込んで2隻を拿捕。事態を重視した韓国外交部報道官は9日、「問題解決に向け多角的な外交努力を続けていく。中国側に対策づくりを強く求める」と言明。拿捕の後の7日と8日に中国側に抗議し、強力かつ実効性のある措置を直ちに取るよう改めて要求したと強調した。

しかし、中国漁船の違法操業問題は朝鮮半島で南北が厳しく対峙(たいじ)する現状と緊密に関係している。韓国側が思い通りには取り締まりできない間隙(かんげき)を突いて中国漁船は操業。韓国政府は有効な対策を打ち出せないまま手をこまねいているのが実情だ。(編集/日向)