トイレで手を洗った後はペーパータオルでふくのが無難なようだ

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最近、駅やレストラン、映画館などの公共施設のトイレに、素早く水滴を飛ばして乾かすジェット式のハンドドライヤーを置くところが世界的に増えている。「速乾性」を重視してのことだが、通常タイプの温風式ハンドドライヤーの約20倍、ペーパータオルの約190倍以上の量のウイルスをまき散らしていることがわかった。

衝撃の研究をまとめたのは英ウエストミンスター大学のチームだ。応用微生物学専門誌「Journal of Applied Microbiology」の2016年2月号に発表した。

小さな子どもの顔の高さにウイルスが集中する

研究チームは、トイレで手を洗う際に、ペーパータオル、標準的な温風タイプのハンドドライヤー、そしてジェット式ハンドドライヤーのどれが一番衛生的かを調べるため、それぞれのやり方が空気中に放出するウイルスの量を比較する実験を行なった。実験は次の方法で行なわれた。

(1)参加者たちは特製の手袋をはめ、手に「MS2ウイルス」をたっぷり塗りつける。MS2ウイルスは大腸菌に感染して死滅させるバクテリオファージ(『バクテリアを食う者』の意味)の1種で、ノロウイルスなどの蔓延を研究するためのモデル生物に用いられる。

(2)その後、参加者たちに「ペーパータオル」「温風式ハンドドライヤー」「ジェット式ハンドドライヤー」の3つの方法で手を乾かしてもらう。

(3)トイレ内の様々な高さ、洗面所からの距離にプレートを設置し、捕獲したウイルスの量を計測する。プレートには大腸菌が塗られており、ウイルスによって殺された大腸菌の集団が残す斑点(プラーク)を数えると付着したウイルスの量がわかる仕組みだ。

実験の結果、ジェット式ドライヤーは、温風式ドライヤーの約60倍、ペーパータオルの約1300倍ものプラークを発生させた。しかも、ジェット式ドライヤーが放出したウイルスの約70%は、小さな子どもの顔の高さの位置に集中していた。飛距離を見ると、ジェット式ドライヤーを放出したウイルスは3メートル離れた場所にまで多く到達した。その量は温風式ドライヤーの約500倍で、ペーパータオルでは3メートルに到達したウイルスはゼロだった。

いつまでもトイレの空気中にウイルスが漂う

これらの結果を総合すると、トイレ内にまき散らされたウイルスの量は、ジェット式ドライヤーは温風式ドライヤーの約20倍、ハンドタオルの約190倍以上になる。また、送風から15分経過しても空気中に残るウイルスの量は、ジェット式ドライヤーは温風式ドライヤーの約50倍、ハンドタオルの約100倍になることがわかった。長い時間ウイルスが空気中に漂っているわけだ。

研究チームのパトリック・キミット博士は「ウイルスは、細菌と違い空気中に存在している時でも感染力を保ち、わずかの量でも感染症を引き起こしますから、今回の結果は問題です。医療現場や食品を扱う施設ではトイレの衛生に十分注意をしてほしい」と警告している。