SOFC(固体酸化物型燃料電池)の車載では世界初の試みとしている日産自動車の「e-Bio Fuel-Cell」。エタノール燃料を使った車上(水素)改質型のレンジエクステンダーEVという位置づけになります。

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今回の日産「e-Bio Fuel-Cell」のように、エタノールなどのアルコール燃料、ガソリンなどの炭化水素燃料を使った車上改質は、80年代後半から1990年代後半にかけて各自動車メーカーが研究してきました。

しかし、改質器の小型化や熱対策や耐久性、始動性や応答性などが解決できず、高純度の水素を使ったSOFC(固体高分子型燃料電池)へと収斂していったという流れがあります。

こうした課題は、日産が発表した「e-Bio Fuel-Cell」の課題でもあるのでしょうが、こちらでも紹介したように、FCスタックの熱対策や作動温度のさらなる低温下などにより、かつてとは状況が違うというのも「絵空事ではない」ことにつながっているようです。

燃料となる100%エタノールやエタノール混合水は、ブラジル、アメリカ、タイなどの世界中で普及しているという状況もあります。

食料と競合してしまう(バイオエタノール生産か食料か)フード・コンフリクトという問題も、サトウキビなどの残渣からバイオエタノール生産に成功するなど、解決策も芽生えつつあります。

なお、エタノール混合水の比率は水が55%、エタノールが45%となっています。この比率は改質器でエタノール混合水から水素を取り出す際の化学式の主反応によるものだそうで、これ以上水の割合を増やしても反応はするが、効率が悪くなるそう。

日産が発表した「e-Bio Fuel-Cell」は、100%エタノールもしくは水を混ぜたエタノール混合水を補給する燃料タンクが30L前後で済み、航続可能距離は600km以上。

60%前後という燃焼効率の高さも利点で、ガソリンエンジンが究極的には43〜44%というところを目指すとされていますから、1.5倍以上という効率の高さが目を惹きます。

日産の算出によると、Cセグメントクラスを前提としたランニングコスト(参考値)は、ガソリンエンジン車が9.0円/km、「e-Bio Fuel-Cell」が3.1円/km、EVが2.9円/kmと、EV並のコストで済むうえに、エタノール燃料もしくはエタノール混合水の補給もすぐ完了し、EVのように長時間充電する必要がありません。

ガソリンや水素よりもインフラの制約が低く、自分で補給することも難しくないため、日本だけでなく世界的にガソリンスタンドの減少にも対応できるほか、高純度の水素が必要なPFEC(固体高分子型燃料電池)を採用するトヨタMIRAIやホンダFCXクラリティなどのような高額な水素スタンドの必要もありません。

日産では、同システムを短距離走行、長時間使用のデリバティブ・ユースを想定。バッテリーEVを軸に、エタノール燃料を使ったレンジエクステンダーEVでトヨタやホンダなどの高純度水素を使ったFCVに対抗する構えを取りつつあるといえそうです。

(文/写真 塚田勝弘)

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