ふさふさサリー(下)でかなわなかった触手の夢をかなえたタコのハンク(上) - (上)『ファインディング・ドリー』(下)『モンスターズ・インク』
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 大ヒット作『モンスターズ・インク』(2001)でディズニー/ピクサーが断念した夢……それは、触手のメインキャラクターを作るというものだった。

 『モンスターズ・インク』の主人公・サリーは、今でこそ青いフサフサの毛並みが愛らしいキャラクターだが、もともと彼の足は触手になる予定だった。しかしどのような形・方向にも動かさなければならない触手のCGアニメーションの複雑さに、当時の技術では表現が追いつかず、ピクサーは泣く泣くサリーを二本足のモンスターに変更。結果的にサリーは社を代表する人気キャラクターになったものの、スタッフたちの心にはモヤモヤが残っていた。

 そして『モンスターズ・インク』のアメリカ公開から15年、ついにピクサーに再チャレンジの機会がやってきた。『ファインディング・ニモ』の続編『ファインディング・ドリー』で7本足のタコ、ハンクを主要キャラクターに据えることになったのだ。ピクサーに勤めて18年のベテラン、キャラクター・アート・ディレクターのジェイソン・ディーマーは、触手を自然に動かすシステムを作るために、約1年の期間を費やしたと明かす。新しい技術を生み出してもなお、やはり触手のCGアニメーションは苦労の連続だったのだ。しかしここで諦めてしまってはサリーの二の舞。「難しいということは、これまでに誰もやったことがないということ」という信念のもと、ジェイソンのチームは見事自在に触手を動かすタコのアニメーションを完成させた。

 ジェイソンは、タコのハンクはピクサーが生み出した数々の歴代キャラクターの中でもナンバーワンの存在になったと語る。「ハンクはわたしがこれまでに関わった中で、最も大変な仕事でした。しかし同時に最も誇りに思えるキャラクターです」。平たくなったり縦に伸びたりする今までのピクサーになかった動きのシステムを取り入れているハンク。このキャラクターには、ピクサーが長年抱いていた触手の夢が詰め込まれている。(編集部・井本早紀)

映画『ファインディング・ドリー』は7月16日より全国公開