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統計分析システムの開発などを手掛けるサイカはこのほど、様々なマーケティングデータを統合的にアトリビューション分析し、PDCA運用の支援を行うマーケティングミックスプラットフォーム「XICA magellan(サイカ マゼラン)」を発表した。この製品の特徴と、製品開発の背景として現在のデジタルマーケティングにどのような課題があるのかについて、サイカ 代表取締役CEOの平尾喜昭氏に話を伺った。XICA magellanが示唆するもの。それは、アドテクノロジーに潜む“盲点”と言えるものだ。

○コンバージョンが生まれる背景には、様々な要因が絡み合っている

まずは、サイカが開発したマーケティングミックスプラットフォーム「XICA magellan」について紹介しよう。

XICA magellanは、企業のマーケティング活動で生じた様々なデータをアトリビューション分析し、個々のマーケティング施策の評価とPDCA運用の支援を行う。最大の特徴は、ネット広告だけでなくソーシャルメディア、動画コンテンツなど広告以外の施策、テレビ等のオフライン広告、PR活動の成果、天候や世の中の出来事といった外的要因をも統合し、カスタマージャーニーの解析ができるという点だ。

「消費者が製品・サービスに触れるあらゆるタッチポイントを分析することで、施策のマーケティング活動の貢献度や施策同士の関係性を俯瞰し、全体を最適化することができる点が、従来の分析ツールとの大きな違いだ」と平尾氏は説明する。

これまで、マーケティング施策のKPI設定はクリック数やコンバージョン数といった直接的なもので行われ、コンバージョンに直結しないブランディングやオフライン広告については貢献度の評価が難しい側面があった。しかし、XICA magellanによってオンライン・オフラインを統合してカスタマージャーニーを明確化することで、施策の評価と次なる戦略・戦術を俯瞰的に考えることができるのだ。

「こうした分析はコンサルティング会社やデータアナリストが数か月という時間を掛けて行ってきたが、XICA magellanはこの分析を日次で行うことが可能で、リアルタイムにマーケティングの全体像を把握することができる」(平尾氏)

平尾氏は、このXICA magellanを開発した背景について、同社がこれまで手掛けてきた統計分析の事業を通じて、多くのマーケターから聞いた課題意識を挙げている。つまり、マーケターは日々のマーケティング活動から生まれる膨大なデータを使いこなすことができていないということだ。この点について平尾氏は、「多くのマーケターは、マーケティング活動で生まれる様々な種類の膨大なデータをストーリーに落とし込めておらず、“勘”に頼る部分が多かった」と説明する。データの相関性を分析できていないため、その施策がなぜ成功したのか、なぜ上手くいかなかったのかを明確化できていないのだ。

加えて平尾氏は、「コンバージョンは自社の広告だけでなく、競合の出稿状況や曜日、天気、気温などの外部要因、オフラインの出稿やPRといった様々なものが絡み合って生まれている。しかし、マーケターの多くは部分最適を徹底しているものの、全体を把握できていない。マーケティング活動全体を最適化しなければ、相当なムダが生じてしまうのではないか」とも語っている。こうした課題意識から、マーケティング活動を取り巻くあらゆるデータを統合分析し、その全体最適をサポートするXICA magellanを企画・開発したのだそうだ。

「XICA magellanが重視しているのは、“コンバージョンに至るプロセスの再現性”。得られたデータをマーケターのアセットにするためには、勘ではなく納得感のある情報を元にPDCAを回し続け、そこから成功や失敗を経験することが重要だ。再現性の高い知識や情報を元に知恵を蓄え続けることができるマーケターを生み出すために、“たまたまではない”マーケティング施策の全体最適を再現性高く提供することを唯一無二の特長としたい」(平尾氏)

○アドテクノロジーの登場によって、手段が目的化してしまった

平尾氏は、XICA magellanの狙いについて、「マーケターを“本来やるべき仕事”に集中させたいという考えで開発した。機能面も、戦略・戦術の立案、施策効果のレビューといった、PDCA運用の中で“人の思考”が関わるフェーズを徹底的にサポートすることを重視している」と語る。その言葉の裏には、デジタルマーケティングが企業のマーケティング活動の中に生み出した“盲点”に対する提言が示唆されている。

アドテクノロジーの登場によるデジタルマーケティングの進化は、企業のマーケティング活動に“効率化”と“見える化”という2つの価値をもたらした。しかしその結果、アドテクノロジーは「いかに効率よく、コンバージョンという成果を獲得するか」という視点で発展し、マーケターから「仮説を立ててチャレンジする」という機会を奪ってしまった。DSPやDMPに代表されるようなPDCAのDやAを効率化するツールが定着したことで、PやCは置き去りになり、D→Aのサイクルを効率よく回すことがマーケティングの目的になってしまったのだ。

「数パーセントの改善を積み上げていくことがマーケティングの成果になり、新たなアイデアでマーケティング施策の効果が劇的にアップするというようなチャレンジングな動きや大きな変革が生まれなくなってしまったのではないか」と平尾氏は語る。

こうした課題に対して平尾氏は、XICA magellanを通じて「マーケターに仮説を立てるための示唆を届け、PDCAのPやCにマーケターを集中させたい」と語る。

マーケティングは本来、マーケターが様々な考えを巡らせて仮説を立て、それを試行錯誤しながら洗練させていくもの。アドテクノロジーの効率性に支配されてしまったマーケターたちを、そうしたマーケティングの“原点”に連れ戻したいと考えているのだ。

「マーケターの仕事は、データを集めることでも、テクノロジーと向き合うことでも、レポートを書くことでもない。しかし、実際にはこうした手段が目的化してしまっている。本来、マーケターは訴求したいメッセージをどのように表現して消費者に届けるのかを考え実行することが仕事であって、XICA magellanによってマーケターを“思考する”という仕事に集中させたい」(平尾氏)

○統合分析と全体最適がマーケティングの在り方を変える

平尾氏が指摘するように、アドテクノロジーの進化とデジタルによるマーケティング施策の多様化によって、マーケターは計画された施策を実行するための作業に追われるようになり、マーケターからは革新的なアクションを生み出す想像力を奪い、マーケティング組織は縦割り化が進んだ。そしてマーケティング施策から有益なデータが生み出されても、そこで検証されるのは結果の良し悪しだけにとどまり、次のマーケティングに活かせる示唆を見つけ出すことができない。自分たちのマーケティング活動に潜む根本的な課題を見つけ出すことができず、まずは自分が担当する施策で設定されたKPIを達成することだけを目指して走る。気が付けば、マーケターの視野や行動範囲は狭くなってしまったのだ。

しかし、XICA magellanが提唱する統合分析と全体最適という考えは、こうしたデジタルマーケティングがもたらした閉塞感を打破する可能性があるのではないだろうか。デジタルマーケティングが生み出したコンバージョン至上主義という考え方は改められ、オンライン・オフラインに関わらずマーケティング活動全体の中における施策の貢献度が評価され、それぞれの施策の“横のつながり”に意識を向けるようになる。コンバージョンに直接結びつかない施策であっても、“なぜその施策をするのか”という意義や目的が明確化する。そして、個々のマーケティング活動を連携させ、全体を最適化するためにマーケティング組織そのものも変わっていく可能性があるのだ。

平尾氏によると、XICA magellanは既に大手企業などに採用が決まっており、年内には100社への導入を目標にしているとのこと。また今後は、3月に業務提携を締結した電通と共に拡販、運用を行うほか、電通のマーケティング分析のノウハウを吸収しながら製品の機能や分析技術のブラッシュアップを進めるのだという。XICA magellanがこれから企業のマーケティング活動をどのように変革していくのか。今後の動向に注目したい。

(井口裕右)