(今回の侵入に際し、中国艦の追尾を続けた護衛艦「せとぎり」(防衛省提供))
「地元は何度も『中国は尖閣を取りに来ている』と警告してきました。それでも国は知らんぷり。今回はそうした対応の結果、起こったことだと思います」(沖縄県石垣市の仲間均市議会議員)

6月8日の夜から9日未明にかけて起こった、中国海軍の艦艇による日本の接続水域への「無法侵入」事件。接続水域とは領海(沿岸12カイリ)の外側にあるが、自国の法律で密入国などを取り締まれる。

首相官邸に「中国海軍の艦艇が接続水域に近づいている」と連絡が入ったのが8日午後9時50分。接続水域内に侵入したのが9日午前0時50分。出たのが午前3時10分。そこで起こった5時間20分に及ぶ攻防――。

「外務省の齋木昭隆事務次官が中国の程永華駐日大使に呼び出しの電話をかけ、午前2時に外務省で直接、抗議した。2人の間で、相当厳しいやり取りがあったと聞いている」(政治部デスク)

迅速に政府が対応したのは、今回の件がこれまでの侵入騒動と、明らかに違う点を持っていたからだ。ひとつは、船が「軍艦」だったという点。

「中国の軍艦が接続水域内で確認されたのは初めて。海軍が出たら日本も海上自衛隊が出ていかなければならず、まさに一触即発の状態になる」(前出・政治部デスク)

今回、日本側は海自の護衛艦が追尾した。「軍艦には軍艦を」というわけだが、これほどまで日中の軍艦が接近するのは異常事態だという。

「夜中の事件にもかかわらず、今回、海自は中国艦の型を把握していました。つまり、細かく判別できる距離、数キロのレベルにまで近づいたんじゃないかと思います」(軍事をテーマに取材するフォトジャーナリストの柿谷哲也氏)

それでは現場では、どのようなやり取りがおこなわれたのか。

「相手の位置をレーダーで把握し、侵入が明らかになれば、状況を見ながら英語か中国語で警告をおこないます。ただし基本は、お互いの言い分は無視。双方が壊れたレコードのように、言いたいことだけを言い合う状況です」(元海上自衛官の伊藤祐靖氏)

そしてもうひとつ、これまでと違う点があった。それは、ロシアの軍艦も時を同じくして侵入してきたことだ。

「ロシア艦3隻が8日の午後9時50分、接続水域に侵入しました。ロシアが動くことを知り、それに中国側が追随したという見方もできます。日本がロシア艦にどのような反応をするか、日本のセンサー情報はどうか、逆にロシアが日本の海自にどう反応するか。中国がすべてのデータを収集するためです」(軍事評論家の高井三郎氏)

今回の侵入事件で、日中関係は「ワンランク危険度が上がり、新たな段階に入った」と政府関係者は指摘する。前出の柿谷氏によれば、「日中はともに尖閣の最前線に潜水艦を常駐させ、互いの戦力データ採集に余念がない」という。今この瞬間も「戦争」は続いているのだ。

(週刊FLASH 2016年6月28日)