男性同性愛者の献血は「認められている」とはいえない──米銃乱射事件から

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同性愛者が集まるナイトクラブにおける銃乱射事件は、大勢の被害者を生んだ悲劇として記憶に刻まれた。同時にこれは、セクシャルマイノリティに対する社会のあり方の転換をも迫る出来事なのかもしれない。

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6月12日に起きたフロリダ州オーランドのゲイ・ナイトクラブでの銃乱射事件では、少なくとも50人が殺され、数十人が傷を負った。

事件直後には、犠牲者のために献血をしようとボランティアが長い列をつくったが、このときある問題が議論されている。食品医薬品局(FDA)の定めた基準によって、米国では過去1年で他の男性との性行為のあった男性による献血は認められていないという現状に疑問を呈する議論だ。

決まったパートナーがいようとも

HIVが流行の徴候を見せ始めた1983年、FDAは同性との性行為をもった男性からの献血を全面禁止する措置を取った。科学者たちでさえこの新しいウイルスについての知識をもっておらず、ただ恐怖したからだ。

しかし、やがてHIV検査も日常的になり、2015年12月、FDAは基準の改訂に踏み切った。過去12カ月性行為を控えていた場合に限り、男性同性愛者も献血できるとしたのだ。

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事件後、追悼の集会には命を落とした被害者への祈りを捧げる人たちが集まった。PHOTO: AP/AFLO

が、この改訂内容では「一夫一妻制」の関係にある男性同性愛者は除外されてしまう。かたや、(1年以上前とはいえ)複数の性的パートナーをもっていたとしても、異性愛者であれば、献血が許されることになる。

セックスは、一概には語れない

FDAの現行政策は、英国をはじめとする他の国々に合わせて実施された。一方、イタリアなどの血液銀行の基準は、男性との性行為をもった男性を総じて禁止対象とするのではなく、「個々の性的リスク評価」へと移行している。同国で行われているのは、献血しようとする者の「無防備な」セックス歴を尋ねるアンケートだ。2001年以降にリスク評価を転換したイタリアでは、HIV感染が激増したという報告はされていない。

米国における献血では、旅行歴や最近の医療処置、ピアス穴やタトゥーを調査する長大なアンケートへの回答が要求される。これらの質問のいずれかでイエスをチェックすると、1〜3年、場合によっては永久に献血が禁止される可能性がある。

日本の基準は、先進的といえるのだろう

それでは、同様のケースにおいて、日本における献血の基準はどうなっているのだろうか。

日本赤十字社東京都赤十字血液センターのホームページによると、「男性の方でこの6カ月に、男性との性的接触があった方」については、「献血をご遠慮いただいて」いるという。

米国に比して半分の期間としている基準へと至った経緯について日本赤十字社の広報に問い合わせたところ、上記の基準は2011年4月1日から採用されているとの答えを得た。

1995年に全国で統一された当時の基準では、「この1年間に同性と性的接触をもった方」を対象としていた。それから11年にが経って6カ月に短縮された理由として、同広報は、HIVのスクリーニングとして導入されていた核酸増幅検査(NAT)の精度が向上し、ウイルスが検出できない空白期間(ウインドウ・ピリオド)を短縮することが可能となったことを挙げている。

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事件翌日、市内の追悼集会の様子。PHOTO: ABACA/AFLO

ちなみに、上記基準における「性的接触」とは、「体液と粘膜が接触する行為」「性感染症を起こし得る性行為」を指すという。また、本基準は、男性同士の性的接触に限定され、女性同士の行為については該当しない。

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