【日本サッカー見聞録】浦和の脱落に見るリーグ戦の価値観

写真拡大

▽J1リーグ1stステージは15日にACLのため延期となっていた2試合を行い、FC東京と広島は1-1のドロー、G大阪vs 浦和は宇佐美のゴールでG大阪が3試合ぶりの勝利を飾った。この結果、浦和(勝点27)は首位の川崎F(同34)や2位の鹿島(同33)と1試合消化は少ないものの、川崎Fとの勝点を詰めることができず7差のまま。浦和が残り3試合を全勝しても勝点は36のため、第16節で川崎Fが勝ち、鹿島が敗れれば川崎Fの第1ステージ優勝が決まる。

▽浦和が優勝するためには、未消化の2試合を連勝して川崎Fに勝点1差に詰め寄る必要があった。しかし、そんな浦和の前に立ちふさがったのが、“天敵”とも言えるG大阪だった。昨シーズンのCS準決勝でも延長戦の末に1-3と敗れ、年間順位3位に後退したのは記憶に新しいところ。一昨シーズンも手中に収めかけたリーグタイトルを奪われている。

▽今シーズンのG大阪は遠藤の起用法に逡巡が見られ、一時期ほどの爆発的な攻撃力はない。実際、試合はアウェイの浦和が主導権を握っていたものの、カウンターから失点するのもこれまでの敗戦パターンと同じだった。G大阪に敗れたこともさることながら、4試合連続の無得点にこそ失速の直接の原因があるとも言えるだろう。

▽毎年のように補強を重ね、今年は湘南から遠藤、京都から駒井と即戦力を獲得し、特に遠藤は那須の代役としてDF陣の安定に貢献。14試合で9失点は鹿島と並ぶ最少失点でもある。にもかかわらず第1ステージの優勝は絶望的になった。フロントやファン・サポーターは「第2ステージがある」とか「年間チャンピオンになればいい」とすんなり頭を切り替えて、現体制を維持するのかどうか。

▽これは余談だが、リオ五輪のOA枠にG大阪のDF藤春と広島のDF塩谷の招集が発表された。残り1枠は興梠が候補に挙げられているものの、未だにイエスかノーの正式発表はない。もしかしたら、第1ステージで優勝できたら興梠を送り出す方向で調整していたのではないだろうか。リオ五輪期間中は事前キャンプも含めると第2ステージを5試合ほど欠場することになる。リーグ戦の約3分の1に当たるためエースストライカーの離脱は痛手だ。このため、もしかしたら興梠の招集を浦和は拒否する可能性もあるだろう。

▽話を本題に戻そう。この浦和に限らず、昨シーズンの上位4チームはいずれも優勝争いから脱落している。やはりACLの影響からか、浦和以外の3チームはACL後のリーグ戦で苦戦している。リーグとACLのダブル・タイトル獲得のためターンオーバー制を採用しても、攻守の主力戦は出場せざるを得ないため、肉体的な負担もかなりなものだろう。逆に優勝争いを演じている川崎Fと鹿島はACLの負担がなく、ナビスコ杯もベストメンバーで戦ってはいないためグループリーグで敗退している。価値観をどこに置くかはチームの方針と言ってしまえばそれまでだが、ちょっと不公平感も感じずにはいられない。

▽まだ第1ステージの途中ではあるが、リーグとリーグカップ、ACLの位置付けをもう一度整理する必要があるのではないだろうか。【六川亨】1957年9月25日生まれ。当時、月刊だった「サッカーダイジェスト」の編集者としてこの世界に入り、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長や、「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。日本サッカー暗黒の時代からJリーグ誕生、日本代表のW杯初出場などを見続けた、博識ジャーナリストである。