かつては自身のゴールを追い求める傾向が強かったが、今は「チームメイトの良さを活かすのが俺の仕事」と言う。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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「19歳でA代表に入る」
 3歳からサッカーを始めた小林祐希は、幼稚園の時にそう目標を設定したという。目標から遅れること5年、先のキリンカップでハリルジャパンに初選出され、ついに夢を現実のものとした。
 
 小林は、久々に現われた爛侫.鵐織献好〞の雰囲気を漂わせる司令塔だ。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督もキリンカップのメンバー発表の際、「オフェンスに関しては国内でもかなりのクオリティ」と評した。
 
 かつては自身のゴールを追い求める傾向が強かったが、今は「チームメイトの良さを活かすのが俺の仕事」、「ボールを持ったらなんでもできる」と言い切る。「ゴールをイメージしながら、チームを引っ張れる存在」(名波浩監督)と言っていい。
 
 今季、驚異的な成長曲線を描くきっかけとなったのが、第1ステージ5節の大宮戦だ。44分にペナルティエリア左側でボールを受けると、カットインして利き足の左足からボールを持ち変え、右足を一閃。豪快にネットを揺らしてJ1初ゴールをマークした。
 
爛譽侫謄〞という一般的な括りから飛び出し、牘Δ盧犬發△〞危険な選手へ進化を遂げた瞬間だった。その後エースのジェイが不在のなか、11節・鹿島戦から自身初の3試合連続ゴールを決めてさらに自信を深めるが、名波監督も「大宮戦から(選手として)ひと回り大きくなった」と証言する。
 
 また、9節の広島戦で、中村太亮のゴールをアシストしたプレーも今季のハイライトのひとつだ。左WBの中村太が大外からゴール前に入ってくるのを視界に捉えると、アタッキングサードでボールをキープしながらタメを作ってから縦に鋭いロングボールをエリア内に通し、得点をお膳立てしたのだ。
 
 その時、名波監督は「ユウキ、それだよ!」と叫んだという。現役時代に名手として鳴らした指揮官の想像を超えるプレー。そう評してよかった。
 
 背番号4、レフティ、そして強気な発言――。数々の共通点から、「本田2世」とメディアが騒ぎ立てるようになった。本田圭佑からも「強いメンタルを伴った選手。自分の発言したことを実現してほしい」とのメッセージを送られている。
 しかし、これらの出来事は小林にとってあまり重要ではない。「自分を信じる気持ちは誰にも負けない」。そんな確固たる信念があるからこそ、「本田圭佑は本田圭佑、小林祐希は小林祐希。小林祐希のカラーを出していきたい」と堂々たる宣言ができたのだ。
 
 己に自信を持ち、サッカーにすべてを注ぐ姿勢は、名波監督も高く評価する。
「サッカーに真摯に向き合い、サッカーがすべてだというオーラもある。ああいう選手が上に行くべきだと思う。ユウキは今回、自分で代表を引き寄せた。胸を張って送り出せる」
 
 もっとも、今回の代表選出はあくまで狃章〞にすぎない。
 
 14節の川崎戦後、小林は「今年の目標の一番下のランクが、代表に入ってアピールすること」と明かした。「メンバー25人の中で、能力は俺が一番下」と現実を見つめながらも、実際に代表の一員となった彼の口を突いて出るのは大いなる野望の数々だ。
 
「代表に入ったからには、スタメンを取りに行く」
「プラチナ世代の中で自分はベンチを温めてきたが、今が宇佐美たちに追いつき、追い越すチャンス」
「いつか日本代表の10番をつける」
「次のワールドカップは年齢的にもちょうどいいし、もちろん出るつもりでやっていく」
 
 これらを成し遂げるにはまず、ハリルホジッチ監督から指摘されたフィジカルや守備の向上が不可欠だ。さらに、状況判断や持ち前の攻撃力も磨く必要がある。
 
 その時初めて「本田や香川を超える選手」(ハリルホジッチ監督)の有力候補となるだろう。先輩たちの壁は厚いが、数々の苦難を乗り越えて夢を掴んできたこの男なら、力強く道を切り拓いていくに違いない。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)