日中は長年、「一衣帯水の隣国」と言われてきたが、まだまだ相互理解が不足していると言われている。東華大学の張さんは日本人に「反日デモ」について質問された出来事を例に、自分の目で見ることが最も重要だと訴えている。資料写真。

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日中は長年、「一衣帯水の隣国」と言われ、インターネットが発達した今日でも両国にはまだまだ相互理解が不足していると言われている。東華大学の張哲●(●=王へんに「深」のつくり)さんは日本人に「反日デモ」について質問された出来事を例に、実際に自分の目で見て判断することが最も重要だと訴えている。

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「あのう、突然かもしれませんが、今、中国の反日デモはどんな様子ですか」。環境問題をテーマにした日中若者討論会で、そばに座っている日本人に質問された。当日のテーマからあまりにもかけ離れていたため、私は返答に窮した。質問したのは加藤さんという女子大生だった。

2013年7月、あるイベントで日本に招待された私は、日中若者討論会に参加し、日本の名門大学の学生たちと交流する機会に恵まれた。当時、日中関係はどん底から少しずつ回復している時だった。彼女の頭に浮かんだのは、恐らく前年の9月、領土問題が引き金となり、中国国内の複数の都市で起こった反日デモのことだったのだろう。

その夜、加藤さんから1通のメールをもらった。内容は自分の質問で私を困らせたことを詫びるものだった。そして、こう記してあった。「実は、前々からこの夏に中国へ旅行に行こうかなと思っていたんです。でも、テレビでデモの報道を見たら、その怖さがずっと頭の中から離れなくて」。彼女の言葉を見て、なぜか涙ぐんでしまった私がいた。

そして思い出した。日本に招待される前にネットで見た、日本人の中国人に対する意識調査の結果を。それは中国人の学生や観光客に反感を持つ日本人が多数いるというもの。「大丈夫かな、嫌われるかな」と恐る恐る日本に行ったが、出会った日本の方々はみんな笑顔で接してくれた。気分が晴れ晴れすると同時に、過剰に心配しすぎていた自分を笑った。

そこで、ふと伯父の顔が頭に浮かんできた。伯父は若い時の何年かを軍隊で過ごした。退役後は実家で饅頭屋を開いて、今に至っている。おしゃべりな伯父は親戚が集まる度に、政治やら軍事やら、日本と中国はまた戦争に走るのかといった話を口にした。「もしかして、伯父は日本人のことを憎んでいるのかな」とさえ思えるほどだった。

数年前、ある日本人が伯父の所に饅頭を作る腕を学びに来たそうだ。その日本人は割と年配の方で、中国人の妻の故郷を訪れるついでに饅頭の作り方を習得し、帰国したら饅頭屋を開こうと思い立ったという。いつも日本人の悪口を言っていた伯父のことなので、その日本人を門前払いしたのかと思いきや、伯父は店の客足が少ない間を狙って手取り足取り丁寧に教え、昼ご飯も手料理を振舞ったという。その後、会うたびに伯父は「いらっしゃいませ」「おはようございます」と教えてもらった日本語を私に披露した。

伯父の世代は恐らく私の世代と違って日本への憧れのようなものがなく、日本人の悪口も言うが、いざ個人の付き合いとなれば、本当に真心で相手と接しようとする。きっと伯父のような人がこの国の大多数を占めるはず、と私は確信している。

「実は日本へ来る前、日本人は中国人に対する態度がすごく悪いと聞きましたが、全然そんな風には感じていません。本当のことは自分の目で見て、耳で聞かなきゃ。中国に来たら、絶対連絡してね」。やっと整理ができた私は、加藤さんにこう返信した。そして、日本から帰国して2カ月が経った頃、私は上海の空港で加藤さんと再会した。出迎えた私の目に飛び込んできたのは、彼女の晴れ晴れとした爽やかな笑顔だった。(編集/北田)

※本文は、第十一回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「なんでそうなるの?中国の若者は日本のココが理解できない」(段躍中編、日本僑報社、2015年)より、張哲●さん(東華大学)の作品「自分の目を信じる」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。