OTSUBONE、それは職場を仕切る古株の女性のこと。意地悪で噂好き、口うるさいなど、ネガティブな意味で使われます。日本俗語辞書によると、お局という語が現代の古参OLに対して使われるようになったのは、1989年のNHK大河ドラマ『春日局』のヒットにより、流行語的に使われたのがきっかけだそう。組織の平均年齢にもよりますが、だいたい勤続5年を超えた、アラサー世代あたりからがお局扱いになるようです。

そんななかで自虐するわけでもなく、新人みたいな顔をしてすっとそこにいるタイプの女性がいます。職場のおじさまにも好かれ、ニコニコ。華やかだけれど、話すトーンは落ち着いている。若い子と張り合って、派手な化粧をしたりすることもありません。仕事もソツなくこなすけれど、変な姐御感も出しません。そんないいとこ取りOLに近い存在のアイドルがいます。アイドルとしての職歴13年を誇る3人組、Negiccoです。

Negiccoは、何年経っても”新潟のお嬢さん”

最新アルバム『ティー・フォー・スリー』

Negiccoは新潟名産「やわ肌ねぎ」をPRするため、2003年に結成されたグループ。人気が全国区になった今も、地元・新潟と東京を往復しながら活動しています。アイドルは、メンバーの卒業・加入を繰り返し、グループが新陳代謝することによって存続している場合も多いのですが、Negiccoは、全員がオリジナルメンバー。アイドル界の中でも、Perfumeと並び、圧倒的なキャリアの長さを誇ります。しかし、お局・重鎮感も出さず、苦労の押し売りをすることも、露出でセクシーの押し売りもすることありません。

Negiccoはいつも”新潟のお嬢さん”の顔をして、ステージに立っています。長めのAラインのスカートを、優雅にひるがえしながら。

うまくいかなくても腐らない、他者を攻撃しない、自虐もしない

彼女たちは今さら多くを語りませんが、これまでに危機が何度もありました。母体のタレント養成スクールが廃校になったり、メンバーが抜けたり。学業もこなすタイプの優等生なので、それぞれ進学(Kaedeさんは国立大学工学部卒!)・就職というタイミングで、グループをどうするかという状況もありました。

そんなNegiccoにチャンスが訪れます。「主催企業の全面バックアップの元、メジャーデビュー!賞金100万円!」というオーディション番組に出演し、見事勝ち抜いたのです。しかし、その夢は無残にも打ち砕かれることになりました。主催していた企業の経営状態が悪化し、メジャーデビューもなかったことに。結局賞金ももらえず……。こんなことって、あるのでしょうか。

それでも、彼女たちは負けませんでした。一つひとつ、どんなに小さなステージでも笑顔を絶やさずに歌い続けました。そんななか、ドラマみたいな奇跡が起きます。彼女たちのライブに来ていた男性ファンの一人が、なんとタワーレコードの社長だったのです。2011年には、彼が立ち上げたアイドル専門レーベルから、CDデビューが決定。

ここから、Negiccoの快進撃が始まります。小西康陽や田島貴男という豪華な製作陣を迎えた楽曲を多数リリースし、2014年にはついにシングル「光のシュプール」がオリコン週間ランキングで5位を獲得!

若い女の子と戦わない余裕と大物を魅了する引き寄せ力

その翌年、巨大勢力である48グループが新潟に進出することになり、「NGT48」が誕生。Negicco一強であった新潟に危機が訪れました。マツコデラックスも「Negiccoがいるんだよ、新潟は! Negiccoが可哀想だろ! 頑張ってきたんだよ、10年も」とコメント。地元の商店街の隣にいきなりイオンモールができちゃった、という状況でもありますが、3人は「一緒に新潟を盛り上げていければ」と謙虚な姿勢を崩しません。

さらには新潟県の泉田裕彦知事も「(NGT48について)オリコン5位となったNegicco とともに、飛躍してほしいと思います」と、NegiccoのMVを貼り付けてtwitterに投稿。その様子が数々のメディアで取り上げられ、名前が全国のお茶の間に届くことになりました。NGT48は新規立ち上げということもあり、10代のメンバーを中心に、大人気の”ゆきりん”こと柏木由紀さんまで加わりましたが、現在もよい関係を築き上げています。若い子と無理に戦わない姿勢が、よい結果を引き寄せました。

おじさまにも好かれる全方向モテ! OLとしても見習いたいその魅力

Negiccoのライブは、年齢層が高く、疑似恋愛を求めているファンは少ないです。多くのファンが、親戚の子どもを応援するような視線をステージに送っています。これが、13年もステージで戦えている理由の一つ。 弾ける若さや性的な魅力を売りにすると、アイドル寿命が短くなってしまいます。これは、アラサー以降の女性でも同じこと。他人を攻撃せず、無理して若者に嫉妬せず、戦わず。年齢が上がるにつれ、謙遜の意味で謎の自虐を繰り広げてしまうこともあるかと思います。そこはグッとこらえて、誰に対しても分け隔てなく、柔らかな笑顔を向けられる彼女たちのように、OL街道を駆け抜けていきましょう。

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(小沢あや)