WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 今季のメジャー第2戦、全米オープン(6月16日〜19日)では連日白熱した戦いが繰り広げられている。

 会場は、アメリカ・ペンシルベニア州のオークモントCC(7219ヤード、パー70)。全米オープンが行なわれるのは、今回で9回目となるアメリカきっての名門コースだ。また、前回開催された2007年大会では、アンヘル・カブレラ(46歳/アルゼンチン)が通算5オーバーというスコアで優勝と、「超」がつくほどの難コースでもある。

 さて、今年で116回目となる全米オープン。その歴史において、これまで数々の名勝負や名場面が生み出されてきた。「最も記憶に残るシーンは?」と聞かれたら、答えに迷ってしまうほどである。

 それでも、いくつか選ぶとしたら、まずはタイガー・ウッズ(40歳/アメリカ)が3度目の優勝を飾った2008年大会だろうか。

 同大会は、カリフォルニア州サンディエゴのトーリーパインズGC(サウスコース)で開催された。最終日の最終18番(パー5)を迎えて、ウッズは首位のロコ・メディエート(53歳/アメリカ)を1打差で追う状況にあった。第1打、第2打をミスしながらも、何とかバーディーパットにこぎつけたウッズ。彼の打ったパットは、緑の絨毯の上を上下、左右に跳ねながらもカップに吸い込まれていった。

 この結果、ウッズは首位のメディエートをとらえ、決着の場は翌日の18ホールのプレーオフへと持ち越された。そのプレーオフ、ヒザに痛みを抱えていたウッズは足を引きずりながらのプレーを強いられたが、最後はサドンデスのプレーオフにまで及ぶ死闘を見事に制した。

 この戦いは、今でも"伝説"として語り継がれているが、驚くべきは、ウッズにとってこの優勝が、今のところ最後のメジャー勝利となっていることだ。

 当時、そんなことになるとは誰が想像しただろうか。そして残念なことに、今年の全米オープンには、そのウッズの姿がない。この歴史に残る名勝負を演じて以降、ウッズはヒザや背中などの手術を繰り返し、現在もリハビリ中の身にある。

 優勝した選手たちの名シーンは数え切れないほどあるが、一方で惜しくも敗れ去った選手たちの名も記憶の奥にしっかりと刻まれている。フィル・ミケルソン(46歳/アメリカ)もそのひとりだ。私に限らず、彼の名を聞くと、全米オープンにおける彼の悲運の姿を思い出すファンも多いのではないだろうか。

 ミケルソンは、全米オープンにおいては過去6度も2位に甘んじて、いまだ未勝利である。4大メジャーのうち、マスターズ(2004年、2006年、2010年)、全英オープン(2013年)、全米プロ(2005年)は制しているが、全米オープンだけはあと一歩というところで何度となく涙をのんできた。自身のキャリア・グランドスラム達成も、なかなか果たせないでいる。

 最初に2位になったのは、1999年大会だった。会場はパインハースト・リゾート(ノースカロライナ州)。現在は同コースを象徴する銅像にもなった、今は亡きペイン・スチュアートのガッツポーズを目の前で見せつけられて敗れ去った。

 次は、2002年大会。ニューヨーク州のベスページ・ステートパークで、タイガー・ウッズとの一騎打ちの勝負となったが、ウッズの爆発力に屈した。3度目は2004年、シネコックヒルズGC(ニューヨーク州)でレティーフ・グーセン(47歳/南アフリカ)の後塵を拝した。

 最も悔しい思いをしたのは、おそらく4度目の2位となった2006年大会だろう。舞台となったのは、ウィングドフットGC(ニューヨーク州)。最終日最終18番を迎えて、ミケルソンはパーでフィニッシュすれば栄冠を獲得できる状況にあった。

 ところが、ティーショットを大きく曲げて、ギャラリーテントへと打ち込んだ。結果はダブルボギー。ジェフ・オギルビー(39歳/オーストラリア)に勝利を譲ってしまった。「僕はなんてばか者なんだ」と、頭を抱え込んだミケルソンの姿は今でも忘れられない。

 その後、2009年のべスページ・ステートパーク(ニューヨーク州)、2013年のメリオンGC(ペンシルベニア州)で行なわれた全米オープンで2位に終わっている。ゆえに、ミケルソンの忸怩(じくじ)たる思いは計り知れない。そして今大会の前には、ミケルソンは自らに言い聞かせるようにこう語った。

「この全米オープンが、メジャーの中でも最も勝ちたい試合だ。自分のすべてをこの試合にかけている。だけど、結果は考えない。結果を考えると、絶対に失敗するからだ。それは、過去の経験から学んだこと。他の3つのメジャーは勝つことができたが、(全米オープンでは)これまでに6回、優勝を逃している。

 僕にとって、この試合は母国のナショナルオープン。その分、余計に勝ちたい気持ちが強い。繰り返しになるが、だからといって、勝つことは考えないで試合に臨む。それこそが、勝つことへの道だと思う」

 大会初日の6月16日、ミケルソンは46歳となった。メジャーを勝つための残された時間は、決して多くはない。全米オープンの名勝負の記憶の中に、ミケルソンの勝者としてのシーンが加わることを期待したい。

text by Reiko Takekawa/PGA TOUR JAPAN