安倍首相は伊勢志摩サミットで「リーマンショック前後の危機的状況にある」と強調。このサミットで増税見送りに関して各国のお墨付きを得た
消費増税の先送りが決定し、日経平均は急上昇。一方で、海外に目を向ければアメリカの利上げに大統領選、パナマ文書問題と注目材料が目白押し。’16年後半の日本経済への影響はどれほどのものか? 闇株新聞氏が重大ニュースを読み解く

◆アメリカのドル安政策で1ドル=100円割れへ

 再度、消費増税を2年半先送りすることが確定的となり、日経平均株価は一時的に1万7000円台を回復しました。しかし、これは4月の時点で見えていたことです。私が増税の先送りを確信したのは、4月27、28日の日銀政策決定会合で期待されていた追加緩和を見送ったことにありました。

 4月15、16日に開催されたG20(20か国財務相・中央銀行総裁会議)では、黒田東彦日銀総裁は次の政策決定会合で追加緩和することを、ほぼ断定的に表明していました。これにより、マーケットではヘッジファンドなど海外勢による円売り・株買いが加速。結果的にドル/円は107円台から4月28日には111円88銭まで円安が進んだのです。ただし、4月14、16日には熊本地方を大地震が襲いました。ここで増税延期の機運が急浮上。財務省内でも「やむなし」の声が上がったと聞きました。つまり、追加緩和を予定した日銀が、急きょ「現状維持」を決め込んだのは、増税延期が確定的となったため、株価を押し上げるための援護射撃(追加緩和)が不必要になったからなのです。

◆日銀の追加緩和も介入も期待できず

 当然のことながら追加緩和見送りのサプライズ効果で、ドル/円は急落。5月3日には105円54銭まで円高が進みました。その後は、FRB(連邦準備制度理事会)理事たちから早期利上げ発言が飛び出してドル/円が反発し、増税延期期待が膨らんで株価も上昇。足元は円安に傾いているように見えますが、私は年内に再び円高が進む可能性は非常に高いと考えています。

 1つにはアメリカがドル安路線に転向したことが挙げられます。あまり報道されていませんが、伊勢志摩サミットの議題となった経済問題でもアメリカのドル安政策が確認されています。次期大統領の座を争うトランプ、ヒラリー両氏とも「ドル高」を批判してきたことを考えれば、長期的にアメリカのスタンスは変わりません。FRBが利上げに動いたのは、次期大統領の下では利上げが難しくなるという政治問題が影響しただけと考えられます。

 一方で日本には、円高の進行を阻止する術がありません。4月に米財務省が発表した為替報告書で、日本は「監視リスト」に入りました。GDPの2%を超える額の自国通貨売り・ドル買い介入を行った場合には「為替操作国」に指定する、という警告です。いくら麻生太郎財務相が息巻いても、介入のハードルは非常に高いものになってしまった。加えて、消費増税を延期したので、日銀が追加緩和をする必要がありません。これ以上、円安に誘導する手段が日本にはないのです。

 足元では経常収支の黒字額が東日本大震災前の水準まで回復しています。日本の法人・個人が海外で稼いだお金を円に交換する潜在的な円買い需要が拡大しているという点で、大きな円高要因となります。これらを総合して考えると、5月3日につけた1ドル=105円54銭までの円高が進行する可能性は非常に高い。長期的には100円を割り込むと考えています。

【闇株新聞】
’10年に創刊。大手証券で企業再生などに携わった経験を生かして記事をアップし続けるWebメディア。金融関係者などか注目を集める

― 号外[闇株新聞]2016年日本経済の後半を読み解く重大ニュース ―