■知られざる女子日本代表〜Beautiful Woman(1)

「人見知りで、メンタルもあまり強くない自分が、代表という自覚をもって、少しずつだけど変われていることがうれしい」

 引き締まった表情でそう話す田村友絵(たむら ともえ・26歳)は、「WFDF2016世界アルティメット&ガッツ選手権大会」(6月18日〜25日、ロンドン)の日本代表メンバーに初選出されたアルティメット選手だ。

 あまりなじみのない、アルティメットという競技は、ボールではなく、直径27センチ、重さ175グラムのフライングディスクを使用する。この白いプラスティック製の円盤を投げ合う、アメリカンフットボールとバスケットボールを足したようなアメリカ発祥のチームスポーツだ。

 試合は100m×37mのコートで7人ずつが敵、味方に分かれて1枚のディスクを投げ、パスをつないでエンドゾーンを目指す。一見、フリスビーで遊んでいるように思えるかもしれないが、実際は投げ方次第でディスクを変幻自在に飛ばす巧みな技や、約100分間走り続ける持久力などが高いレベルで求められる。

 走る・投げる・跳ぶといった様々な能力を要求されることから、アルティメット(究極という意味)の名がつけられた。事実、競技中はハードな動きも多く、田村自身、今年3月の国内大会で、地面すれすれに投げ込まれたフライングディスクをダイビングチャッチしにいって、地面に指が突き刺さってしまう大ケガを負った。

 開放性脱臼(骨が皮膚を突き破って出ている状態の脱臼)という、聞くだけでも恐ろしいアクシデントだったにもかかわらず、「でも(ケガをしながらも)ディスクをキャッチできたので満足です!」と笑顔で語る田村。取材時には東京・北千住の河川敷で練習できるまでに回復して、世界選手権に向けてのトレーニングを積んでいた。

 スタントマンだった父親の影響で、小さい頃から、空手、ダンス、野球、バスケットボールなど、さまざまなスポーツを経験してきた。文化女子大学附属杉並高校にバスケットボールで推薦入学し、がむしゃらにバスケットをやったものの、ついにインターハイには出場できなかった。

 そんな田村が大学1年生のときに、アルティメットに出会う。人見知りで、大学で新しい友達ができなかった彼女は、高校時代から仲が良かった友達にくっついて、アルティメット部に入部することに......。

 日本の競技人口は約4300人で、大学チームやクラブチームを合わせると約210チームが登録されているアルティメット。「セルフジャッジ(審判のいない自己審判制)」を採用し、「スピリット・オブ・ザ・ゲーム」という"反則をしない前提"を尊重するユニークさが性に合ったのか、田村は大学、そしてクラブチームで頭角を現し、次第に存在感を増していく。

「前の所属チーム(セブンカラーズ)のキャプテンを務めさせてもらったことで、アルティメットに対する意識が変わり始めました。プレーについて、仲間について、たくさん考えた先に、とびきりの楽しさが待ってることを知りました。自分の人生の中で、アルティメットをしているときが一番輝けると思いました」

 輝いた先に上り詰めた「日本代表」の座。現在、彼女は健康製品関係会社の営業職として働いている。出社して事務処理、外回りの仕事をこなし、帰宅してからトレーニングをする毎日だ。マイナーな競技ゆえに支援も乏しく、経済的な負担もかかる。

 それでも今年の世界選手権は、2017年にポーランド、ヴロツワフで行なわれるワールドゲームズ(4年に一度開催される「第2のオリンピック」ともいわれる国際総合競技大会)への参加権利と、女子日本代表の2連覇がかかる大切な大会となる。仕事やプライベートとの両立が大変でも、泣き言は言っていられない。

 田村は、「ハンドラー」というポジションで、ディスクをたくさん集めてハンドリング(処理)する、いわばゲームを組み立てる役だ。

「今は代表の素晴らしいメンバーとプレーするのが、とにかく楽しいです。私は今までアルティメットで大きな舞台に全然手が届かなかったので、今まで温めて続けてきたメラメラする想いは人一倍だと思います。プレーでも気持ちでも、今までやってきたことを世界選手権で出し切りたい。私はスタープレーヤーではありませんが、自分らしくハンドラーとして、コートの中で試合全体のバランスをとったり、ディスクを上手につないだりして、ゲームを組み立て、日本の勝利に貢献します」

 2012年に大阪・堺市で開催された「WFDF 2012世界アルティメット&ガッツ選手権大会」では、女子日本代表がアメリカを抑えて優勝している。世界的にみても、日本チームのポテンシャルは高い。

「今回の世界大会での目標は、もちろん2連覇です! 金メダルをチームみんなで絶対につかみ取ります。そして、誰よりもゲームを楽しむことが目標です。プレッシャーはありません。日本は走力、頭脳プレー、チームワークでアメリカに勝っていると思います!」

 将来の夢は「競技の先輩たちのように、いつまでも輝いて人生を楽しむこと」という田村。その前に、初の代表として日の丸を掲げる大仕事が待っている。

たかはしじゅんいち●文 text by Takahashi Junichi