近くで見ると、虎の毛並まで立体に再現されているのがわかる

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アートディレクターの戸田正寿さんが考案した「光のカンバス」、Lightface(ライトフェイス)の実物を見学できる初の製品発表会が2016年6月15日、DNP五反田ビルで開かれ、照明やインテリア、住設メーカーなどの関係者をはじめ約90人が詰めかけた。

30センチ×60センチのアクリル板の全体が一枚の照明器具のようになって光る--会場には、「モナリザ」、伊藤若冲の「鳥獣花木図屏風」が特殊印刷されたLightfaceをはじめ数点のLightfaceが展示され、初めて見る人たちから驚きの声が上がった。

世界のクリエイターが才能を発揮できるようになる

戸田氏の講演が始まると照明が落とされ、会場は暗闇に包まれた。Lightfaceに電源が入ると、名画「モナリザ」がゆっくりと浮き出てきて、続いて両脇の「鳥獣花木図屏風」が鮮やかに輝いた。最大20,000ルクスの高照度、Ra93の高演色性というLightfaceの特長を如実に表す明るさと色の鮮明さだ。

戸田氏は、斬新なクリエイティブアートと、最新テクノロジーのふたつが融合してこそ新しいビジネスが生まれると語った。これまでのLED開発にはクリエイティブ、デザインといった視点が欠落しており、Lightfaceは世界のクリエイターが才能をいかんなく発揮できる最初のLED素材になるだろうと胸を張った。

会場に展示された、和紙を貼ったスタンド、伊藤若冲「虎図」を特殊印刷したスタンド、オブジェクトが置かれたディスプレイ棚、ステンドグラスなど、さまざまな用途を想定したLightfaceが次々に点灯され、今後の活用例が具体的に提示された。

続いて、Lightfaceの技術開発・製造を行う日東光学の技術者、篠原克徳氏が、Lightfaceの製品詳細、性能や構造を解説した。プラスチック光ファイバーの世界的な第一人者、慶應義塾大学理工学部の小池康博教授の光散乱理論との組み合わせなくして、Lightfaceの「薄さと軽さ」、「ムラのない均一で美しい光」「フレームレス構造」といった特長は実現しなかっただろう、と説明した。

発表会の主催者でLightfaceの総販売店である大日本印刷(DNP)からは情報イノベーション事業部 C&Iセンター CC・SD本部本部長・高梨謙一郎氏が登壇し、関連会社が行っている国内外の美術館の画像ライセンス事業との組み合わせや、空間デザインへの活用など、今後の具体的な可能性が示された。

大きなイノベーションにつながる発明

最後はLightface見学会として、参加者が実物に触れながらLightfaceの構造や性能を確認した。参加者たちは、「光にまったくムラがなく、端から端まで光る。確かにこんな照明は見たことがない」「絵を見る、ということでいえば、ディスプレイとは異なるデジタルサイネージ的な分野での可能性を期待したい」といった、放つ光の美しさや、さまざまな用途の広がりの可能性に魅力を感じたようだ。

戸田氏の友人でもあり、日産「Be-1」やオリンパス「O-Product」のコンセプターを務めた坂井直樹氏は製品を見学後、「この技術は市場から照明は残るが、照明器具が消える日をもたらす可能性がある。なぜなら今の照明器具は電球をねじ込む受け口、光を発する電球、傘などで出来ていて複雑で部品点数が多い。ところがLightfaceは発光体の板一枚で照明器具は不要だ。大きなイノベーションにつながるこの発明のユニークさは、エンジニア主導ではなくクリエイターが主導してできあがったことだろう」と語った。

東京デザインセンターの代表でデザイン・コンサルタントでもある船曳鴻紅氏は、「日本人は昔から、ろうそくを裸火より行燈に仕立てるなど、柔らかい光となる面発光に慣れ親しんできた。和の空間にLightfaceを自在に用いることで、間接照明とはひと味違った光の面そのものを味わう新しい空間の提案ができるかもしれない」と可能性を語った。

今回の出席者たちは、それぞれ用途を具体的にイメージしているかのように熱心に見学し、関係者の説明に聞き入っていた。Lightfaceが導入された店舗ディスプレイや建築物が登場する日もあまり遠くなさそうだ。