女が部屋をあさっている。
強引に引き出しを開ける。
いや、あさっているのではない。
自分の荷物をカバンに詰めているのだ。
乱暴だ。どうしたんだ。
スマートフォンが鳴る。
手で顔を覆う。
感情のたかぶり。
出る。
喋っている姿。激しく何か言っている。
声は聞こえない。
カバンを持って、部屋を出る女性。
机の上には、指輪が残されている。
ああ、同棲してた男と別れて家を出るのか。
この後、運転している車に事故が起きて、タイトル、ドン。
って、ここまで数分。
あっという間に引き込まれる。


めっちゃ巧い。
『クローバーフィールド』シリーズだと知らなければ、人生を描いた名画だと確信しただろう。
だが、J.Jエイブラムスが「同じDNAを持ってるよ」と言ってる作品だ。
ここから、とんでもない展開の連続だ。

そう。
『クローバーフィールド/HAKAISHA』は、怪獣映画だった。
しかも、ホームビデオの主観映像を巧みに使ったドキュメンタリー怪獣映画。
B級的な題材を、めちゃくちゃ凝った映像と演出で見せ、ジャンルを超越する。
そういう意味でも、『10 クローバーフィールド・レーン』は正真正銘『クローバーフィールド』シリーズだ(続編じゃないよ)。

制作は、J.J.エイブラムス。
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』『クローバーフィールド/HAKAISHA』『LOST』などなどなど大エンタテインメント作品を作りつづけている男だ。

監督は、ダン・トラクテンバーグ。
ショートムービー「Portal: No Escape」(ゲーム「Portal」の実写化!)が話題を呼び(再生数17,800,000回超え)で注目を浴び、今回の作品が、初長編作品。
なのに、なんで、こんなにめちゃくちゃ巧いの!?
というか、どうしてここまでJ.J節で撮れるのか。

J.Jエイブラムスのファンは必見。
特に『LOST』ファンは必見。
ケイトとロックとチャーリーが密室に閉じ込められたら、どうなる?って話だから。
女性が男性の傷を縫うシーンとか、窓ガラス越しの死別とか、暴れん坊タンクトップ女性大活躍とか、J.Jエイブラムスお得意のシーン連発だ。

いやいやいや、もう、何も読まず、何も情報を仕入れず観に行くがよい。
『クローバーフィールド/HAKAISHA』も観てなくても大丈夫。
後から観ればいい。
すべての情報を遮断して、何も知らずに観るのがベストだ。
公式サイトすら後から観たほうがいい。
ツイートもさっそく、大傑作だ!駄作だ!と意見がまっぷたつ。
どちらにしても、感情は動く。
観た後にいろいろ語れる友達といけば損はしない。
大傑作だろうと駄作だろうと、盛り上がるだろう。
俺はこういう破格な映画が大好きだ。
もう何も言わん。今いる場所から抜けだして、走れ。
(米光一成)