空いている、使われていないアイドル(idle)なリソース(資産)や時間、能力などをシェアして活用するビジネスが世界中で急成長している。この「アイドルエコノミー」と「シェアビジネス」に数年前から着目してきた経営コンサルタントの大前研一氏は、大きな可能性がある分野として荷物の配送について新しい提案をしている。

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 シェアビジネスは、荷物の配送でも大きな可能性がある。たとえば、アマゾンなどのeコマースや通販で購入した商品を届ける場合、昼間は7割くらいの家が留守だ。このため再配達が大変で、宅配便にとっては午後6〜9時が最もコストのかかる苦手な時間帯になっている。

 したがって、デポから各家庭までの「ラスト1マイル」の夜間の配達──ここを埋めるサービスをウーバー的な仕組み(ウーバー・プール=相乗りタクシー)でやれば、エンドレスにビジネスチャンスが出てくるのだ。 

 具体的には、サラリーマンが帰宅後2〜3時間の小遣い稼ぎとして宅配会社に登録し、定時で帰宅した時に近隣にあるデポで夜間の再配達になった荷物や配達時間が午後6時以降に指定された荷物を自分の車、バイク、自転車で配達する。これもスマホを組み合わせることで、荷物の配達だけでなく集荷にも活用できる。

 タクシー配車アプリの「全国タクシー」のようなシステムを使って、利用者の自宅から最も近い場所にいる車をスマホで探し、「〇分以内」に集荷できるようにすることも可能だ。タクシー会社が空車率の高い時間帯に配達や集荷を請け負うという方法もあるだろう。すでにウーバーはアメリカの大都市で荷物の配達・集荷サービスや料理の宅配サービスを展開している。

 しかし、日本は有償で人間や荷物を運ぶ時は細かくて厳しい法規制がある。たとえば、自家用車を使うことはできないし、旅客自動車運送事業を行なう場合、運転者は第二種運転免許を保有していなければならない。だから日本ではウーバーのサービスが拡大しないのだ。あるいは、荷物の運送事業を自動車や三輪以上の軽自動車、二輪の自動車(※)を使って行なう場合は貨物自動車運送事業法の規制対象になる。

【※「二輪の自動車」とは125cc以上のバイクなので、125cc未満の原付二種や原付、自転車を使った荷物の運送事業は法規制から除外され、運送業の許可などは必要ない】

 アメリカでは、帰省などで長距離ドライブする時は、タクシーではなく、同じ目的地に向かう個人の自家用車に相乗りすることが当たり前になっている。ネットで同乗者を募集し、ガソリン代などを割り勘にして交代で運転するのだ。しかし、日本でそういうことをタクシー事業者以外が有償でやったら、いわゆる「白タク」(自家用車を使い無許可でタクシー営業を行なっている車)とみなされ、違法行為になってしまう。

 だが、今後はこれらの規制を大幅に緩和するなり、新しいルールを作るなりして、アイドルエコノミーとシェアビジネスの拡大を後押しすべきである。

 とにかくアイドル(施設や人間などの空き)は、すべて商売になるのだ。この領域を開放しなければ、日本はシェアビジネスでも世界に取り残されてガラパゴス化してしまうだろう。

※週刊ポスト2016年6月24日号