日本と中国の間で偶発的な軍事衝突を回避する「海上連絡メカニズム」。日中両国間の協議は尖閣問題も絡んで暗礁に乗り上げている。資料写真。

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2016年6月17日、日本と中国の偶発的な軍事衝突を回避する「海上連絡メカニズム」づくりが遅遅として進んでいない。9日、中国海軍の軍艦が沖縄県・尖閣(中国名・釣魚島)の接続水域に進入して緊張が走り、15日には別の艦が鹿児島県・口永良部島の領海を航行した。日中両国政府はシステム構築では合意しているが、協議は暗礁に乗り上げたままだ。

連絡メカニズムは、海上や上空で艦船や航空機による不測の軍事衝突が起きるのを防ぐため、防衛当局間で緊急時に連絡を取り合う枠組み。現場の当事者が直接、連絡を取る方法を決めたり、政府や防衛当局間で複数のホットラインを設けたりするのが一般的とされる。

日本は1993年10月にロシアとの間で同じような「海上事故防止協定」を締結した。双方の艦船が十分な距離をとって衝突を防ぐことや、航空機の無線周波数の統一などを定めた。双方の領海、領空は適用対象にならない。

中国とは2007年4月、第一次政権時代の安倍晋三首相と温家宝(ウェン・ジアバオ)首相(当時)の間でメカニズムづくりの協議開始に合意。翌年4月に北京で第1回協議が開かれ、12年6月の第3回協議で大枠について合意した。日本メディアによると、(1)艦船・航空機が偶発的に接近した際の通信方法(2)双方の幹部が連絡し合うホットラインの設置(3)こうした枠組みの技術的な改善点を話し合う定期会合―が柱だった。

その後、中国は東シナ海で艦船や航空機の活動範囲を拡大。13年1月には中国の江衛II型フリゲート艦「連雲港」が海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」に対して射撃管制用レーダーを照射したり、さらに14年5月には東シナ海の日中中間線付近で、中国軍のSU27戦闘機が、海自の観測機と空自の電子測定機にそれぞれ約30〜50メートルまで接近したりした。

14年11月の安倍首相と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席による日中首脳会談で、海上連絡メカニズムの早期運用開始に向けて協議を進める方針を確認。15年1月から協議を再開したが、中国側が運用の対象範囲に尖閣諸島周辺の日本領海と領空も含めるよう求めたため、協議が難航している。尖閣諸島の領有権を主張し、日本領海への公船の侵入を繰り返している中国には海上連絡メカニズムを通じて領有権主張を強める意図があるとみられる。

日本メディアによると、中谷元・防衛相は中国艦進入翌日の10日、「(今回のような進入問題が生じた場合は)連絡をして先方に制止を呼び掛けることが安全上、必要だ」と指摘。メカニズム創設の協議を加速させたいとの考えを示した。しかし、南シナ海でも米国との軍事的緊張を抱える中国側の出方は予断を許さず、協議が今後、どう進展するかは依然として不透明だ。(編集/日向)