『ミスター・ダイナマイト ファンクの帝王ジェームス・ブラウン』 (C)2014 Mr. Dynamite L.L.C.

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(…前編「著作権にも目配り!のビジネスマン」より続く)
【映画を聴く】前編/ゲロッパのJBは、ショウビズ界一の働き者でビジネスセンスも抜群だった!

【映画を聴く】『ミスター・ダイナマイト〜』後編
ライブでミスすると容赦なく罰金!

本ドキュメンタリー映画『ミスター・ダイナマイト ファンクの帝王ジェームス・ブラウン』が、昨年公開の伝記映画『ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男』と合わせ鏡のような関係にあることは前編で触れた通り。伝記映画という性格上、『ジェームス・ブラウン〜』では本来彼の音楽を語る上では欠かせない要素がいくらかオミットされていた。

たとえば“JB一座”の中でもキーパーソンであるはずのダニー・レイ(ステージのMC)やフレッド・ウェズリー(トロンボーン奏者)が出てこなかったり、マイケル・ジャクソンやプリンスといった生粋のJBチルドレン、あるいはさらに若いヒップホップ世代への影響力の大きさにあまり触れられていなかったり。本作ではそういった部分をていねいにフォローし、ポピュラー音楽界における彼の存在の大きさを映し出している。

先のダニー・レイやフレッド・ウェズリーのほか、本作のプロデューサーであるミック・ジャガー、長年連れ添った盟友のボビー・バード、ツアーマネージャーで後に民主党の大統領候補にもなったアル・シャープトン、それにメイシオ・パーカー、クライド・スタブルフィールド、ブーツィー・コリンズ、マーサ・ハイといったバック・バンドの面々がこぞって登場。彼らはそれぞれにJBの偉大さを語るいっぽう、一様に彼のワンマンぶりや金銭面の見返りの少なさに不満を漏らしている。

ファンやラジオ局のDJへの親切で気の利いた対応とは裏腹に、ライヴでミスをすれば罰金を徴収するなど、JBの身内への容赦のなさは『ジェームス・ブラウン〜』でも生々しく描かれていたが、そのことを話す彼らの表情からは、JB一座の恐怖政治とも言える過酷さがいまだに見て取れるのだから面白い。JBの“Rise(栄光)”を中心に描いた本作だが、やがて訪れる“Fall(失墜)”の予感もこういうところにしっかり匂わせているわけだ。

ほんの一瞬だが、マイケル・ジャクソンやプリンスの映像が出てくるのも感慨深い。JBのライヴでのステップとマイケルのムーンウォークが並べて紹介されたり、プリンスのヒット曲「Kiss」のイントロで聴ける“JB愛”について言及されるくだりに膝を打つ音楽ファンは多いだろう。

JBはもちろん、そのフォロワーであるマイケルもプリンスも故人となってしまった2016年。現代のヒップホップやR&Bにも息づいているJBの足跡をたどる作品として、『ミスター・ダイナマイト ファンクの帝王ジェームス・ブラウン』はこれ以上は望めないほど充実したドキュメンタリーに仕上がっている。“ゲロッパのおじさん”という呼び名さえ通じない若い世代にもぜひ見てほしい一作だ。(文:伊藤隆剛/ライター)

『ミスター・ダイナマイト ファンクの帝王ジェームス・ブラウン』は6月18日より全国順次公開される。

伊藤 隆剛(いとう りゅうごう)
ライター時々エディター。出版社、広告制作会社を経て、2013年よりフリー。ボブ・ディランの饒舌さ、モータウンの品質安定ぶり、ジョージ・ハリスンの趣味性、モーズ・アリソンの脱力加減、細野晴臣の来る者を拒まない寛容さ、大瀧詠一の大きな史観、ハーマンズ・ハーミッツの脳天気さ、アズテック・カメラの青さ、渋谷系の節操のなさ、スチャダラパーの“それってどうなの?”的視点を糧に、音楽/映画/オーディオビジュアル/ライフスタイル/書籍にまつわる記事を日々専門誌やウェブサイトに寄稿している。1973年生まれ。名古屋在住。

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